瀋陽 (1) |
Shenyang / China |
撮影2019/5, 制作: 2019/7, 改訂: 2019/12 |
遼寧省の省都、瀋陽を訪問しました。瀋陽は東北地方(旧満州)最大の都市で、戦前は奉天と呼ばれていました。瀋陽には日中合弁によって旧市街地に建設された市電が、1926年~1974
年まで走っていましたが、すべて廃止された歴史があります。この市電とは異なる新規のトラム路線が、2013年に渾南区のニュータウンに開業しました。現在では総延長60km、6系統を有する中国第一のトラム路線網に成長しています。 路線の運営は、瀋陽渾南現代有軌電車運営有限公司が担当しています。 |
腾讯地图(Soso-map)の上に瀋陽現代トラムの路線系統図を書き込みました。これらの路線は、渾河の南に開けた新市街地の重要な交通手段です。旧市街地方面からトラムに乗るには、地下鉄2号線に乗車して、奥体中心や世紀大廈で乗り換えます。空港へのアクセスも地下鉄ではなく、トラムがその役割を担っています。 1号線:興隆大奥莱~会展中心, 12.0km 2号線:興隆大奥莱~桃仙機場, 17.8km 3号線:世紀大廈~会展中心, 11.3km 4号線:世紀大廈~瀋陽南站, 10.0km 5号線:奥体中心~瀋撫新城, 21.4km 6号線:瀋陽南站~桃仙機場, 13.5km 今回は、1~4号線と6号線の沿線をご案内します。距離が長いので少々駆け足でのご紹介になりますが、ご容赦下さい。 尚、5号線は次作でご案内します。 |
Xinlong Da'aolai 始発地の興隆大奥莱です。地下鉄2号線、奥体中心駅の近くにターミナルがあります。島式のホーム、向かって右が1号線、左が2号線の乗り場です。電停の名前は2013年に開業した近くのショッピングセンターに因むものです。A,B2つのブロックに、アウトレット、スーパー、百貨店、食堂街、高級ホテル、オフィス街などがあります。 ※ 中国語でアウトレットは、奥特莱斯と書きます。 |
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電停に掲示されている路線図です。興隆大奥莱から途中の新松智慧園までの区間は、1号線と2号線が共用しています。 開業からしばらくの間、2元の均一運賃でしたが、今年の3月から区間制の運賃制度が導入されました。料金は車内で車掌さんに支払います。尚、交通カードを使用する場合は、乗車時だけでなく降車時にもカードを読み取らせることが必要です。 |
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Yifeng Square それでは、1号線に乗車してみましょう。最初の電停が億豊広場です。2008年北京オリンピックのサッカー競技が開催されたメインスタジアムの横をトラムが走っています。オリーブの花びらをモチーフにした6万人収容の競技場は、日本の佐藤総合計画がデザインしたものです。 ※トラムは2013年に、地下鉄2号線は2011年にそれぞれ開業しました。従って、いずれもオリンピックには間に合いませんでした。 |
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Xinsong Jiqiren 新松機器人の電停から、北側に広がるオフィス街を見ています。機器人とは不思議な名前ですが、中国語でロボットのことです。なるほど言われてみれば納得します。新松機器人は、中国科学院の自動化研究所から発展したロボット会社の名前です。 |
Xinsong Jiqiren ~ Baitahe Lu 新松機器人と白塔河路の間には何箇所もの高速道路との立体交差があり、トラムは堀割のような地形の中を走ります。このため、編成の全体像を俯瞰するには最適の場所になっています。 後方にTOSHIBAと書かれた白い塔が見えます。東芝のエレベータ工場、瀋陽東芝電梯公司で、2005年から操業しています。 |
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Xinsong Zhihuiyuan 1号線は新松智慧園の交差点で右折して、瀋本大街から全運路に入ります。大きな交差点には架線が張られてないので、電車はバッテリー駆動で交差点を通過します。パンタグラフは形状が維持される構造なので、折り畳むことはありません。 雲一つ無い晴天に恵まれ、抜けるような青空を眺める事が出来ました。 |
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Shangying Licheng 天然芝で緑化された軌道敷の両側に、高層マンションが林立する尚盈麗城です。 (2019/5/8) |
上掲のマンション街を走る瀋陽現代トラムです。車両は 長春の中国北車(現中車)で造られています。前作、長春 の市電は瀋陽製ですから、おもしろい組み合わせです。 |
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Exhibition Center 1号線の終点、会展中心です。ここには2011年にオープ ンした東北地区最大の見本市会場があります。にぎやか な場所を想定していましたが、当日は閑散としていて、 オート三輪の屋台が軽食を販売していました。 |
