*始めに
今回のSSは完全に読み手を選びます。
特に「Wizardry1」未プレイの方にはお薦めしませんというか意味不明だと思います。
よってWizardry1をプレイしてからお読みください。
なおこのSSはPSの「ウィザードリィ リルガミンサーガ」に基づき、アイテム・魔法・モンスターを表示しています。
第一話
エセルナートという世界制覇を目指す王がいた。
圧倒的な軍事力と不思議な魔法の力。
それ故に彼の軍隊は最強無敵であり負けることを知らずに次々と他国を征服していった。
その偏執的なまでの征服欲に人々はそんな彼をこう呼んだ、狂王トレボーと。
だがある時、事件は起こった。
それは彼、トレボーの持つあるアイテムがワードナーと名乗る魔術師に奪われてしまったのだ。
そのあるアイテムとは魔法の護符であった。
この護符は無限の魔力を秘めたものであり、トレボーの世界制覇は無くてはならないアイテムであったのである。
そこでトレボーは護符を取り返すべく軍隊をワードナーが潜むダンジョンへと送り込んだ。
しかしそれは完全に失敗に終わった。
なぜならばそのダンジョン内には無数のモンスターたちが待ち受けていたのである。
いダンジョンでは軍隊は完全な力を発揮出来ず、それ故にトレボーの軍隊にはどうしようも出来なかった。
そこで狂王トレボーはある一石二鳥のアイデアを思いつく。
それは最強の精鋭部隊の育成と、邪悪な魔術師ワードナーに奪われた護符の奪還を目的とするものであった。
すなわち新たなる人材の発掘を目的とした召喚である。
こうして王の命令により王都リルガミンには次々と冒険者たちが集まり、ワードナーの立て籠もるダンジョンへと挑んでいった。
それゆえ始めの頃ダンジョンは狂王の試練場と呼ばれていた。
だがやがてこのダンジョンに挑む者たちが女性ばかりになって来るに連れて呼び名は変わっていった。
すなわち乙女たちの試練場と・・・。
ある一組のパーティーが暗やみに包まれたダンジョンを注意深く探索していた。
彼らはいずれも冒険者歴数ヶ月、ベテランとは行かないまでも初心者の域は越えており、まあ中堅どころといった感じであった。
パーティー構成メンバーは計六人。
これはダンジョンをもっとも有効に探索しうる人数とされており大半のパーティーがこの構成であった。
ちなみにこのパーティーの構成は以下のようになっていた。
七瀬留美 侍 LV.06 中立
折原浩平 戦士 LV.07 善?
沢口? 戦士 LV.06 中立
川名みさき 盗賊 LV.09 中立
長森瑞佳 僧侶 LV.06 善
椎名繭 魔術師 LV.06 善
「ふぅ〜、やったわね。」
侍の七瀬は刀に着いたモンスターの体液を懐紙でぬぐいながら言った。
すると手にしていたロングソードを鞘に収めていた戦士が頷いた。
「たしかに。それにしても七瀬、ちょっと言いたいことがあるんだが良いか?」
「・・・一体何よ。」
「刀を振り回してモンスターを叩き斬る乙女なんていないぞ。」
「・・・言いたいことはそれだけ?折原。」
七瀬は目にも止まらぬスピードで抜刀し、折原浩平の首元に切っ先を向けながらそう言った。
すると浩平は慌てたように叫んだ。
「じょ、冗談だ。だ、だからこの刀、引っ込めてくれ。」
「そ、そうだよ七瀬さん!仮にも仲間なんだし浩平を許して欲しいんだよ。」
慌てて仲裁に入ったのは浩平の幼なじみにて僧侶の長森瑞佳である。
僧侶をしているだけのことはあって善良であり、まさに乙女の鑑というべき存在であった。
「・・・瑞佳の顔に免じて許してあげる。でも今度同じ事言ったら・・・・、分かるわね。」
「は、はい。」
その時、モンスターの死体を調査していた黒髪の少女が叫んだ。
「宝箱見つけたよ〜!」
そこでわっとばかりに他の五人は黒髪の少女の周りに集まった。
「宝箱って本当か、みさき先輩。」
「うん、本当だよ♪」
確かにみさきの目の前には立派な樫の木で作られた宝箱が置かれていた。
「一体何が入っているんだ?」
浩平の言葉に他の五人は考え込んだ。
「・・・カツカレーかな?」
「みゅ〜、照り焼きバーガーなんだもん。」
「名刀が入っていると最高なんだけどね。」
「なんでも良いんだよ。お金でもアイテムでも私たちの役に立てばね。」
「みさき先輩!!さっそく開けてくれよ。」
パーティーのリーダーである浩平の言葉にみさきは頷いた。
「うん、わかったよ。」
そう言うとみさきは腰につけたポーチから何やら様々な道具を取り出し宝箱に罠が仕掛けられているかどうか調べ始めた。
その後ろでは浩平たちが固唾をのんで見守り、ただ一人台詞が無かった沢口がさめざめと泣いていたのであった。
宝箱の罠の解除はなかなか難しい。
なんせ罠には複数の種類が存在するのだ。
すなわち毒針・ガス爆発・石弓の矢・爆弾・スタナー・テレポート・メイジプラスター・プリーストプラスター・警報など。
それらをナイフや針金といった簡単な道具で認識し、解除せねばならないのだ。
みさきは全精神を指先に集中して罠を特定しようとする。
(これは・・・毒針はないね。ガス爆発でも爆弾でも石弓でもない。さては魔法の罠・・・?)
