海外トラム紀行

サン・ディエゴ (1)
アメリカ国旗
 San Diego/ United States
 
撮影: 1993~1995, 制作: 2019/12

米国は自動車大国のイメージがありますが、近年になって路面電車(トラム)の復権がめざましく、その都市数は今や40以上を数えるトラム大国となりました。その嚆矢となったのがカリフォルニア州のサン・ディエゴです。1981年に近代的なLRT(Light Rail Transit)が登場し、ダウンタウンからメキシコ国境の町まで赤い電車が走りました。
サン・デイェゴには5回訪問しました。これから順を追ってご紹介したいと思います。今回は1993年暮れと1995年夏のレポートです。

サン・ディエゴ_トロリー, 車庫 
12th & Imperial Yard, San Diego, 1995/8/4

サン・ディエゴ_トロリー, 路線図
  アメリカ地図サン・ディエゴはアメリカ西海岸の最南端にあり
、メキシコと国境を接しています。温暖な気候で
大変住みやすい街です。マリンスポーツが盛んな
港湾都市で、海軍の基地があることでも知られて
います。
←トラムの全長は約86kmあります。最初の訪問
時には、ミッションサンディエゴを経由する路線
とエル・カホーンの北(左図の黄色部分)は未開通
でした。

路線拡張の小史
開業年月 路 線 km  記 事 
1981/6/26 サン・イシドロ  25.6  南ライン 
1986/3/23  ユークリッド 7.2   
1989/6/23  エル・カホーン   17.8  西ライン 
1990/6/30 ベイサイド   1.6   
1992/7/2  カウンティーセンター  0.8   
1995/8/26  サンティー  5.7   
1996/6/16  オールドタウン  5.1   
1997/11/23  ミッションバレー西  9.7  系統名変更, ブルーライン/ オレンジライン 
2005/6/10  ミッションバレー東  10.9  系統新設と変更, グリーンライン 

サン・ディエゴ_トロリー, Seaport Village   Seaport Village

ベイサイドにあるシーポートビレッジです。海まではすぐの距離にあり、ヨットハーバーや公園があります。
この区間は専用軌道で、駅の部分だけ舗装されています。

(1993/12/30)
サン・ディエゴ_トロリー, Seaport Village   同上地点です。背景の白い建物はレトロなアパート、左のタワーは少し離れた場所にあるアメリカプラザのビルです。
真っ青なカリフォルニアの空に、シンプルな赤一色の車体が良く似合っています。塗色も大切なデザインの一つであることが実感できます。小生は名古屋の出身なので、すぐに名鉄のパノラマカーを連想しました。

 
サン・ディエゴ_トロリー, Seaport Village
同じく、シーポートビレッジの踏切です。

トラムは、1980年に設立されたサンディエゴ・トロリー社(SDTI)が運行しています。この会社はサンディエゴ郡全体の交通を統括するサンディエゴ都市交通システム(MTS)の子会社です。車体にMTSのマークが入っています。
サン・ディエゴ_トロリー, Gaslamp Gaslamp/Conv.Ctr

上掲の東南にあるガスランプ駅です。高層マンションがひときわ高く見えます。この路線の開業に合わせて、コンベンションセンターがオープンしました。また大リーグ・パドレスの本拠地となるペトコ球場が建設中でした。

※新球場は2004年に完成しました。
サン・ディエゴ_トロリー, La Mesa   La Mesa Blvd

サンディエゴ郊外の町、ラ・メサです。ここには元々サザンパシフィック鉄道が通っていました。1976年にハリケーンの被害に遭い、回復困難になった線路をMTSが引き継いでトラム路線に衣替えしました。

※正確にはサザンパシフィック鉄道の傘下にあったサンディエゴ・アリゾナ・イースト鉄道です。

(1993/12/31)
サン・ディエゴ_トロリー, La Mesa   同上地点です。椰子の並木が続き、いかにも南国・サンディエゴという感じがします。
サン・ディエゴ_トロリー, La Mesa, サドルタンク   Pacific Southwest Railway Museum, La Mesa

ラ・メサの駅前に、サザンパシフィック鉄道の古い駅舎があって、博物館になっています。展示されている機関車は、モハーヴェ砂漠のセメント工場で使われていたサドルタンクの3号機、従輪のない0-6-0という珍しい軸配置です。その後ろには、サザンパシフィック鉄道のフルーツ・エキスプレス冷蔵車とカブース(緩急車)が連結されています。
 
サン・ディエゴ_トロリー, El Cajon   El Cajon

1993年当時の終点、エル・カホーンです。シーメンス・デュバーグ製のU2が停車しています。開業から1990年までに導入された1000形です。全長24mの高床式連接車で、定員は150名、全部で71編成があります。最初の14編成は西独製ですが、増備車は米国サクラメント工場で内製するようになりました。
プラットホームが低いので、乗降時にはステップが出てきます。


