宮仕えはつらいよ〜プリムの細腕奉公記

第1話.プリム メイドになる。

 

 

 「初めまして!プリム・ローズバンクと言います!」

私は目の前の年増、おっと訂正、メイド頭のマウリィさんに頭を下げました。

すると私の目の前にいたマウリィさんは感心したように頷き、そして言ったのです。

「良い返事です。さすがは先輩のお孫さんだけはありますね。」

 

 そう、私の祖母もここドルファン城でメイドを務めていました。

だからこそ私のような小娘でも城のメイドになることができたのです。

 

 「とりあえず最初は見習いとしてやって貰います。」

マウリィさんの言葉に私は頷きました。

当然のことです。

いきなり大役を任される訳がありません。

だから私は頑張ります。

すこしでも王家の人間に近づくために・・・。

 

 

 晴れてメイドになった私は頑張って働き続けました。

それこそ比喩でもなんでもなく人の二三倍は働きました。

そしてとうとうその日がやってきました。

 

 

 「プリム、貴方の配属が正式に決まりましたよ。」

マウリィさんの言葉に私は頷いた。

とうとう決まったのだ。

これからの頑張りによって私の目的は近づく・・・。

「貴方の配属先は・・・」

メイド頭の言葉に私は耳をすませました。

なんでですかって?

それはもちろん聞き逃さないために決まっています。

その時信じられないような言葉がメイド頭の口から飛び出しました。

「貴方の配属先はプリシラ王女付きメイドです。」

「はい!?」

私は自分の耳を思わず疑ってしまいました。

こんな都合の良い話、幻聴に決まっています。

しかしそうではありませんでした。

メイド頭はもう一度、同じ事を言ったからです。

「貴方の配属先はプリシラ王女付きメイドです。」

と。

それでも私は信じ切れませんでしたから尋ねてみました。

しかし答は変わりませんでした。そう、私は第一の目的を果たしたのです。

 

 翌日、私はマウリィさんに連れられてプリシラ王女の部屋へとやって来ました。

えっ!?何故かですって。

それはもちろんプリシラ王女と対面するためです。

なんせお側にお仕えするのですから王女様と顔見知りになっていなくてはいけませんからね。

 

 「失礼します。」

メイド頭はドアをノックし、そう声を掛けると王女様の部屋の中へと入って行きます。

そこで私もその後に続いて王女様のお部屋へと入りました。

そして私は感嘆の溜息をつきました。

王女様のお部屋のすばらしさに感動したからです。

その部屋の調度品はどれもこれも一流の家具職人の手からなる見事な物ばかりでした。

そしてそれらの素晴らしい調度品の中に王女様は佇んでいました。

それはもう、例えようがないほどのお姿で・・・。

所詮庶民の生まれと王族の人間では生まれながらにして格が違います。

ですから私はマウリィさんと王女様のお話を全く聞いてはおらずただボーっと立ちつくしているだけ

でした。

 

 「きれいな方でしたね・・・。」

王女様の部屋を退出した私はうっとりしたようにそう声を漏らしました。

それを聞いたマウリィさんは何とも例えようのない表情を浮かべ、そして言いました。

「そ、そうですね・・・。それよりもプリム、つらくても頑張るのよ。」

マウリィさんの言葉に私は力強く頷きました。

すっかり当初の目的を忘れてメイドとして頑張るために・・・。

これもやはりメイドだった祖母の血なのでしょうかね?

とにかくやる気満々になった私は軽い足取りで同僚達が待つ、王女様付きメイド専用の控え室へ

と歩いていきました。

私の背後でマウリィさんが

「うぅぅ・・・良い子なのに・・・・、つらくても頑張ってね。」

と呟きながらハンカチで目頭を押さえているとも知らずに・・・・。

 

 

あとがき

第三弾SSはプリムです。

実は「Codottiere〜傭兵隊奮戦記」第三十六章を書いているときにプリムが気に入ってしまいまして。

それでこんなのを書いてみました。

とりあえず予定としては全5話ぐらいを予定しています。

まああくまでも予定で、短くなったり長くなったりすると思いますが。

最後までお付き合いして下さると嬉しいですね。

 

 

平成13年1月13日(改訂版同年1月15日)


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