ニューオーリンズ |
New Orleans/ United States |
撮影: 2000/2 制作: 2020/4 |
2000年に米国南部のニューオーリンズを訪問しました。世界最古の現役路面電車として知られているセントチャールズ線に乗るためです。1920年代に製造されたヴィンテージな車両が、そのままの形で走っていることにいたく感激しました。 訪問後の2005年にハリケーン・カトリーナによって同市は壊滅的な被害を受けました。しかし見事に復旧しただけでなく、さらに路線網が拡大していることは大変喜ばしいことです。 ニューオーリンズのトラムはRTA(Regional Transit Authority)が運営しています。 |
ルイジアナ州最大の都市、ニューオーリンズは、1700年代の初頭にフランスの植民地として建設されました。街の中心部にはフレンチクォーターと呼ばれる地区があり、フランス領時代の面影が色濃く残っています。北米第一の大河ミシシッピ川の河口に位置する港湾都市で、ディキシーランドジャズの発祥地でもあります。 ※余談ですが、ルイジアナの州都はバトンルージュ市です。 |
2020年現在のニューオーリンズ路面電車の路線図です。5路線がありますが、2000年の訪問時には、次の2路線のみでした。 ・セントチャールズ線(緑色) ① Carondelet St. / Canal St. ② Lee Circle ③ South Claiborne Ave. ・リバーフロント線(赤色) ④ Canal Street ⑥ French Market ⑦ John Churchill Chase St. ※青色は、訪問後に開業した路線です。 ・カナル線及びキャロルトン支線 ⑤ Cemeteries (2004年) ⑩ City Park & Museum of Art (2017年) ・ロヨラ線 ⑧ Union Terminall (2013年) ・セントクロード線 ⑨ Elysian Field Ave. (2016年) |
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Carondelet St. / Canal St. ダウンタウンのカナル通り①をノスタルジックな電車が走って来ました。ここは、(北行き)カロンデレット通りから(南行き)セントチャールズ通りへのUターン区間になっています。 背景右の装飾を凝らした建物は、5☆のリッツカールトンホテルです。 (2000/2/9) ※文中の丸囲み数字は、路線図の中に示す場所に対応しています。 |
St.Charles/ Common 以下、セントチャールズ線の沿線をご紹介します。ビジネスの中心街、コモンです。旧市街は道幅が狭いため、一方通行になっています。右側の大きなピックアップトラックが、いかにもアメリカという感じを出しています。 |
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St.Charles/ Lafayette 上掲から少し南、ラファイエットの電停です。ギリシャ神殿風の白い建物は旧市庁舎のガリエホール、南北戦争前の1853年に建てられた貴重な遺構です。現在も結婚式や会議などに使用されています。 |
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Lee Circle リーサークル②から北側を見ています。背景に聳える白亜のビルは、51階建て, 高さ212mを誇るワンシェルスクェアです。1972年の竣工以来、ルイジアナ州で最も高い建物のレコードを保持しています。 ※メインのテナントはシェル石油。現在ビルの名前はハンコック・ウィットニーセンターに変わっています。 |
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Melpomene リーサークル②を過ぎると風景は一変して、閑静な住宅地の中を走ります。道路の中央に大きな木々が茂る専用敷が設けられ、クルマと電車が共存しています。 |
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First この辺りは、大きく蛇行するミシシッピ川に沿って、放射状の街並が造られています。扇に喩えると、放射状の骨に直交する外縁の円周上に線路が敷かれています。(地図参照) 行けども行けども森に囲まれた住宅街が続き、日本では決して体験できない贅沢な旅が味わえます。 |
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Melpomene アメリカ南部の落ち着いた住宅に、森の中を走るレトロな電車が良くマッチした素晴らしい景色です。 |
Eighth 芝生敷きの軌道は格好の散歩コースです。犬を連れた市民の姿を見かけました。 |
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South Carrollton/ St. Charles セントチャールズ通りからサウスキャロルトン通りへ曲がる付近です。 ※すぐ近くにミシシッピ川の堤防がありますが、ハリケーン襲来時には幸いにも水没を免れています。但し倒木の被害が大きく、全線復旧には3年を要しました。 |
South Carrollton/ South Claiborne セントチャールズ線の終点、サウスクレイボーン③です。車両は両運転台仕様なので、折返し運転が可能です。ご覧のように軌間がおそろしく広いことに気がつきます。ペンシルベニア・トロリーゲージと呼ばれる5ft2-1/2in、1,588mmという規格です。 ※日本の鉄道は1,067mm、新幹線などの標準軌は1,435mmです。 |
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セントチャールズ線は1835年に開業しました。 当初は動力に蒸気機関と馬やラバが混在で使われていましたが、1893年に電化されました。現存する市街鉄道としては世界最古の路線で、サンフランシスコのケーブルカーとともに国家歴史的ランドマークに登録されています。 |