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←右端の柱に「無網区」の掲示があります。終点の敷地 内は充電のために架線が設けられていますが、構内から 外に出るとしばらく架線のない区間があります。 ↓掲示を拡大しました。 (2019/5/7) |
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会展中心では1号線の他に3号線も発着します。 ほとんどの車両が全面広告のラッピングを施されていますが、このブルーの車両はオリジナルの塗色です。アクセントに羽根を広げた鶴が描かれています。 車両は両端部が高床になっている3連接の70%低床車です。この他に5連接の100%低床車を保有しているはずですが、残念ながら3日間の滞在中一度も見かけることはありませんでした。どうやら左右独立車輪のメンテナンスに課題があり、運用からはずされているようです。 |
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Xinsong Zhihuiyuan 架線のないすっきりした交差点、新松智慧園へ再び戻ってきました。ここからは2号線に乗車します。 この付近一帯は瀋陽ハイテク産業開発区に指定されていて、日独仏など40を越える海外の企業が進出しています。 電停名の智慧園は、先端産業の集積をイメージさせます。また、両隣の電停名は国際軟件園と国際設計谷です。これらをカタカナで書けば、それぞれソフトウェアパークとデザインバレーです。 |
Taoxian 瀋陽桃仙空港の東のはずれにある、桃仙の電停です。空港の名前になった昔からの村があって、あたりはのどかな農村地帯が広がっています。 立派に育った並木をかすめるように、航空機が次々と着陸していきます。 冒頭の写真もここで撮影しました。新緑の季節にぴったりの、大変美しい場所です。 |
Airport Hotel 空港の1つ手前、機場賓館です。周辺には低層階のホテルや空港関連の企業が集まっています。背景は中国南方航空の運行司令部です。 |
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Airport Hotel ~ Taoxian Airport 2号線の終点、桃仙機場に至る線路が、芝生の原っぱの中に敷設されています。右奥に空港の管制塔が見えます。こんな景色は今まで見たことがありません。この線路の設計者並びに敷設を許可した上司の人々は、相当なトラムマニアとお見受けしました。 |
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Taoxian Airport 突き当たりが桃仙機場の空港ビルです。その正面玄関前からトラムが出発します。最高のロケーションに、只々感動するばかりでした。 |
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Shiji Dasha (Century Building) ところ変わってここは地下鉄2号線、世紀大廈の駅前 です。巨大なビルの下をトラムが走っています。ビル の名前は二十一世紀大廈、こだわりの21階建てです。 中央に鍵穴がデザインされたツインビルで、渾南地域 の未来を開く、新しい南大門という意味を持たせてい ます。↓ 手前に隣接する丸い屋根のビルは、渾南新区管委と最高大法院です。 ←世紀大廈からは、3号線と4号線が出ています。時間 の都合で、これらの沿線ではほとんど撮影が出来ませ んでした。機会を見て再訪したいと思います。 |
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Shenyang South Station 瀋陽南站です。国鉄の駅は2015年に開業しましたが、トラムの整備が遅れていて、東北大学と芸術中心の中間にあった(旧)瀋陽南站から1kmほど、徒歩連絡を余儀なくされていました。 今年(2019年)の1月に南駅に通じる引き込み線が完成して、4号線と6号線が乗り入れるようになりました。周辺はまだまだ昔の面影が残っていて、線路の外には畑や未利用地が広がっています。 (2019/5/8) |
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6号線の系統図です。瀋陽南駅と空港をダイレクトに結んでいます。約13km、途中9箇所の電停をすべて通過するトラムの急行運転には驚きます。冒頭の地図でも分かるように、この6号線だけが走る約3kmの短絡線があって、その区間は途中に電停がありません。 |
Line 4, Shenyang South Station ~ Dongbei University, 4号線, 瀋陽南站 ~ 東北大学, 2019/5/8 |
「瀋陽 (2)」へ続きます。 |
References: See next article. 参考文献は次作にまとめて書きます。 |