パリ (2) |
Paris / France |
撮影: 2014/7, 制作: 2016/2, 改訂: 2019/12 |
パリのトラム、T3系統をご紹介します。T3系統はパリの市街地を取り囲む環状道路に沿って、美しい街並の中を走ります。系統は南側を走るT3aと、北東側を走るT3bに分かれています。 |
パリの旧市街を囲む環状のマレショー大通りの上に、T3系統の線路が敷設されています。この環状道路は、外敵からの侵入を防ぐため1840年代に構築された壁の跡地です※。 ちなみにパリ旧市街の面積は78平方kmですから、東京の山手線が囲む面積69平方kmとほぼ同じ広さです。 撮影した場所を示す丸数字に従って、順にご案内します。 ※第三共和国の初代大統領として有名なアドルフ・ティエールが、7月王政の首相時代に築いたので、「ティエール壁」と呼ばれています。 |
① Porte de Versailles T3a系統は、セーヌ川畔のガリリアーノ橋からマレショー大通りを東へ向かいます。ここはヴェルサイユ門の電停です。地下鉄の12号線の駅に接続していて、大変にぎやかな所です。 Porte ○○という名前の電停や地下鉄の駅がたくさんありますが、これらは上述の壁に造られた門が地名になったものです。残念ながら門そのものは残っていません。 |
||
ヴェルサイユ門を出て東へ進むT3a系統です。堂々たる7車体の連接車は全長が43mもあり、1度に500人ほどの乗客を運ぶことが出来ます。 地下鉄を維持するほどの需要が見込めない地域では、トラムが積極的に建設されています。それを支援するために、トラムやバスの交通体系を整備する法律が作られています。 |
朝のラッシュ光景です。次々とやって来るトラムから大勢の乗客が降りてきます。 左後方に見える円形の建物は、パレ・デ・スポーツ。アルミ合金製のドームの中で、コンサートやスポーツイベント、サーカスなどが開催されます。 |
ヴェルサイユ門から東側の急坂を上るT3a系統です。環状道路のマルショー大通りの中央に、車道と分離された軌道敷があります。この通りの外側に平行して環状の都市高速道路が造られているので、道路は比較的空いています。 ※環状道路の内側に高速道路はなく、旧市街の景観が守られています。 |
||
George Brassens 坂道を登ったところが ジョルジュ・ブラッサン です。ここには聖アンソニー教会があり、高さ46mの鐘楼が優美な姿を見せています。学校や研究所などが周囲にあって、落ち着いた雰囲気の場所です。 |
||
② Porte d'Italie ポルト・ディタリー(イタリア門)の電停です。壁があった時代には、イタリア方面への街道が通る門があったと言われています。地下鉄7号線と乗り換えが出来ます。 |
||
T3a系統は、2006年に開業しました。車両は、アルストム・シタディスの402形です。ホイールインモーターの採用で、左右の車輪をつなぐ車軸をなくし、100%
低床構造を実現しています。 |
||
車軸のないタイプの低床車を走らせるには、軌道の保守が重要な要件になります。パリのトラムは専用軌道になっているので、高速化や定時制の確保以外に、レベルの高い保守が可能になります。 軌道に芝生を植える効果は、緑化のほかに騒音の防止があります。 |
アルストム・シタディス402形を正面から撮影しました。軌間は標準軌の1,435mmです。 新たにトラムを導入したフランス各都市では、シタディスが圧倒的なシェアを誇っています。またシタディスには3車体、5車体などの連接車体数と、低床構造の違いによって幾つものバリエーションがあり、都市によって微妙にデザインが異なります。 |
③ Porte de Vincennes T3aの終点、ヴァンセンヌ門です。環状道路を南から来て、左折したところに電停があります。線路は繋がっていますが、T3bの乗り場は道路の反対側にあって、乗換には少々不便です(下図参照)。 次の写真は同じ場所で、環状道路へ出て行くところです。冒頭の写真もここで撮影しました。背景のビルの高さが統一されていて、すっきりとしたスカイラインが形成されています。 |
||
T3系統は、元々の計画では国鉄の廃線を使う予定でした。その遺構が左掲の写真に写っています。廃線は高架になっているため、利便性を考えてT3は道路上に造られました。 |
④ Canal Saint-Deni s ここからはT3b系統になります。 サンドニ運河に沿った絶好の撮影ポイントを見つけて下車しました。後方の石橋の上を国鉄の列車が来るのを待ちましたが、トラムと交差するシーンは撮れませんでした。 |
||
同じく鉄道の石橋をくぐるT3b系統です。なかなか良い雰囲気の所です。うまい具合に人物も配置できました。 |
芝生が敷き詰められた専用軌道を走ります。この区間は線路が道路から離れて敷設されています。撮影の邪魔になる障害物がありません。 |
||
⑤ Porte de la Chapelle T3bの終点、シャペル門に到着する所です。T3bの開業は、2012年12月です。 |
||
T3bの終点はパリ18区、旧市街の北端にあって、国鉄の北駅やモンマルトルの丘にも比較的近いところです。冒頭のヴェルサイユ門で紹介した地下鉄12号線が、市街を貫いてここまで来ています。このようにT3系統は、放射状に伸びる地下鉄各線を環状道路の上で結んでいて、全41電停のうち19箇所で地下鉄に乗り換えができます。 |
||
T3b系統は、ここからさらに西側へ延長される計画で、Porte d'Asnières までの工事が始まっています。背景は国鉄北駅を出発した郊外電車(RER)です。 (2014/7/4) |
References: |
http://www.ratp.fr/horaires/fr/ratp/tramway |
https://en.wikipedia.org/wiki/Thiers_wall |
https://en.wikipedia.org/wiki/Alstom_Citadis |
https://en.wikipedia.org/wiki/%C3%8Ele-de-France_tramway_Line_3 |