実は何かしら物理的に仕掛けがある罠の方が発見も解除も容易いのだ。
そこでみさきは宝箱をほんのわずかだけ開けるとに薄い刃のナイフを差し込んだ。
これで宝箱の内側に張ってあるお札(これが破けると魔法が発動するのだ)を捜すのだ。
少しづつ慎重に探っていくとやがてみさきはある物が宝箱の内側に張られているのを発見した。
(これをはがせば大丈夫・・・・)
みさきは破れないようにお札をはがすと大きく息を付いた。
「みんな〜、罠の解除出来たよ〜。」
そしてみさきは勢いよく宝箱を開けた。
すると突然パーティーがいた風景が変わった。
「ちょ、ちょっと何事なのよ!?」
「わっ、わっ、わっ〜!こ、ここは此処は?」
「みゅ〜?」
「み、みさき先輩!!これは一体?」
五人の仲間の反応にみさきは舌をぺろっと出すと笑いながら言った。
「てへっ、失敗しちゃった。」
実は宝箱の中にもう一枚、罠が仕掛けられていたのでテレポートが発動、パーティーはどこだかは分からない場所に跳ばされてしまったのであった。
「浩平、どうするんだよ!!」
とっさの状況に弱い長森は思いっきりパニクっている。
そこでリーダー浩平はそれらしいことを叫んだ。
「落ち着け、長森!まずは現在位置の確認だ!!」
そして浩平は目をぱちくりしている繭にデュマピック(位置確認魔法)を唱えるよう伝えた。
「みゅ〜、わかった。唱えるの。」
そして出た結果はパーティーを驚愕させるのには充分な結果であった。
「地下八階だと・・・?」
今までパーティーがいたのは地下三階、まだブルーリボンすら持っていないのだ。
帰還するにはエレベーターが絶対必要なのだがエレベーターを使うにはブルーリボンがいる。
また、マラー(移動魔法)やロクフェイト(帰還魔法)もまだ覚えていないのである。
まさにどうしようもない状況なのであった。
「もうお終いよ・・・・。」
普段きびきびしているだけにこういった場面に弱い七瀬はすっかり落ち込んでしまっている。
危機的状況に弱い長森も同様で、もう一人の男である沢口もすっかり落ち込んでしまっている。
平然としているのは罠を発動させてしまったみさきとデュマピックを唱えた繭だけだ。
もっとも繭の場合は現状を把握していないだけであろうが。
とりあえず浩平はリーダーらしくみんなを落ち着かせることにした。
そういうわけでみんなを呼び集める。
「おい、会議するからみんな集まれ。」
するとにこやかな顔でみさきと繭が、ドヨ〜ンとした顔で七瀬・長森・沢口が浩平の周りに集まってきた。
「とりあえずここから脱出する算段をつけよう。」
浩平がそう言うと七瀬はヒステリックに叫んだ。
「どうやってここから脱出するのよ!!モンスターだって歯が立たないぐらい強いのに!!!」
そうここ地下八階、いままでパーティーが経験したいかなるモンスターよりも強いモンスターしか出てこないのだ。
という訳で七瀬の言葉を聞いた長森と沢口はますます暗い顔をした。
「もう駄目だよ・・・・」
「うがぁ〜!!」
その時突然背後からモンスターの咆哮が聞こえた。
あわてて冒険者たちは振り返ると戦闘準備を整える、とモンスターが十数匹姿を現した。
それは・・・空を飛ぶ竜、ワイバーンである。
単体ではそれほど驚異ではない(あくまでもそれ相応のLV.の冒険者にとって)が複数で登場するとやっかいである。
そこで浩平たち六人は逃げようとした。
しかし十数匹もいるワイバーンである。
逃げ切れる訳もなくパーティーは完全に包囲されてしまった。
「わっ、囲まれちゃったよ。」
みさきが落ち着き払った口調でそう言う。
普段は頼もしいのだがこの状況、何ら根拠もない落ち着きであることが分かっている他のメンバーには正直言えば疎ましいぐらいであった。
