望月あやめ編
警告
このSSを読む前に“BASE SON ”のHPを見てください。
当SSはそこにあるキャラクター紹介のSSの続きということにしてありますので。
(↑のように書いていましたが“BASE SON ”のHPの更新で無くなってしまいました)
かわりにこれを発見したのでこれを先に見てください。
またOVA(小説・漫画でもOK)の「R・O・D」(このURLはスタジオオルフェ)を見るようお勧めします。
でないと意味不明かと思いますので・・・
「・・・神保町に行きたいです。」
「じ、神保町?」
望月あやめの言葉に(名字不詳)和弘は思わず聞き返した。
どこかで聞いたような地名ではあったが和弘にはよく分からなかったのだ。
それでも図書館以外の名前だ。
和弘はすっかり行く気になってあやめに尋ねてみた。
「そこにはよく行くのか?」
するとあやめは首を横に振った。
「ここからは遠いですから、しょっちゅうではありませんが・・・でも、たまに」
「楽しいところか?」
和弘が尋ねるとあやめはコクコクと頷いた。
「はい・・・、とても楽しいところです。私にとっては・・・」
「よし。それがどんな所かは知らないが、とりあえず行ってみよう。」
あやめの言葉に和弘は神保町へと出かけることにしたのであった。
「どこかで聞いた名前だと思った・・・・。」
和弘は呆然としたように呟いた。
和弘の目の前に広がっていたのは世界最大規模の古本屋街神保町であったからだ。
その規模はすさまじく、まさに愛書狂には楽園なのだ。
というわけで望月あやめの目つきはすっかり変わっていた。
「ああ・・・、こんなに欲しい本が・・・読みたい本がいっぱい・・・」
あやめはエクスタシーがたっぷりこもった声を漏らした。
そしてその頬はすっかり赤く染まっていた。
さらに眼鏡の下の目はすっかり潤んでいた。
そしてその恍惚とした表情・・・。
正直言えば和弘と一緒に一夜過ごしたときでも(平たく言えばやっている最中でも)これほどの表情は見たことがない。
すっかり和弘は落ち込んでしまった。
「・・・どうせ俺は下手くそだよ。短小だし早漏だし皮かむりだし・・・」
どうやら自分はさほど興味がない本に負けてしまってショックだったらしい。
すっかり自信を失ってしまったようだ。
というわけで和弘は永遠の世界へと再び旅立ってしまった(笑)。
そしてそれから数時間後・・・・。
ようやくと永遠の世界から戻ってきた和弘の目の前には多量の本を買い込み、そしてその本を読みふけっているあやめの姿があった。
「・・・お前は読子・リードマンか!!」
ようやくと神保町という名前を思い出し、和弘はあやめにそう叫んだ。
しかしあやめは気がつかずに目の前の本を読みふけっている。
和弘は一瞬気落ちしたもののすぐに気を取り直しあやめの気を引こうとした。
しかし何をやっても無駄であった。
大声を張り上げても肩を叩いても目の前に手をひらひらしても。
さらに人前であることを気にしつつもアレやコレをしても。
それでもあやめは和弘に気がつかずに本を読みふけっている。
その集中力はたいしたものだ。
やもえず和弘はあやめの注意をこちらに引くのは諦め、本が読み終わることにした。
それから数十分後。
何冊目かは分からないが読み終えた本をパタンと閉じながらあやめはポッーとしたように余韻に浸りながら呟いた。
「ああ・・・素敵な話でした・・・」
「読み終わったか?」
そこへそんな余韻など感じたことがない和弘は声をかけたのであやめはビックリしてしまった。
「わっ!?・・・って和弘さん、驚かせないでください。」
「・・・お前が俺を無視して本の世界に入り浸っていたんだろが。」
するとあやめは憤然としたような表情を浮かべて言った。
「だってこの本、私前からずっと読みたいと思って本で・・・」
「分かった分かった。」
和弘は手をパタパタ横に振りながらあやめの言葉を遮った。
読書の習慣がない彼としてはこういうあやめの考え方が全然分からなかったのだ。
「それにしても本が絡むとお前、性格が変わるな。」
「・・・そうですか?」
「ああ。」
和弘はうなずき、そして続けた。
「まるで『R・O・D』の読子・リードマン、そのままだ。」
「・・・誰ですか?その読子さんというのは」
どうやら愛読狂のあやめではあったが自分の同類をかなり誇張して描いたアニメ(小説・漫画も)は知らなかったらしい。
そこで和弘は言った。
「説明しても構わないが・・・直接見た方がわかりやすいだろう。」
というわけで二人は和弘の家に向かうことになった。
「これを見ればたぶん分かるはずだぞ。」
そう言って和弘が取り出したのは一本のビデオテープであった。
ちなみにこれはレンタルビデオで借りたものをダビングしたものだ。
「・・・一体何なのですか?」
「だから見れば分かるって。」
そう言って和弘はビデオデッキにテープを入れると再生ボタンを押したのである。
こうして「R・O・D」上映会が始まった。
(1時間30分経過・・・・)
全3話(ちなみに2001年8月19日現在では2巻までしか出ていません)を見終えたあやめはうっとりした表情で呟いた。
「・・・私もあんな本で埋もれた家に住みたい・・・」
「・・・やはりそう来たか。」
和弘は予想通りの反応に苦笑した。
だが続く言葉は洒落にならなかった。
「・・・私も大英図書館特殊工作部のエージェントになりたい・・・・」
「・・・おい(汗)。」
「私も本や紙にあそこまで愛されたい・・・」
「・・・俺が居るだろ?」
しかしやめは首を横に振った。
「和弘さんよりも本に囲まれていた方が幸せです。」
「う、嘘だろ!?」
「本当です(0.1秒)」
秋子さんバリのあやめの速攻決断に和弘は今まで以上にショックを受けた。
「ちきしょ〜!俺は本なんか大嫌いだ〜!!!!」
そう叫ぶや和弘は自分の家を飛び出した。
そして永遠の世界に三度旅立ち、そして戻ってこられなくなってしまったらしい。
その姿を二度と見せることはなかった。
完
おまけ
それから数年後・・・。
「ザ・ペーパー、仕事ですよ。」
「はい、分かりました♪」
大英図書館の地下にある特殊工作部で嬉々として働く望月あやめの姿があったという・・・。
あとがき
BASE SONのHPでキャラクター紹介のSSを読んで速攻考えついたネタです。
たぶん「ONE2」を使ったSS、第一号ではないかと自負して居るんですが。
ちなみに「お前は読子か!」というのも私の反応です。
それにしても「ONE2〜永遠の約束」はどんな話になるんでしょうね。
ちなみに「R・O・D」も結構おもしろいのでまだの方、読むなり見たらいかがでしょう?
どうやら初期設定とはあやめですが相当変わってしまったようです。
というわけで公開中止します。
再UPします。
2001.08.19