パリ (1) |
Paris / France |
撮影: 2014/7, 制作: 2016/2, 改訂: 2019/12 |
2014年7月にフランスを訪問しました。これから数回にわたり、パリとその近郊の都市で撮影したトラムの写真をお目に掛けます。第1回目はパリ北郊、セーヌ・サン・ドニ県を走るトラムのT1系統です。サン・ドニはパリの市内ではありませんが、首都圏の地下鉄やバスなどを運営するパリ交通公団(RATP)が地域の交通を運営しています。 かつてパリには大規模なトラムの路線網がありましたが、地下鉄の発展とともにいったん全滅した歴史があります。近年になってトラムの良さが見直され、現在では8つの路線が復活あるいは新設されています。T1系統はその第1号で、1992年に開業しました。また、T5系統は世界でも珍しいゴムタイヤで走るトラムです。 |
Les Courtilles T1系統の始発は、パリ地下鉄13号線の北西の終点、レ・クルティーユです。地下鉄の階段を上がったところにトラムの乗り場があります。 ここはオー・ド・セーヌ県に属しています。T1に乗って東へ向かい、セーヌ川を越えるとセーヌ・サン・ドニ県になります。終点のノアジー・セックを目指して乗車しました。 |
Le Village T1系統の線路は道路上に敷設されています。道幅の半分以上を軌道敷が占めていて、一般のクルマが走る車道とは完全に分離されています。このような光景を見ることは、日本ではまず不可能と思われます。道路の使い方そのものが電車優先であることに、甚(いた)く感激しました。 |
Le Village から Timbaud にかけての区間は、道路が狭いので、上り下りが単線で別々の道路を通ります。 ここだけはクルマが軌道敷内へ進入できる、唯一の例外区間です。左掲の写真はピエール・ダンボー通り、西行きの一方通行です。 冒頭の写真は、サント・マドレーヌ聖堂の前で線路が二手に分かれるところです。 |
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Timbaud ラウンドアバウト、つまり信号のないロータリー状の交差点を貫いて線路が敷かれています。トラムは電車優先信号に従って、停まらずに交差点を駆け抜けて行きます。敷き詰められた芝生は天然芝で、時々芝刈りをする必要があります。 背景のビルは、化粧品のチューブパッケージ大手、Albéaの本社です。 |
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Gare de Saint-Denis 国鉄RER(郊外電車)D線、サン・ドニ駅の駅前です。石畳の狭い道路をトラムが走ります。手前の分岐線は開業予定のT8系統への短絡線です。T8の工事はほとんど完成していましたが、残念ながら未開業で乗れませんでした。 ※T8系統はその後、2014年12月に開業しました。 |
ここはサン・ドニの中心地で商店が建ち並ぶ賑やかなところです。背景に1867年に建てられたカトリック教会が見えます。 2015年3月にパリ同時多発テロ事件が起きました。このとき爆発があった競技場スタッド・ド・フランスは、ここから南へわずか1kmの地点です。 |
←トラムが走る駅前の道路は、一般車の通行が禁止されています。線路の両脇にクルマの進入を防ぐ球形の縁石が並んでいます。 ↓線路に直角に溝が切ってあるところもあります。 |
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Marché de Saint-Denis サン・ドニ市場です。田舎町といった感じの、落ち着いた雰囲気の街並を走ります。 背景の古風な建物は、Ecole Elémentare (小学校)と、Ecole Maternelle (保育園)です。 |
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T1系統の車両には開業以来、仏アルストム製のTFS-2 が使われています。部分的に低床構造になった独特の形をしています。3車体の連接車ですが、中間車が極端に短くて台車の長さしかありません。乗降口はすべて低床部分に設けられています。 |
Marché de Saint-Denis (Line T5) サン・ドニ市場の北側電停です。ここからT5系統が発車します。良く見るとレールが1本しかありません。仏ロール・インダストリー社が開発したトランスロールというシステムです。 レールは案内軌条とアース線を兼ねていて、車体はゴムタイヤで支えられています。 |
Baudelaire ゴムタイヤのトランスロールは、2006年にミシュランの本拠地クレルモン・フェランで実用化され、その後中国の天津、上海などで開業しています。 パリ交通公団がこのシステムを採用したのは意外にも遅く、2013年のことです。 |
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上掲からやや南の地点です。雨に濡れた路面にトランスロールのヘッドライトが反射しています。背景の看板に、PIZZAと並んでSUSHIがありました。 T5系統は、Marché de Saint-Denis からRER D線の駅がある Garges Sarcelles まで走っています。 |
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再びT1系統に戻ります。サン・ドニ市場から東の区間に入ると、剪定された生垣で軌道敷が分離されている光景が随所に見られます。 |
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Basilique de Saint-Denis 路地裏のような電車専用道を入った所が、サン・ドニ寺院という名の電停です。近くにルイ16世や王妃マリー・アントワネットを始め、歴代の仏王族が埋葬されているサン・ドニ大聖堂があります。 |
T1系統に乗って La Courneuve - 8 Mai 1945 という電停まで来たところ、突然終点だと言われて降ろされました。看板を見ると、この先の Bobigny - Pablo Picasso までの区間が工事中で運休になっていました。全線全区間の完乗をするには、またいつか訪問しなければなりません。 ところで、電停名になっている 8 Mai 1945 は、1945年5月8日という日付ですが、これは欧州における第2次大戦が終わった日、戦勝記念日に当たります。また、Pablo Picasso は有名な画家のピカソです。パリの地下鉄やトラムの駅名には、政治家や文化人の名前を冠したものが多数あります。例えば、Charles de Gaulle, Victor Hugo, Pierre et Marie Curie 等々、枚挙に暇(いとま)がありません。 |
La Courneuve - 8 Mai 1945 「ラ・クルヌヴ 1945年5月8日」の電停です。ここは地下鉄7号線の終点でもあります。駅前には市が立ち、大勢の人々であふれていました。中には体中をベールですっぽりと覆った人も見かけました。 |
この付近にはイスラム系の人々が多く暮らしています。パリ近郊というよりも、どこかアラブの国に迷い込んだような気がしました。 (2014/7/6) |
References: |
http://www.ratp.fr/horaires/fr/ratp/tramway |
http://www.albea-group.com/ |
http://www.railwaygazette.com/news/news/europe/single-view/view/paris-opens-tram-route-t8.html |
https://fr.wikipedia.org/wiki/Translohr |
http://www.alstom.com/ |