それでも逃げ切れないとなってはみさきのように落ち着いてしまっている方が得であろう。
パーティーは一丸となってワイバーンの群れと向かい合った。
「みゅ〜、ラハリト(火炎属性攻撃魔法)!!」
繭の唱えた攻撃魔法の炎がワイバーンに襲いかかる。
たちまち炎がワイバーンにからみつくがそれほどのダメージは与えていないようだ。
「バマツ(防御魔法)!!」
長森が唱えた防御魔法はパーティーに不可視の盾となり、AC(アーマークラス)を向上させる。
「ちぇすとー!!」
七瀬の素早い斬撃が一匹のワイバーンを捕らえるとそのままなますのように切り刻む。
だがパーティーの先制攻撃もそれまでであった。
それまで一方的に攻撃を受けていたワイバーンの群れがその牙をむいたのである。
たちまち攻撃しようとしていた南沢口がワイバーンに襲われる。
「沢口!!危ない!!!」
「俺の名前は南だ〜!!ってぎゃぁー!!!!」
沢口は絶叫と共に絶命した。
十匹ちかいワイバーンにのしかかられてはたかが戦士一人ではどうしようも出来ないのだ。
「沢口!!」
「・・・南君じゃなかったっけ?」
浩平の言葉に長森がさっきまでのパニック状態は何処に行ったのやら落ち着いた口調でそう言った。
だが浩平はそんな長森の言葉などどうでも良かったようだ。
本音を大声で叫んだ。
「野郎の名前なんかどうでも良いがせっかくの盾が死んでしまった!!!」
「こ、浩平〜。」
「・・・折原、あんたねえ〜。」
長いつきあいの長森は慣れているがそうではない七瀬はあきれ顔だ。
だがそんな風にアホなことをやっているような状況ではなかった。
次々とワインバーンが浩平たちのパーティーに襲いかかる。
「繭!もう一発ラハリトを頼む!!」
そんな浩平の言葉に繭は哀しそうな顔をして首を横に振った。
「みゅ〜、もう魔法は打ち止めなの・・・。」
「なんだと!!それじゃあ長森・・・って無駄か。」
そう無駄であった。
回復魔法ディアルをみんなに掛けていたためもはや長森の集団攻撃魔法も打ち止めだったのだ。
為すすべもなく浩平たちはダンジョンの片隅へと追いやられていく。
まさに絶体絶命のピンチであった。
ワイバーンは一応ドラゴンではあるがブレス等は一切吐かない。
ただ上空から鋭い牙と爪で冒険者を襲うだけなのだ。
もちろんそれでも十分な驚異には違いないが七瀬・浩平・みさきはなんとか攻撃をしのいでいた。
だが浩平と七瀬はすでに全身傷だらけ、長森のディオス(最弱の回復魔法)と繭のディアルの薬で何とか戦えているようなものであったのだ。
ちなみにみさき先輩はひょいひょいとワイバーンの攻撃をかわしており、一撃も攻撃を受けていない。
「も、もう終わりだよ・・・・」
だがどんなに凌いでいてもやがて限界が来る。
とうとう回復手段が完全に尽きてしまったのだ。
このままでは浩平も七瀬も一撃食らえば死んでしまうであろう。
戦士系の冒険者が一人もいない、盗賊と僧侶・魔術師だけのパーティーの結末は誰の目にも明らかな状況であった。
その時救世主が現れた。
「マダルト(氷系攻撃魔法)!!!」
その一声とともに魔術師の攻撃魔法が発動した。
たちまちワイバーンたちは全身カチンコチンに固まり、そして砕け散った。
「い、一体何なのよ!?」
「わ、わかる訳ないだろ・・・・」
「みゅ〜?」
突然の出来事にパーティーの面子はみな呆然としていた。
はっきり分かっていることはとりあえずワイバーンにこれ以上襲われない、という一点だけであったのだ。
やがて暗闇の中から一人の人物が現れた。
どうやらその人物が浩平たちを救ってくれたらしい。
そこで五人はとりあえずお礼を言うべくボロボロの体を引きずってその人物の元へと駆け寄った。
その人物は金属鎧ではない、すなわちレザーアーマーを身につけた少女であった。
