海外トラム紀行

パリ (3)
仏蘭西国旗
 Paris / France
 
撮影: 2014/7, 制作: 2016/3, 改訂: 2019/12

パリの南西部、オー・ド・セーヌ県を走るトラムT2系統をご紹介します。T2系統は、旧国鉄線を利用して1997年に開業しました。その後2009年に、前作でご紹介したヴェルサイユ門へ延伸され、パリ旧市街へ乗り入れるようになりました。丁度日本の国鉄富山港線がライトレールに変身して、富山市街地へ乗り入れている形と同じです。
併せて、パリの西北にあるセーヌ・サン・ドニ県を走るT4系統の写真もご覧下さい。

 
Porte de Versailles, Paris

Paris tram T2 Porte de Versailles   Porte de Versailles

南側の終点、ヴェルサイユ門です。南西に走るエルネスト・ルナン通りに線路が敷設されています。ここから2つ先の電停、アンリ・ファルマンまでのわずかな区間が、パリ市内(15区)です。
車両は仏アルストム・シタディスの5連接車で、常時2編成を連結しています。全長は32m×2=64mですが、低床車なので実寸よりさらに長い印象を受けます。

※ちなみに日本の路面電車では、京都市営地下鉄に直通する京阪京津線の800系が全長64mです。

Paris tram T2 Porte de Versailles   ヴェルサイユ門の電停は、マレショー大通りを走るT3 系統と直角になった場所に造られていますが、両系統には短絡線がなく、それぞれ異なる車両を使用しています。
 
Paris tram T2 Porte de Versailles   ヴェルサイユ門に到着するT2系統です。
開業当初はT1系統と同じく70%低床のTFS-2形が使われていましたが、2002年から100%低床の302形が導入されています。

 
Paris tram T2 Porte de Versailles
5車体のうち、偶数番目の車両には車輪がありません。
  Paris tram T2 Porte de Versailles 
先頭のカバーを開けると、連結器が出てきます。
Paris tram T2  

シタディス302形の車内です。完全にフラットな低床構造が実現されていて、車椅子でも容易に乗降できます。
 
Paris tram T2 Musee de Serves   Musée de Sèvres

郊外区間に入ると、T2は旧国鉄の線路を走ります。ここはサン・クルー公園にあるセーヴル博物館駅で、セーヌ川に架かるセーヴル橋の上から俯瞰しています。駅名は近くにあるセーヴル国立陶磁器博物館の名前から付けられました。



 
Paris tram T2 Musee de Serves   セーヴル博物館駅のホームです。森の中にあって、静かなたたずまいの場所です。
 
Paris tram T2 Musee de Serves   正面に見えるのが国鉄時代に使われていた駅舎です。煉瓦造りの古めかしい建物が、橋上駅の様式で建てられています。今は使われていない階段の上から撮影したのが、上掲の写真です。
Grande arche de La Defense   La Défense

湾曲するセーヌ川を北上して、T2はラ・ディファンスに至ります。グランダルシュと呼ばれる新しい凱旋門が、 1989年に造られました。広場の地下に、地下鉄、RER(郊外電車)とトラムT2系統の駅があります。ここはパリの郊外ですが、オフィスビルが建ち並び、副都心の様相を呈しています。
T2はこの先、2012年に延伸された北の終点ブゾン橋まで走りますが、残念ながら写真がありません。

Paris tram T4   Aulnay sous-Bois

ここからは、T4系統の写真になります。
T4系統はパリの北西部、セーヌ・サン・ドニ県を走っています。パリ首都圏のトラムの中で唯一このT4系統は、パリ交通公団(RATP)ではなく、国鉄(SNCF)が運営しています。

 
Paris tram T4 Aulnay sous-Bois   上掲のオルネー・スー・ボア駅に進入するT4系統です。T4は国鉄のRER-B線とRER-E線を短絡するローカルのコクティエ線をトラム化したもので、2006年に開業しました。全線が専用軌道になっています。
 
Paris tram T4 Aulnay sous-Bois   車両は独シーメンスのアヴァント(Avanto)です。一般にトラムトレインと呼ばれ、国鉄の本線へ乗り入れが可能な性能を持ち、複電圧対応になっています。
尚、T4系統は本線と同じ交流25,000Vで電化されているため、直流750Vの機器は未使用です。また、今のところT4系統がRERの本線を走ることはありません。
後方に写っているのが本線を走るRERです。

Paris tram T4 Siemens Avanto   シーメンス・アヴァントが疾駆する勇姿を、流し撮りで表現してみました。とてもトラムとは思えないスピードです。

Paris tram T4 Gargan   Gargan

T4は本格的な鉄道の線路上を走るので、撮影ポイントを探すのに苦労しました。途中の Gargan には広い踏切があって、トラムらしい雰囲気が感じられます。

※最近の報道によると、Gargan から分岐して Montfermeil に至る新線の計画があり、その支線は直流の750Vで電化されるようです。
 
Paris tram T4 Siemens Avanto
アヴァントの車内です。トラムにしては豪華な布張りの
ボックス座席になっています。

  Paris tram T4 Siemens Avanto
高速走行するアヴァントは、台車の部分に段差があります
が、乗降口の周辺は低床になっています。

Paris tram T4  

パリのトラムは車内に改札機がありますが、このT4系統だけはホームに設置されています。左が磁気式の切符に乗車時刻を印字するタイプ、右がタッチ式のカード対応機です。
merci de composter avant de voyager (乗車前に改札をお願いします)と書いてあります。無視して万一見つかると、大変なことになります。
Paris tram T4 Bondy   Bondy

RER-E線に接続する終点のボンディ駅に到着しました。トラムのホームからそのままRERに乗り換えて、パリの中心部へ向かうことが出来ます。
 


References:
http://www.ratp.fr/horaires/fr/ratp/tramway
https://en.wikipedia.org/wiki/%C3%8Ele-de-France_tramway_Line_2
http://www.sevresciteceramique.fr/
https://en.wikipedia.org/wiki/Siemens_S70 
http://www.railjournal.com/index.php/light-rail/sncf-orders-tram-trains-for-paris-line-t4.html


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