Le Velvets
「You!Us!We!the Concert」

オーチャードホール 2012/09/29

第1部

ロビーに張り出されていたセットリスト。ポピュラー系のコンサートでは、事前に演奏曲目が発表されることはないので、これにはびっくり。よく見ると、どの曲がどのアルバムに収録されているのかわかるようになっています

Le Velvetsのステージは「Queen must go on」で幕を開けた。Queenのヒット曲をメドレーで繋いだこの曲は、原曲の良さもさることながら、アレンジもよく、また、メンバーも非常にうまく歌いこなしており、クラシックファンからロックファンまで幅広い層にLe Velvetsの魅力をアピールするには最高のナンバーだ。満員の会場は、この1曲で、オープニングからクライマックスの盛り上がりとなる。

ステージの後ろに「大入り」の垂れ幕が現れ、メンバーの佐賀さんから挨拶があったあと、メジャーデビューアルバムの中から2曲続けて披露される。モータウン風のアレンジで新たな息吹を吹き込まれた「ハレルヤ」は、実に楽しくて軽快。アルバムを聴いたときは、「歌おうや、笑おうや、ハレルヤ」という歌詞は、いくらなんでも神への冒涜だと思ったりしたものだが(笑)、コンサートでは、そんなことを思ったことも忘れて楽しんだ。 「’O Sole Mio」も、のびやかな歌声と迫力に圧倒された

MCを挟んでユーミンをエンヤ風にアレンジしたという「ダンディライオン」、そしてフランク・シナトラのスタンダード「It’s Only a paper moon」が歌われた。「ダンディライオン」は女性歌手の歌だという違和感を全く感じさせない歌唱で、思った以上の出来。ボイスパーカッションが加わった「 It’s Only a paper moon」はリズムや音程が少々微妙なカ所が散見されたが、ショー的な趣もあり、楽しんで聴けた。

アイルランド民謡が原曲の「The Letter To My Mother」は、どこか懐かしいメロディーと、母を想う歌詞がせつなく胸に迫ってくる。ソロをとっていた佐藤さんも、何か胸に去来するものがあったのだろう。感極まって、歌の途中で涙するハプニングが。個人的には、こういうのシーンは、あまり誉められたものではないと思っているのだが、こういうのが好きな人もいるので、これはこれでよしとしよう。こういうハプニングがあるからこそ、生のコンサートは楽しいのだから。

佐藤さんが歌い終えた後は、ガラっと雰囲気を変えての昭和のヒットコーナー。「涙の太陽」は、高音の余裕のない発声が気になったが、熱唱する姿には好感が持てた。だが、次の「ルビーの指輪」はいただけない。寺尾聰は、当時、関係者に「こんなお経みたいな曲が売れるわけがない」と言われたそうだが、その単調なメロディーを昭和の大ヒット曲に押し上げたのは、巧みなシンコペーション。わざとシンコペーションを取り去ってクラシック風のアレンジにしたのか、シンコペーションが歌えないのか知らないが、歌詞カードを読みあげているかのような、なんの思いも伝わってこない日野さんの歌には閉口した。

「勝手にしやがれ」は佐藤さんのソロ。Le Velvetsファンの友人に聞いたところ、一番人気はダルビッシュ似の日野さん、歌が一番うまいのは佐藤さんだという。確かにこの曲も、彼なりに歌いこなしており、最後のロングトーンは、さすがと思わせるものがあった。ノリノリで歌う佐藤さんの歌に会場から手拍子が起き、会場はまた一段と盛り上がる。欲をいえば、もう少し、歌に色気が出ると、さらによくなると思うのだが。

第1部最後の「津軽のふるさと」、これは素晴らしかった。最後の最後でわずかに乱れたのが残念だったが、彼らのハーモニーの美しさを堪能させてくれた。「ルビーの指輪」でドン引きさせてくれた日野さんだが、この曲では素晴らしい高音を聴かせてくれた。個人的にはバリトンに魅了され、思わず身を乗り出して聴いた。

約1時間の第一部のステージはここで終わった。彼らのステージを見て、いろいろと感じるところはあるが、それは最後にまとめて書くことにする。まずは上々の出来で、新たな船出としては、良いスタートを切ったと言えるのではないだろうか。
20分間の休憩を挟んで、コンサートは第二部へ。

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