そして手にはメイスとスモールシールドを、そして見事な三つ編みの頭にはマラーの冠を身につけていた。
こんな装備をするのは司祭だけである。
「ありがとうございます、司祭様。」
僧侶である長森がそうお礼を言うと少女は無表情のまま頷いた。
「・・・たまたま通りかかっただけですから。」
どうやら助けたのは偶然、たまたまに過ぎないというわけだ。
それにしても無愛想な少女である。
それでも絶体絶命のピンチを救ってくれたのには違いない。
生き残った五人は名乗ると口々にお礼を言いまくったのであった。
すると司祭の少女はちょっと表情をゆるめた。
全くの無愛想というわけではないらしい、そして少女は言った。
「・・・私は里村茜と言います。まあ見ての通り司祭をやっています。よろしかったらけが、治して差し上げましょうか?」
断る理由もない、というか非常にありがたかったので彼らは頷いた。
「・・・ディアルマ(最強の回復魔法)」
茜の唱えた魔法は全身傷だらけであった浩平と七瀬の二人を癒す。
と言うわけで今や二人はすっかりいつもの状態に戻っていた。
すると茜は不思議そうな表情を浮かべて五人の冒険者たちに尋ねてきた。
「一体どうしてこんな所にあなた方はいるのですか?どう考えてもまだここに来るようなレベルではありませんが?」
別に顔にレベルが書かれているわけではない。
ただ彼らの装備があまりに貧そうであったから分かったのであろう。
まあとりあえず彼らは茜に事情を話すことにした。
「・・・珍しいこともあったものですね。テレポートの罠で地下三階地下八階に跳ばされるなんて。それにしても岩の中に跳ばされなくて良かったですね。」
茜の言葉に五人はうんうんとばかりに頷いた。
「本当だよね〜。」
「みゅ〜、そう思う。」
「運が良かったんだか悪かったんだか・・・」
「もうこんなことはこりごりだよ。」
「まあこれもひとえにリーダーの俺の行いの良さだな。」
五人の相づちを聞いた茜は尋ねてきた。
「・・・それではあなたたち、どうやってリルガミンの街に戻るのですか?」
「そ、それは・・・・その・・・またテレポートの罠に引っかかって・・・・。」
浩平のとぎれとぎれの言葉に茜は溜息をつくと提案した。
「私がマラーで送って差し上げましょう。構いませんよね?」
「「「「「はい!!」」」」」
「・・・それでは準備よろしいでしょうか?」
茜の言葉にみさき先輩が手を挙げた。
「あの〜ちょっと良いかな茜ちゃん・・・」
「・・・茜ちゃんですか・・・、まあ良いですけど何ですか?」
「宝箱開けるから待っていてね♪」
そう言うとみさき先輩はワイバーンが残した宝箱に取り付いた。
そしてあれこれと罠を探っていく。
やがて元気よくみさき先輩は叫んだ。
「解除完了したよ。開けるね。」
「ちょ、ちょっと待って!!」
慌てて七瀬がみさきを止めた。
もう一度罠の解除に失敗してどこかに跳ばされるのはいやだったからであろう。
そして七瀬は茜に向かって懇願した。
「お願いがあるんだけどカルフォ(罠識別魔法)、唱えてくれない?」
「・・・分かりました。それではカルフォ。」
そして茜は頷いた。
「大丈夫です。もう罠は解除されていて何も反応しませんよ。」
「ほらね♪同じ失敗は繰り返さないよ♪」
そう言ってみさき先輩は宝箱を開けた。
すると中からはいくつかのアイテムが出てきた。
「これ一体何なのかな?」
みさきが首を傾げると茜がおずおずというかまあ渋々というか提案した。
「よろしかったら鑑定しましょうか?」
すると浩平はぽんと手を打った。
「おう、そうか。茜は司祭だからアイテム鑑定が出来るんだな。」
「ええ、まあ・・・」
その言葉を聞いた長森は勢い勇んで懇願した。
