海外トラム紀行

リンツからインスブルックへ
オーストリア国旗
 Linz, Innsbruck / Austria
 
撮影: 1995/7, 制作: 2015/1, 改訂: 2019/11 

ベルギーのオーステンデから夜行列車に乗ってオーストリアに向かいました。英仏海峡をトンネルで結ぶユーロスターの開業によって、港町オーステンデから出発する国際列車はほとんど廃止されていましたが、わずかに残っていたウィーン行き急行ドナウワルツァーの旅を楽しむことができました。95年当時、欧州での国境管理は国によって異なり、ドイツを経由してオーストリアに入るには入国審査が必要でした。しかし寝台券を奮発したおかげで、寝ている間にワゴンリーの職員が手続きを済ませてくれました。目的地はウィーンではなくインスブルックでしたので、リンツで下車してインターシティーに乗り換えました。
今回は趣向を変えて、トラムの他にトロリーバスを何点かご紹介します。


 Innsbruck trolleybus
Innsbruck Hauptbahnhof

 Linz tram   Linz tram route 3


オーストリア、リンツ(Linz)の駅前です。リンツには市が経営するトラムが3系統あります。多少の延伸はありますが、基本的に現在も路線の骨格は同じです。
車両は、1970年代の初期に造られたデュバグGT8型、3連接車です。おそろしく縦に細長い印象を受けますが、軌間が900mmというナローゲージのためです。

 Linz tram   フロントガラスに極端な傾斜があって、マスクが窪んだスタイルをしています。これはデュバグ顔として知られるGT型の特徴です。デュバグ(Duewag)社は独デュッセルドルフにある鉄道車両メーカーで、旧西独のトラムはその多くが同社製です。
尚、オーストリアに於いてはウィーンのローナ(Lohner)社がライセンス供与を受けて、デュバグのトラムを製造しています。

 Linz trolleybus   リンツにはトロリーバスが4系統あります。Gräf & Stift社製の古めかしいトロリーバス、201号が健在でした。80年代の初期に造られた、ヴィンテージな香りが漂う名車です。
Gräf & Stift社はウィーンにある独MANの子会社です。オーストリア国内で販売するMANのバスやトロリーバスの多くは、同社のブランドで製造、販売されています。

 Linz trolleybus   201号のリヤビューです。


リンツでは、乗り換え時間がごくわずかでしたので、これら数枚の写真を駅前で撮っただけでした。尚、このトラムターミナルは、2004年に地下へ移設されています。
 オーストリア国鉄   リンツからインスブルックまで乗ったオーストリア国鉄(ÖBB)の急行は、途中のザルツブルグからクーフシュタインに至る区間を、ドイツ領内にはみ出して走る「回廊列車」です。山岳路線のオーストリア内を走ると、距離が長く時間がかかるためです。ドイツ国内はノンストップなので入出国審査はありません。
 Innsbruck tram   インスブルックの駅前です。リンツと同じタイプ、独特の顔が特徴的なデュバグのトラムが停車しています。このトラム76号も、Lohner社がライセンス製造したものです。左のバスは空港行きの[F]系統。型は異なりますが、リンツで見たトロリーバスと同じGräf & Stift製です。
 Innsbruck tram   インスブルックはオーストリアの西部に広がるチロル地方の中心都市です。夏休みでしたので、多くの学生達が遊びに来ていました。
 Innsbruck tram   駅前から少し北へ行ったEtzel Straße(エッツェル通り)を走る[6]系統のトラムです。背景はチロルの山々、右の高架は乗ってきた国鉄線です。


インスブルックのトラムについては、次回に詳しくご紹介します。以下、トラム以外の写真をご覧下さい。

 Innsbruck trolleybus   インスブルックには2本のトロリーバス路線がありました。これは[R]系統で、市の中心部Maria-Theresien Str.と、東にあるReichenauを結んでいます。
車両はGräf & Stift製、GE152M18型の連接車です。1988年から16台が導入されました。電装品はABB(アセア・ブラウン・ボベリ)社製を搭載しています。
 Innsbruck trolleybus   同じくGräf & Stift製の連接トロリーバスですが、上掲よりやや新しいNGE152 M18型です。1992年に10台が増備されました。行先表示器がマトリックス方式に変わっています。系統番号[O](オー)は、Reichenau のさらに東にあるOlympisches Dorfから駅前を経由して、西のHötting West方面まで走っていました。
   
カイザーイエルガー通りからシルガッセへの狭い道を一方通行で走るトロリーの[R]系統です。駅前へ向かう上りの[R]系統は、市街地の北側を経由していました。
 Innsbruck trolleybus  
市街地の中心部、Triumpf-pforte(凱旋門)の角で撮影したトロリーのリヤビューです。ここにはトラムも走っています。


残念なことにインスブルックのトロリーバスは、2007年7月に廃止されました。車両はルーマニアのブラショヴ(Brasov)へ輸出されています。
 Innsbruck bus   このバスは、1970~80年代にかけて一世を風靡した独MANのSL200型です。フロントガラスが横だけでなく、縦方向にも大きく湾曲した形をしています。
 Piaggio   これはPiaggio(ピアッジオ)の小型オート三輪です。ピアッジオはイタリアのポンテデーラにあるオートバイメーカーですが、スクーターの「ヴェスパ」で有名です。映画「ローマの休日」の中で、オードリー・ヘップバーン演ずる王女様が、新聞記者のグレゴリー・ペックを乗せてスクーターを走らせるシーンがありましたね。あのスクーターのメーカーです。
 Innsbruck horse   ワルノリついでにもう一枚、馬車も走っていました。









(11) インスブルックの巻へ続きます。


References:
http://www.urbanrail.net/eu/at/linz/linz.htm
http://en.wikipedia.org/wiki/Trams_in_Linz
http://hampage.hu/trams/innsbruck/e_index.html


Next ContentsTop Page


Copyright© 2014 railbus All Rights Reserved.  
写真及び文章の著作権はrailbusに帰属します。無断転載を禁じます。