(1994/1/1)
サン・ディエゴ_トロリー, El Cajon   El Cajon ~ Amaya Drive

エル・カホーンを出発してダウンタウンに向かう1000形です。 線路は旧貨物線の敷地を活用して敷設されており、トラムとは思えないゆったりとした設計になっています。












 ↓ここからは、1995年の撮影です。
サン・ディエゴ_トロリー, America Plaza  
America Plaza

アメリカプラザの東側、ダウンタウンの路面区間を走るベイサイド行きです。当時の系統では、エル・カホーンから来る東線が市内を一周していました。方向幕にBaysideと表示されています。

(1995/8/4)
サン・ディエゴ_トロリー, Santa Fe   旧サンタフェ鉄道の駅舎の前で折返し中の1000形です。右端に見える銀傘がアメリカプラザの駅で、サンイシドロから来る南線の大部分はここが終点になっていました。方向幕にCentre Cityと表示されています。



 サン・ディエゴ_トロリー, 拡大地図   上記両系統を説明するための路線図を制作しました。1995年当時のダウンタウン地区拡大図です。
ベイサイドラインと北側のカウンティーセンター方面との間には、南北に直進する線路がありますがトラムの系統はありません。

※Santeeへの延伸は1995/8/26ですので、訪問時は間に合いませんでした。
 
サン・ディエゴ_トロリー, County Center County Centre/ Little Italy

サンタフェ駅の北にリトルイタリーと呼ばれる地区があります。マグロ漁が盛んだった頃に栄えたイタリア系移民の町で、現在はおしゃれなカフェやバーで観光客に人気があります。
その町のカウンティーセンターが線路の終端でした。南線の電車のうち限られた本数が、この終点まで走っていました。方向幕はCounty/ Cedarで、Cedarは交差する通りの名前です。

サン・ディエゴ_トロリー, Grossmont   Grossmont Center

東線の郊外区間にあるグロスモントセンターです。併走する道路から離れて小さな丘を越えて行く、景色の良い所です。
サン・ディエゴ_トロリー, Imperial   12th & imperial

12番街インペリアルの乗り換え駅です。青いガラスの建物がサンディエゴトロリーの本社ビルで、その1階を貫いてプラットホームが造られています。
サン・ディエゴ_トロリー, Imperial   ベイサイド行きの電車が出発するところです。この系統はダウンタウンを一周して、再びこの駅に戻ってきます。
 
サン・ディエゴ_トロリー, 車庫   12th & Imperial Yard 

本社ビルがある広大な敷地に車庫があります。9階の事務所へ上がって挨拶したところ、見学の案内員を付けて下さいました。
丁度新車の2000形がデビューした時で、構内での試運転中でした。「あなたが日本人で最初に2000形を見た人です」と言われました。

サン・ディエゴ_トロリー, 車庫   Series 2000

2000形はシーメンスのSD100モデルで、52編成が導入されました。基本的な大きさは1000形とほとんど同じですが、モーターの出力がアップし、新たに発電ブレーキを装備しています。外観上はフロントの丸みがなくなり、大きな1枚ガラスになっています。
 
サン・ディエゴ_トロリー, San Ysidro   San Ysidro

南線の終点、サン・イシドロです。多くの乗客がステップを踏んで降りて来ました。プラットホームの無い場所に乗客を降ろしています。
サン・ディエゴ_トロリー, San Ysidro
  サン・イシドロはメキシコ国境の町です。ビザが無くても72時間以内であればメキシコのティファナへ入国することが出来ます。 















↓最後にオマケです。
Campo Rail Museum
1953年アルコ/GE製、米軍の6軸ターボ機関車RSX-4/MRS-1です。 朝鮮戦争に
おけるソ連戦まで想定して、4種類のゲージに対応できるようになっています。
実際には同年に休戦となったため、国内の空軍基地で使用されました。
 
Campo

サンディエゴから50kmほど東にある砂漠の町・カンポに鉄道博物館があります。旧サンディエゴ・アリゾナ・イースト鉄道の跡地を使った広大な土地に、100両を超える歴史的な車両が保存されています。週末には運転会も開かれ、乗車できます。

ラ・メサの博物館と同じ団体が運営しています。

(1994/1/1)
Campo Rail Museum
軸配置が1-8-1という大型のサドルタンク機関車です。1929年のアルコ製で、オレゴン州の木材会社で使われていました。炭水車を連結せず、ボイラーを包む鞍状のタンクに水を入れます。燃料は重油で、キャブの後ろにある幅の狭いタンクに収納するため見通しが良く、入れ換え運転に適した構造です。








以下、2000年の訪問に続きます。
 
References:
Alvin A.Fickewirth "California Railroads", Golden West Books, 1992
https://en.wikipedia.org/wiki/Light_rail_in_the_United_States
https://en.wikipedia.org/wiki/San_Diego_Trolley
https://www.sdmts.com/schedules-real-time-maps-and-routes/trolley

https://en.wikipedia.org/wiki/American_Locomotive_Company 
https://www.psrm.org/trains/steam/mojave/

https://en.wikipedia.org/wiki/Pacific_Fruit_Express



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