市電のある風景・京 都

 (5) 四条線 その2, 夜の電車
日本国旗
 
撮影: 1971~1972, 制作: 2017/5 

四条線を走る夜の電車を撮影しました。銀塩フィルムの時代に夜景を撮影しようとすれば、三脚を立ててバルブで長時間露光するのが一般的でした。その場合、被写体の電車は静止している必要があります。また、周辺に写っているクルマや人物は流れて写るのが避けられません。
そこで、米・コダック社が軍事偵察用に開発した2475レコーディングという超高感度フィルムを使って、走っている電車を昼間と同じように撮影しようと考えました。

京都市電四条線四条烏丸
A Night Scene of Kyoto City Tram at Shijo Karasuma by KODAK 2475 Recording Film, Jan-1972


京都市電四条線四条大宮
  京都市電四条線四条大宮
Shijo Omiya
四条大宮の交差点で、嵐電の駅前から東側を見ています。北に阪急電車の乗り場、南にニュー大将軍のビルがあります。
夜の雰囲気は出ていますが、ちょっと街全体が暗いので細部まではあまりきれいには写っていません。 (1972/1/22)

  
京都市電四条線四条烏丸   Shijo Karasuma

四条烏丸の交差点です。前作でご紹介した写真と同じアングルで撮影しました。ここは銀行などが並ぶ金融街なので、思ったより暗い場所でした。
カメラの絞りは開放のF1.8、シャッター速度は1/125秒です。市電はスピードが遅いので、なんとかブレずに写っています。 

京都市電四条線四条高倉   大丸デパートの前です。電車は少しスピードを上げていますので、ブレないようにシャッター速度を1/250秒にして、やや前方から撮影しました。 
京都市電四条線四条高倉   Shijo Sakaimachi

四条堺町です。ここから東へ行くにつれて、街が明るくなります。露出をF2.8に1段階絞っています。
尚、フィルムのASA感度は公称1600 ですが、増感現像して3200で使用しました。

※ASA感度は現在のISO感度に相当します。当時の高感度フィルムはコダック社のトライXで、最高ASA400でした。
 
京都市電四条線四条河原町   Shijo Kawaramachi Shinkyogoku

四条河原町新京極の電停です。電停の安全地帯から多くの乗客が乗り込むところです。電車は停まっていますが、バルブ撮影との大きな違いは、人物やクルマも止まって写っていることです。 
京都市電四条線四条河原町   四条河原町交差点の東側です。背景に高島屋デパートが見えます。信号機のランプが一番左に点灯していますから青信号です。祇園行きの電車が走行している姿を捉えました。
 
京都市電四条線四条河原町   上掲と同じ場所です。夜遅くにもかかわらず、歩道は大勢の人々で埋め尽くされています。
余談ですが、右端の市バスは[42]系統の東土川行き、当時は三条京阪が始発でした。

 
京都市電四条線四条河原町   酔客を乗せたタクシーがたくさん通り過ぎて行く様子が、ブレずに写っています。
デジカメの発達した現在なら驚くことはありませんが、夜中にフラッシュも無しで、手持ちでカメラを構えている小生は奇異に見られたことでしょう。
 


 以上、走行中の夜の電車を撮影することが出来ましたが、大変画質の悪い結果となりました。
口直しに、祇園祭の山鉾を組み立てている写真をご覧下さい。

京都市電四条線四条烏丸   Construction of Yamahoko

毎年7月に行われる祇園祭は京都市民にとって最大のお祭りで、山鉾が市内を巡行することで広く知られています。巡行の当日は、四条通の市電が通行止めになります。その数日前がたまたま休日だったので、祭りの準備を見に行きました。


(1971/7/11)
京都市電四条線四条烏丸   四条通の室町と新町の間で、月鉾の組み立てが行われていました。通りすがりの市電の窓から、乗客が組み立ての様子を眺めています。
四条通では道路南側からの片持ち梁によって架線を吊るし、山鉾が北側の車道を巡行するようになっていましたが、この区間ではセンターポール方式になっていました。四条通をはさんで南北の通りから山鉾が集まってくるためです。
※巡行の当日は一部の架線をはずします。
 
京都市電四条線四条烏丸

京都市電四条線四条烏丸
  京都市電四条線四条烏丸
月鉾の骨組みを組み立てているところです。骨組みは釘を1本も使わず、縄だけで固定されています。
京都市電四条線四条烏丸   骨組みがだいぶ組み上がったところです。これを立ち上げてから車輪や屋根を付け、ペルシャから渡来した豪華な織物や提灯などを飾り付けます。
京都市電四条線四条烏丸   こちらは四条烏丸の西側で、長刀鉾の骨組みを今まさに立ち上げているところです。高さは21.7mもあります。
立ち上げの時間は一瞬ですが、そこに丁度うまく市電がやって来ました。しかし市電の手前にタクシーが重なってしまいました。
京都市電四条線四条烏丸   立ち上がった直後の長刀鉾です。大勢の人が、無事立ち上げた職人技の素晴らしさに見とれています。その横をゆっくりと市電が走っていきます。



※撮影の翌年、1972年2月に四条線は廃止されました。従って、市電と祇園祭の組み合わせは、この夏限りとなりました。また残念なことに、完成した山鉾の美しい姿は、撮る機会がありませんでした。
 
京都市バス四条烏丸   Shijo St. after 45 years

45年後に撮影した四条通、長刀鉾の前です。山鉾巡行の3日前、宵宵宵山の晩なので、すっかり飾り付けもできあがり、お囃子の音が聞こえています。
デジタル技術の発達により、誰でも簡単に夜景を撮影することが出来るようになりました。あいにく市電はもう走ってませんので、市バスの写真を載せておきます。
※[201]系統は市電[1]番の代替系統で、市電と同じ経路を走っています。かつて市電が走っていたことを今に伝える素敵な系統番号です。
(2016/7/14)

References:
http://125px.com/docs/film/kodak/2475.pdf
http://www.gionmatsuri.or.jp/foreign/en/


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