海外トラム紀行

南京 (3)
中国国旗 
Nanjing / China
 
撮影: 2018/7, 制作: 2018/9, 改訂: 2019/12

2017年10月に南京で2番目の路面電車、麒麟有軌電車が開通しました。方式はすでに営業している河西有軌電車と同様、架線のないトラムです。2012年から建設が始まり、2016年末には完成予定だったので、その日を待ちわびていましたが、突然建設がストップして約1年間開業が遅れました。原因は馬群から馬高路に至る区間の建設資金が不足したためと言われていますが、南京市当局の汚職捜査で関連業務が止まったという説が有力です。
ともあれ、2018年7月に訪問することが出来ました。
 南京麒麟有軌電車百水橋路
江蘇省南京市 北湾営街,  2018/7/11

南京麒麟有軌電車路線図    腾讯地图(Soso-map)の上に、麒麟有軌電車の路線図を赤色で書き込みました。総延長は9.1kmです。
"麒麟"を名乗っていますが、麒麟の旧市街地には直接乗り入れてません。旧市街の乗客は、最寄り駅の北湾営街駅から1kmほど北へ歩きます。
北湾営街から南の区間は、広大な畑の中に無理矢理作った道路に沿って、専用敷を走ります。沿線にはすでに大規模な団地や科学技術開発区(サイエンスパーク)があり、アクセスが飛躍的に改善されるものと思われます。

 

南京麒麟有軌電車馬群   Maqun

始発駅の馬群です。地下鉄2号線の馬群駅から少し離れた場所にある、高架の上に造られています。
手前に、ダンパーの付いた車止めが鎮座しています。


(2018/7/10)

南京麒麟有軌電車車内   麒麟トラムの車内です。外装の塗色に合わせて緑色のシートを採用しています。
馬群を出発すると、すぐに大きなカーブ区間になります。左側の窓の外にこのトラムが進む高架橋が見えます。

南京麒麟有軌電車馬群   高架橋のカーブ区間を地下鉄の駅舎から望遠で撮影しました。トラムにしては不釣り合いなほど立派な高架橋で、高速道路と国鉄線、それに水路を越えていきます。

南京麒麟有軌電車百水橋路   Baishuiqiao Lu

高架橋を越えたところにある最初の駅が百水橋路駅です。
駅で停車するときだけ充電する方式なので、このように各駅には剛体架線が設けられています。
左後方に商店街が見えますが、現在駅のある場所にも、かつては住宅や商店が密集していました。

 
南京麒麟有軌電車百水橋路  

百水橋路駅は2004年、南京で最初に開発された住宅団地、百水芊城にあります。この団地は8つの街区から成り、計画人口が40万人と言われていますが、今までバスが唯一の交通手段でした。但し団地の敷地は広大なので、トラムを利用するのは駅の近くの住民に限られると思われます。

南京麒麟有軌電車北湾営街   Beiwanying Jie

北湾営街のカーブを走るトラムです。背景には巨大なマンションが建設中で、その迫力に圧倒されます。
冒頭の写真もここで撮影しました。

 
南京麒麟有軌電車北湾営街   Beiwanying Jie ~ Tianquan Lu

上掲の南、天泉路に至る区間です。新しく作られた道路には歩道があって、その脇をトラムが走ります。線路との境界には生垣があり、興ざめするフェンスがないので気持ちの良い風景です。
 
南京麒麟有軌電車天泉路   Tianquan Lu

天泉路駅に進入する上りのトラムです。背景には南湾営街のマンション群が壁のように建っています。何もないところに住宅を建て、トラムを開通させる、おそるべき先行投資です。
 
南京麒麟有軌電車天泉路   Qidi Dajie.

さらに南へ進み、マンションが林立する啓迪大街でも撮影しました。ここのマンションはすでに入居が始まっていました。これだけの住民が利用すれば、トラムの将来は明るいものと思われます。



※余談ですが、啓迪(簡体字は启迪)とは、啓発するという意味です。

南京麒麟有軌電車天泉路 
トラムを流し撮りしてみました。車両はボンバルディアの"FLEXITY 2"がベースになっていて、南車南京浦鎮車両製です。
5車体の連接車で、偶数番目の車体には台車が無く、宙に浮いている構造です。

  以下、2枚の写真は腾讯地图の街景(ストリートビュー)から借用しました。現在は上掲のような立派な道路が造られていますが、わずか数年前にはこのような細い小径だけの田舎の風景が続いていました。

※中国からGoogleが撤退しましたが、この地図を使うことでストリートビューが見られます。更新頻度が低いので、幸運にも過去の情景を見ることができました。
 
同じく過去の情景です。初めてこの画像に接した時、思わず鳥肌が立ちました。高層マンションが次々と建設され、手前には敷設中のトラムの線路が写っています。この国では、政府が決定すればどんなことでも、スピード感を持って実行出来ます。


南京麒麟有軌電車啓迪大街  
2018年の現在に戻ります。
啓迪大街駅の自動改札装置です。地下鉄やバスと共通の南京市交通カードに対応しています。このカードを使うと20%の割引きがあります。また、学生と60才以上は半額に、70才以上は無料になるカードもあります。

(2018/7/10)

南京麒麟有軌電車啓迪大街   啓迪大街駅から南側を見ています。道路との交差点を除き、トラムは基本的に芝生が植栽された専用軌道を走ります。開業から間もないからかも知れませんが、軌道の芝生はゴルフ場のようにきれいに整備されています。
南京麒麟有軌電車啓迪大街
交差点は踏切ではなく、信号に従って走行します。↑→
  南京麒麟有軌電車信号

南京麒麟有軌電車麒麟生態公園   Qilin Ecological Park

麒麟生態公園駅です。駅に隣接して自然観察ができる広大な公園があります。沿線で最も美しい風景が展開する場所です。
 
南京麒麟有軌電車石楊路   Shiyang Lu

終点の石楊路駅です。起点の馬群からここまで約30分の道程です。今のところ日中は15分おき、ラッシュ時は10分間隔で運転されています。
後方に見える高架の上を、上海へ向かう国鉄京沪高速線(新幹線)が走っています。
この先にも新しい道路があり、延長すれば南京南站まで約8kmの地点です。
南京麒麟有軌電車石楊路   終点の先に、トラムの車庫に至る引き込み線があります。残念ながらここから先へは進めませんでした。
 
References:
https://baike.baidu.com/item/%E5%8D%97%E4%BA%AC%E9%BA%92%
E9%BA%9F%E6%9C%89%E8%BD%A8%E7%94%B5%E8%BD%A6
https://baike.baidu.com/item/%E7%99%BE%E6%B0%B4%E8%8A%8A%E5%9F%8E
http://www.clipark.cn/


Next ContentsTop Page


Copyright© 2014 railbus All Rights Reserved.  
写真及び文章の著作権はrailbusに帰属します。無断転載を禁じます。