「里村さん!!ぜ、是非鑑定してよ!!お店で鑑定して貰うのはお金がかかってかかってしょうがないんだよ!!」
「・・・わかりました。それでは・・・・」
茜は鑑定を開始した。
目を閉じて神経を集中させていた茜ではあったがやがて目を開いた。
「どうだった?」
浩平が尋ねると茜は無愛想な表情のまま言った。
「カシナートの剣一本、メイス+2一つ、ショートソード+2,シールド−1一つですね。」
「「カシナートの剣!?」」
浩平と七瀬の声がハモった。
カシナートの剣〜それは非常に強力な剣である。
戦士系ならばだれでも装備することが出来、しかも常に強力な一撃を与えられるというすばらしい一品なのだ。
この剣を上回る武器は伝説のハスニールか侍専用のムラマサしか存在しない。
だから浩平と七瀬の二人は共にこの剣を欲しがった。
「俺がこいつは頂く!!侍の七瀬にはムラマサが待っているからな。」
浩平がそう言えば七瀬も負けていない。すぐに切り返す。
「あんたなんかにこの剣はもったいないわよ!!私が貰う!!!」
はっきり言ってどうでも良いこの口論は果てしなく続くかのように思われた。
だがその口論も終息するときがやってきた。
「じゃんけんでもしたら?」
みさき先輩のこの一言に二人はぽんと手を打った。
「なるほど。それなら結果は一目瞭然、恨みっこ無しでいけるな。」
「そうね、私も依存無いわ。」
というわけでカシナートの剣の所有者決定方法はじゃんけんに決まった。
そして結果は・・・言うまでもないが浩平の勝ちであった。
「うぅぅ〜、何でいつも私が負けるのよ・・・・」
七瀬はそう言うが理由は単純であった。
なぜならば七瀬の考えは顔に出やすく、それゆえに浩平は簡単に勝つことが出来たのである。
「これでカシナートの剣は俺の物だな。」
浩平は七瀬に見せつけるようにカシナートの剣を身につけた。
そんな姿を七瀬は恨みがましそうに睨んでいるが浩平は何処吹く風である。
にやりと笑うと七瀬を無視して茜に頼み込んだ。
「それじゃあ準備は良いからこのダンジョンから俺らを出してくれ。」
「・・・はい、わかりました。」
茜は頷くとデュマピックの魔法を唱えて現在位置を確認、それからしかる後にマラーの魔法を唱えた。
すると浩平たちは地下一階、リルガミンの街まで階段を上ればすぐそこ、という位置までたどり着いていた。
「うぅぅ〜、まさか生きて再び日の光を浴びられる日が来るなんて・・・・」
「本当だよ、いつ浴びても良いもん。」
「まあ確かに俺は今生きている、って感じられるもんな。」
「みゅ〜♪その通り♪」
「暖かい日の光を浴びると眠たくなっちゃうよね。」
まあ冒険者たちにとって日の光はまた格別なのであった。
おまけ
七瀬:「・・・そういえば何か忘れているような気がするわね?」
浩平:「そうか?七瀬の勘違いなんじゃあ?」
長森:「私も七瀬さんと同意見なんだもん。何か忘れている気がするんだよ。」
繭:「みゅ〜!一人足りないんだもん!!」
みさき:「そうなの?」
七瀬:「・・・そう言えば一人欠けているわね。」
浩平:「・・・そういえば沢口の死体を回収するのを忘れた!!」
長森:「南君じゃなかったけ?」
繭:「名前は忘れたもん。でもその人の死体、地下八階に忘れた・・・。」
みさき:「みんな忘れん坊だね♪」
そのころ地下八階では・・・・・。
モンスターに死体を綺麗に平らげられた沢口(南?)は消失(ロスト)したところであった。
あとがき
機動警察Kanonで第一小隊を書いていたらついONEが書きたくなりましてこんなのを書いてしまいました。
それと前から書いてみたかったWIZ−SSでもありますが。
完全にWizardy未プレイの方は置いてきぼりですね。
まあおもしろいですから一度プレイしてみてください。
2001.05.29