バルサミコ酢についての知識をここで少しご紹介いたします。 |
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【アチェート・バルサミコとは】 |
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ぶどうジュース(MOSTO)の濃縮液が原料で、12年以上樽を変えながら長期間にわたって
アルコール発酵と酢酸発酵を同時に行わせたもので、モデナ地方、レッジョ・エミーリア地方 で作られる2種類があります。 |
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【アチェート・バルサミコの歴史】 |
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「公爵の酢」、「黄金の液体」、「調味料のキャビア」などといわれる「アチェート・バルサミコ」
は長い年月をかけて、人の手によって作られた1グラムあたり最も高価な食品です。モデナとレッジョ・エミーリアの地域は11世紀から樽で長期間熟成させた酢で評判が高く、
1046年のACETO PRESTIGIO(高貴な酢)の名でローマ法王クレメンテ2世の戴冠式の
記録にも見られ、また当時の神聖ローマ帝国の皇帝ハイリッヒ3世がローマ法王の
戴冠式に出席した際、この「高貴な酢」の最高級品を所望し、現在のドイツに持ち帰ったと
いわれています。この時代、この「高貴な酢」はモデナを中心とする上流階級の間だけで
生き続けていました。中世後期とルネッサンス期には飲み物として、ペストの治療薬として用いられていました。1515世紀、フェラーラ、レッジョ・エミリア、モデナに亘る地域はバルサミコ王国といわれる
エステ公爵の領土で、このフェラーラでエステ家の一員と結婚したルクレチア・ボルジアは、
モデナの酢を身体と精神の強壮剤として愛用していたそうです。
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1556年に酢は4タイプに分類されました。 |
○ ダ・アグレスト:若いぶどうのように酸っぱいもの
○ ペル・クチーナ:料理用
○ ダ・ターヴォロ:食卓用
○ ペル・ジェンティル・ウオーミニ:尊い方用 |
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18世紀になってエステ家がフェラーラからモデナに移り、初めてアチェート・バルサミコが
この酢の名前として使われるようになり、熱帯アメリカのパンヤ科の木の香りからこの名前が
つけられました。(この木は非常に軽いことから模型飛行機などに使われています。)19世紀初め、モデナの大公フランチェスコ4世はヨーロッパの元首にア
チェート・デル・デゥーカ (公爵の酢)をふるまいました。このフランチェスコ4世はイタリア統一運動に馴染めず、
エステ家も終わりを告げたのでした。そして、モデナとレッジョ・エミーリア周辺のポー側流域の農業地帯とその南側の丘陵で
アチェート・バルサミコ家の宝として受け継がれていったのです。これらは自家用がほとんどで、一部は大変貴重な贈答品として使われており、あまり
知られていなかったため、1960年代まではアチェート・バルサミコの生産は減少の一途を
たどっていましたが、1970年代のヌーヴェル・クイジーヌやクチーナ・クレアティーヴァの
影響で世界に広まり、一般家庭でも手に入るようになり引く手あまたになっていったのです。このためイタリア各地はもちろん、方々の国で似て非なる酢を工業
的に作り、
アチェート・バルサミコの名前と酢が氾濫し、混乱状態になりました。この混乱を避けるため、代々受け継がれてきたアチェート・バルサミコとの違いを求め、
モデナ・バルサミコ協会が働きかけ1987年にアチェート・バルサミコに対するD.O.C.がモデナ
とレッジョ・エミリアで認められたのです。1993年にアチェート・バルサミコの名前やモデナ、レッジョ・エミリアの地名を使うことに対して
の規制を行いましたが、残念ながら実際は安価なアチェート・バルサミコが市場に氾濫しているのが現状です。モデナおよびレッジョ・エミリアの伝統的なア
チェート・バルサミコも絶対量は少なく、除々にではありますが生産量を着々と伸ばしています。 |
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【伝統的アチェート・バルサミコの条件】 |
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アチェート・バルサミコはワイン酢ではありません。
以下の条件を満たしたもの以外はアチェート・バルサミコとはいえません。 |
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1. |
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生産地はエミリア・ロマーニャ州のモデナ、またはレッジョ・エミーリアに限られる。 |
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2. |
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伝統的な手法とモストコットに長期間のアルコール発酵および酢酸発酵を同時に促し、少なくとも12年以上熟成させたもので、典型的なアチェート・バルサミコの味と、香りを
持つものとする。 |
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3. |
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熟成のための樽は良質の樫・栗・桑・杜松(ねず)・桜・ニセアカシアを利用する。この6種類に限られ、他の材質では認められません。 |
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4. |
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ぶどう酢を直接加熱して濃縮した濃縮ぶどう液(MOSTO COTTO)が原料であること。 |
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5. |
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MOSTOのためのぶどう品種
モデナおよびレッジョ・エミーリアで栽培された下記のぶどう品種に限る。
白ぶどう:トレッビアーノ、オッキオ・ディ・ガット、スペルゴラ
黒ぶどう:ランブルスキ、ベルツェミーノ |
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6. |
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MOSTO COTTOの製造は同地域におけるMOSTO COTTO専用の場所、または同地域のマルサラ酒製造工場で生産されたものに限る。 |
