市電のある風景・名古屋

 (1) 名古屋駅前  
日本国旗
 
撮影: 1968~1970, 制作: 2015/1 

生まれてから学生時代までの大半を、ずっと名古屋で過ごしました。これから数回にわたって、名古屋の街に市電が走っていた1960年代後半の風景をお届けします。なにぶん撮影から半世紀にもなろうとする白黒フィルムですので、画質の悪い点はご容赦下さい。
第1回目は名古屋駅前です。駅前には1950年代に建てられた名鉄百貨店や、毎日ビル、豊田ビルなどの多くの建物が軒を連ね、それらの高さが揃っていて均整の取れたスカイラインを形成していました。明るい未来を指し示すかのような青年像は、「青年都市」と呼ばれた名古屋のシンボルでした。

名古屋市電名古屋駅前 
Nagoya City Tram, at Nagoya Station, Jun-1968

名古屋市電名古屋駅前   国鉄の名古屋駅です。この建物は3代目の駅舎として、1937年に建てられました。
手前を走るのは名古屋市電の最終型式にして最高傑作の2000型、2018号です。


(1969/6/24)

名古屋市電名古屋駅前   名古屋駅前の北東角からやや逆光気味に撮影しました。東海道本線は東京からひたすら西へ向かって走っていますが、名古屋から岐阜に至る区間は北へ向かっています。このため名古屋駅の正面玄関は東を向いています。駅前広場には広大な空間があって、左端の名鉄百貨店まで良く見通せました。
この駅舎は1993年に取り壊されて、1999年に超高層のセントラルタワーズが竣工しました。


名古屋市電名古屋駅前   駅の北側にある中央郵便局の角で、市電の線路がカーブしていました。その手前にある日本交通公社の古い建物の1階は、1967年まで名鉄のバスターミナルでした。
東一宮、馬寄、起、黒笹、足助などの郊外へ出発するバスの行き先が走馬燈のように浮かんできます。残念なことにバスの写真は1枚も残っていません。
名古屋市電名古屋駅前   上掲2枚の地点を名鉄百貨店の屋上から撮影しました。方面別に設けられた市電の乗り場が見えます。
変貌が激しい駅前周辺にあって、北東角にある東洋ビルは現在も昔のままの姿を残しています。尚、看板にある東洋信託銀行は2002年にUFJ信託銀行に衣替えしました。

 名古屋市電名古屋駅前   桜通の交差点に設けられたロータリーを貫いて、市電が走っていました。背景は有名な大名古屋ビルヂングです。1965年に完成したときは、そのネーミングが市民の間で話題になりました。このビルは2013年に解体されて、現在は新しい高層ビルが建設中です。
左にあるナショナルの広告塔のある建物が東洋ビルです。
名古屋市電名古屋駅前   ロータリーの中央にあった大噴水の脇を1603号が走っています。
1989年に開業した地下鉄桜通線の工事に伴って、立派な噴水は青年像とともに撤去され、現在は奇抜なモニュメントに替わってしまいました。


(1968/9/20)


名古屋市電名古屋駅前   市電の3番乗り場から北にある大名古屋ビルの方向を見ています。
この日は早朝に雪が降りましたが、すぐに溶けてしまいました。


(1970/1/17)


 名古屋市電名古屋駅前
背景の毎日ビルなど駅周辺のビルには映画館が多数ありました。それも封切館で新作ものを上映するところです。
小生railbusも、ジョン・ウェインの西部劇や石原裕次郎の活劇、吉永小百合の青春映画などを楽しみました。
映画はここで2週間ほど興業したのち、今池あたりの場末の二番館に移っていくのがパターンでした。

2006年、毎日ビルは隣の豊田ビルとともに建て替えられ、 47階建ての超高層ビル・ミッドランドスクエアに生
まれ変わりました。昼間でも薄暗い深いビルの谷間に立つと、この場所に市電が走っていたことを想像すること
はまったくできません。日本中で最も風景が変貌した場所の一つです。

 名古屋市電名古屋駅前
名鉄百貨店の入口に掲げられた大阪万博までのカウント
ダウン時計が時代を物語ります。
(1968/4/4)

 名古屋市電名古屋駅前
右が近鉄の名古屋駅ビル、その隣に1967年開業の名鉄バスターミナルビルがあります。名鉄グランドホテルや名鉄百貨店の新館、メルサが入っています。

名古屋市電名古屋駅前    そう言えば、駅前にはこんな名物おじさんが居ましたね。 


(1969/6/13)
 名古屋市電名古屋駅前   駅前の南側、笹島町の電停です。左端が新名古屋ビルの北館、右がその南館です。交差する錦通に面して、名古屋都ホテルが見えます。1963年に出来た時は、斬新なアルミ製の窓枠デザインが評判になりました。のちに都ホテルは撤退して、跡地にセンチュリー豊田ビルが建っています。 
 名古屋市電名古屋駅前   笹島町交差点の電停で撮影した連接車の2604号です。1940年の紀元二千六百年を記念して命名された型式です。 全長18m、定員185名の巨体で、ラッシュ時に威力を発揮しました。
また[3]系統は、駅前~鶴舞公園~平田町を経由する名古屋市電唯一の循環系統でした。


(1968/9/8)
 名古屋市電名古屋駅前   笹島町の交差点を曲がる[11]系統です。交差点の東南側から撮影しています。
背景に白い6階建ての住友銀行ビルが見えます。このビルの高さあたりが市電の大きさと調和する限界のサイズではないでしょうか?
現在ここには大手町建物の名古屋駅前ビルが建っていて、三井住友銀行やヤマダ電機などが入居しています。


(1968/9/20)
 名古屋市電名古屋駅前   同じく住友銀行ビルを背景に直進する連接車の2701号です。 交通量が多くてなかなか全景を捉えることが出来ませんでした。撮影に邪魔だったのですが、懐かしいコロナのタクシーやいすゞTX型トラックが写真に花を添えています。


(1969/6/24)
 名古屋市電名古屋駅前   新名古屋ビルの南館をバックに笹島町の交差点を曲がる1316号です。
奥に見えるのが北館で、いずれも三井系の建物です。現在ここにはモード学園のスパイラルタワーが建っていて、三井のビルは交差点の南東角に移転しています。 


(1968/9/8)
 名古屋スパイラルタワー   (参考)
2014年2月に撮影したスパイラルタワーです。左がミッドランドスクエアの超高層ビル。駅前は高層ビルが林立して息苦しい感じがしますが、笹島町の交差点には広場があって陽が当たり、開放的な雰囲気があります。いずれにしても、浦島太郎の世界です。


 
参考
http://tsushima-keibendo.a.la9.jp/nagoya-tram/nagoya-tram.html
  ↑お世話になっている「津島軽便堂写真館」様にも名古屋市電のページがあります。ぜひご覧下さい。


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