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Carrollton Barn キャロルトンの車庫を訪問しました。セントチャールズ線では、1920年代に製造された電車が今なお使われています。メーカーはノースカロライナのパーレイ・トーマスです。全長14.5mの高床車で、35両が在籍し、その他に10両が保存されています。 このタイプは800~972の合計173両が納入されました。写真はそのラストナンバー、972号です。 ※パーレイ・トーマス社は、米国でおなじみの黄色いスクールバスの製造で知られています。 |
車庫ではリバーフロント線の赤い電車も休んでいました。 左は1800年代末期にセントルイスで製造された古典電車です。レール研削車に改造されていますが、現役で使われています。 |
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Carondelet St. / Canal St. 夕暮れのカロンデレット通りです。街中は単線の一方循環ですが、カナル通りとの交差点①にあるこの電停が始発地になります。ブティックのショーウィンドウに灯りがともりました。仕事帰りと思われる人々が大勢集まっています。 (2000/2/10) |
上掲の少し前の時刻です。電車に乗る人でラッシュ時は相当混み合っています。 ドアは両開きで、車体の外側へ開きます。安全にうるさい日本では考えられない構造です。 |
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乗客を乗せた電車を真横から撮影しました。頭と尻尾のない写真も面白いものです。真冬の2月でしたが、多くの乗客が窓を開けています。ニューオーリンズは南国ですね。 |
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同上、車内です。白熱電球や木製の転換クロスシートは、まさにヴィンテージな香りがします。 |
Poydras Street ここからは1988年に開業したリバーフロント線です。この路線はミシシッピ川に沿って走る貨物線の路盤を使って造られました。沿線にはホテルやショッピングセンターなどがあり、観光クルーズ船の乗り場にも連絡しています。 ここはカナルストリート④の1駅南、ポイドラスです。線路に沿って細長い歩行デッキがあり、リバーウォークのアウトレットでショッピングが楽しめます。 |
Bienville St. カナルストリートから北へ行ったビエンビレです。リバーフロント線はこのように独立した専用軌道になっています。 同線の開業時は単線で、しかも1,435mmの標準軌でした。その後沿線に商業/観光施設が増えるに従って利用客が増え、1997年に1,588mmへの改軌と複線化を実施しました。それまで線路は独立していましたが、準備中のカナル線を使って車両をキャロルトンの車庫に収容できるようになりました。 |
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Canal Street カナルストリート④から、カナル線を通って、セントチャールズ線①に向かうところです。 リバーフロント線の車両は、セントチャールズ線のパーレイ・トーマス製電車を摸したレプリカで、運営母体のRTSが内製しました。形状は旧型車と同じですが、赤い塗色が特徴で、中央に車椅子の昇降機を備えた扉が付いています。 冒頭の写真も併せてご覧下さい。 |
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Esplanade Ave. 夜の終点、エスプラネードです。観光客が必ず訪れるフレンチクォーターの一角にあります。 上掲の車両は新製のレプリカですが、こちらは旧型車の車体を流用したタイプなので、若干窓の配置が異なります。 ※のちに開業したセントクロード線に同名の電停が出来て、現在はフレンチマーケット⑥に改称されています。 |
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同上、車内です。1920年代の古い電車のイメージが忠実に再現されています。座席は片側が転換クロスシート、片側がベンチシートになっています。左奥に車椅子の昇降機が見えます。 ※訪問後の路線網拡大に伴い、RTAでは20両ほどの車両を増備していますが、すべて旧型車を摸したレプリカで統一しています。 |
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Tatra Car on Canal street 最後にご紹介するのは、カナル通りで撮影したCKD タトラ製のT6C5です。1998年に1両だけ造られました。タトラは旧共産圏で大きなシェアを誇るチェコ共和国の車両メーカーですが、ソ連崩壊の体制変更で北米市場への進出を考えていました。この車両は量産車T6A5をベースに、両運転台、ポール集電、広軌対応などニューオーリンズ向け仕様になっています。試験運転の結果は好評で、本格導入の寸前まで行きましたが、2001年にタトラが倒産して御破算になりました。車両は独シュトラウスベルクに引き取られています。 |
References: https://en.wikipedia.org/wiki/Streetcars_in_New_Orleans http://www.nola.gov/gallier-hall/ https://en.wikipedia.org/wiki/Hancock_Whitney_Center http://www.clair.or.jp/j/forum/series/pdf/44.pdf https://en.wikipedia.org/wiki/Perley_A._Thomas_Car_Works https://hawkinsrails.net/streetcars/nola/nola_29.htm https://de.wikipedia.org/wiki/Tatra_T6C5 |