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7. |
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熟成にはさまざまな容量とさまざまな木の種類の樽に詰め替える作業を行い、その環境は風通しが良く気温の差があること。 |
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8. |
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スピランベルトでのアチェート・バルサミコ生産者組合が組織する委員会の審査に通った製品であること。(ジウジアーロのデザインしたボトルに入れられる。) |
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9. |
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濃い褐色の液体で甘酸っぱく香りが強いこと。 |
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10. |
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酸度が6%以上であること。 |
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11. |
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アルコール度は1.5%以下であること。 |
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12. |
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1リットルにつき30グラム以上の糖分を含むこと。 |
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13. |
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添加物を一切加えないものに限る。 |
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【伝統的アチェート・バルサミコの製造過程】 |
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@ ぶどうの収穫 |
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モデナおよびレッジョ・エミーリア地域で収穫される5種類のぶどう品種が使用を認可されているが、 実際は甘味の強いトレッビアーノ種を使うことが多い。 |
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A 砕いて樽に入れる |
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収穫したぶどうを砕き果皮や種子が混ざった状態で十数時間置く。
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B ろ過 |
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二重の麻袋を使って果汁が自然に落ちるのを待つ。
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C 煮詰める |
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銅製の鍋を使い、あくを引きながら焦がさないように 数時間かけて煮詰める。
ここでMOSTO COTTOの状態になる。 |
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D 冷まして保存
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E 樽に入れて発酵、熟成させる。 |
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12年以上かけて、オーク・栗・桜・杜松・ニセアカシア・桑の
上質な樽に木の香りを移し変えていく。常に空気に触れるように布の蓋をする。移し変える時期と木の樽の順番は製造者によって違い、これは規定がないので製造者によって味が違うものが出来る。 |
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【アチェート・バルサミコの審査方法】 |
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モ
デナとレッジョ・エミーリア両県では多少好みが違い、モデナでは甘味の強いものが好まれ
レッジョ・エミーリアではスパイシーな味が好まれています。100リットルあるぶどう果汁は伝統的手法によって12年後には15リットル以下の量になりま
す。伝統的モデナ・アチェート・バルサミコと認定されるためには、スピランベルトで行われる伝統的
アチェート・バルサミコ鑑定士による評定で400点満点の内250点以上とらないといけません。この会に出品する前に、モデナの伝統的アチェート・バルサ
ミコ協会により一次審査が行われ、5名の鑑定士(MASTRI
ASSAGGIATORI)の全員一致でコンクールへの出品資格が得られます。この審査に通ったものは、100ccの協会共通のボトル(ジウジアーロのデ
ザイン)に入れて販売することができるのです。伝統的レッジョ・エミーリアのアチェート・バルサミコの場合は少し違い400点満点には変わり
ないのですが、トラディチオナーレ、クァリタ・スペリオーレ、エクストラ・ヴェッキオの3つの
カテゴリーに分類され、この3種類ともレッジョ・エミーリア協会共通の100ccのボトル(モデナ
のボトルと違い細長い形のデザイン)に詰めて販売することができます。レッジョ・エミーリアの生産者によると、違うグレードの伝統的なアチェート・バルサ
ミコを 使用者が選べるのでこの方が良いということです。両地区の評定については議論が交わされていますが、レッジョ・エミーリアの方がいくらか
ゆるいのではないかといわれています。アチェート・バルサミコの生産者数は両県合わせて約1500軒、内伝統的な酢を作っている
生産者は両県合わせて336軒(モデナ/276軒、レッジョ・エミーリア/60軒)で、生産量はモデナとレッジョ・エミーリア合わせても約1760リット
ルしかありません。 |
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【工業的に作られたアチェート・バルサミコ】 |
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伝統的でなく、よくスーパーなどにある安価なアチェート・バルサミコとは、何でしょう?
