シングアウトの研究

  第1回 序章 
はじめに
このレポートは、私が自分自身の感じた疑問を解決すべく、あしかけ10年にわたって、シングアウトについて調べてきた成果をまとめたものです。
「シングアウト」は、言うまでもなく樋口氏が一時期在籍したボーカル・インストゥルメンタル・グループですが、このページの大半は、直接、樋口氏とは関わりのない内容です。また、この研究は、私の極めて個人的な興味に基づいているので、私以外の人には、ほとんど意味を持たない内容であることを最初にお断りしておきます。

研究を始めたわけ
いまやすっかり合唱コンクールの定番曲となった「涙をこえて」が、シングアウトのオリジナルであることを知る人は少ない。シングアウトは、ごく少数のソフトロックファンがその名を記憶にとどめているにすぎない、日本のポピュラーミュージックの歴史のなかでは完全に忘れ去られた存在のグループだ。

そのシングアウトに、私が異常な関心を持ち始めたのは今から10年ほど前のことである。きっかけは、1996年に発売された『ザ・ベスト・オブ・シング・アウト』というCDのライナーノーツ。このCDのライナーノザ・ベスト・オブ・シング・アウトーツを執筆したのは、元土龍団の山岸一郎氏。実は彼は樋口氏のアルバム『ミュージック・フォー・アトム・エイジ』にも別名義で編曲家として参加してる。それはさておき、山岸氏の綿密な取材に基づいて書かれた詳細なライナーノーツの内容は、初めて知る衝撃の事実ばかりで、初めて読んだときは興奮で夜も眠れぬほどだった。

ライナーの中の疑問
なかでも私の興味をひいたのは、シングアウトの前身であるレッツゴーが、MRA(Moral and Spiritual Re- Armament=道徳再武装連盟 ) という団体をベースに活動していたグループであるということだった。MRAについてはライナーノーツでも触れられているが、反共産主義のスローガンを掲げ、道義的に世界を再造することによって人類全体の幸福を追求しようと主張するアメリカを本部に全世界に支部を持つ団体。シングアウト自体は、そうした思想とは無関係に、純粋に音楽活動を行っていたグループなのだが、もともと私は思想的なことに学問的興味があったので(私自身は、なんの思想もないのだが)、MRAについて、もっと知りたいと思うようになった。

そして、もうひとつ、ライナーノーツの中で私の興味を著しく喚起したのは、シングアウトがレギュラーで出演していたNHKの「ステージ101」という音楽番組の記述の中の“健康的なヤング101に混じってライナーの問題部分ヒゲ面で髪をビンビンに伸ばした汚いシングアウトにお茶の間からの抗議が殺到。番組を降板することになった”というくだりだった。シングアウトの記憶がほとんどないくせに、なぜか私には、「そんなことがあるわけはない」という妙な確信があった。
写真はライナーの問題の部分。

シングアウトが、お茶の間からの抗議が殺到するほど汚なかったというのは事実だったのだろうか?もし、事実でないとすれば、なぜ、山岸氏はこのような記述をしたのであろうか?そもそも当時番組を見ていたのに、なせ゜私は、これほどまでシングアウトの記憶がないのか? 
私は、どうしてもこれらの疑問を解決したくて、以来、シングアウトについて細々と研究を続けてきた。そして、ここにきて、ようやくひとつの結論にたどり着いたのである。

おわりに
このレポートは、誰かを批判したり誤りを指摘する目的で書かれたものではない。ただ単純に、私の超オタク的疑問を解決するために調べた成果を発表するものである。このレポートは、証言やリサーチに基づくものだが、すでに40年近い歳月が経過しており、証言そのものの信憑性を裏付ける資料は皆無に等しい。したがって正確性を保証するものではないので、あくまでも、ひとつの仮説として、読み物として読んでいただければありがたい。

つづく


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