これは10年以上熟成させたワイン・ヴィネガーを、ぶどう汁に加えて短時間でアルコール
発酵を行い、カラメルの添加が認められていて酢酸発酵を行わせ、酢酸は6%以上で
アルコール度は1.5%以下、1リットルにつき30グラム以上の糖分を含むなどの事項を
守ればアチェート・バルサミコと名乗れ、これをいうのです。味と香りは生産者に依って全く違います。 |
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【酢の効用】 |
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○ 食欲増進 |
口や胃の粘膜に作用して、毛細血管を収縮させる効果があり、それによって唾液や胃液の 分泌を促し消化吸収をよくします。
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○ 殺菌効果 |
多くの病原菌を10〜30分以内に殺す強い殺菌作用があるといわれ、アニサキスの幼虫 などにも効果があるそうです。
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○ たんぱく質への影響 |
たんぱく質を、酸性の環境で良く働くプロテアーゼという酵素で部分的に分解するため、 肉質がやわらかくなります。
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○ 変色の防止 |
タンニン系のポリフェノールの酸化を押さえるため、食品の変色を防止する効果があります。
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○ 減塩効果 |
酢は他の調味料と良く調和をするので、酢を使うことが減塩にもつながるのです。
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その他、酢の効用について科学的に立証されていないことが多くあります。 |
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【アチェート・バルサミコと料理】 |
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世紀におけるイタリアでのアチェート・バルサミコの料理への利用は非常に少なく、フランスでのヌーベル・クイジーンの台頭とともに始まり、高貴なイメージ
から料理の
ネーミングとしても聞こえが良く、こぞって使われるようになりました。イタリアではその供給を行うための低康で低品質のアチェート・バルサミコと称する酢
が出回り、本物の伝統的なアチェート・バルサミコの品位を傷つけたのです。その後アチェート・バルサミコに関する法律が出来ましたが工場での大量生産は続
いています。日本でも西洋料理のレストランでやたらにバルサミコ酢を使ったという料理が多く、実際に食べてみると全く真のアチェート・バルサミコの風味を
感じられない場合が多く当惑するのが事実です。伝統的なモデナまたはレッジョ・エミーリアのアチェート・バルサミコまたはその製造工程に
準じるものを使った料理の例を下記にあげてみました。
《相性の良い食材》 苦味のある食材・甘味のある料理・揚げ物・肉類・魚介類・野菜・果物・菓子類・
アイスクリーム・チーズ・醗酵食品など・・・
パルミジャーノ・レッジャーノのアチェート・バルサミコ風味
グラナ・パダーノのアチェート・バルサミコ風味
バーニャ・カオダのアチェート・バルサミコ風味
アチェート・バルサミコ入りアンチョビ・バター
スモークド・サーモンのアチェート・バルサミコ風味
リングイーネのイタリアンパセリとアチェート・バルサミコ・ソース
ナスのアチェート・バルサミコ風味
イカスミとアチェート・バルサミコ風味のリゾット
鶏肉とアチェート・バルサミコ風味のリゾット
鶏肉とハム・アチェート・バルサミコ風味のお米のサラダ
アチェート・バルサミコ風味のラグーソースのスパゲッティ
アチェート・バルサミコ風味のチリメンキャベツのスープ
アチェート・バルサミコ風味のラディッキオ入りリゾット
アチェート・バルサミコ風味のピーマン入りお米のサラダ
アチェート・バルサミコ風味のカポナータ
アチェート・バルサミコ風味のボッリート用ソース
小タマネギのアチェート・バルサミコ風味
アチェート・バルサミコのマヨネーズ
インゲン豆のコーティケ風味、アチェート・バルサミコ入り
アチェート・バルサミコ風味のオムレツ
ポロネギのアチェート・バルサミコ風味 など・・・ |
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