手振れ防止 ご感想・ご意見  トップへ         

手振れ防止機能は、ミラーショックに対して過剰反応を発生するので、手振れを発生する可能性のない三脚使用時には手振れ防止スイッチをオフにすることが必要である。としました。
これに関連して、1年以上前ですが、以下の記事が発表されています。

一眼レフが抱えるブレ問題、その深刻さが明らかに
 http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20090410/1686265/?ST=print
2000万画素で撮っても実は500万画素相当,一眼のミラー・ショックを簡便に測定。
 http://techon.nikkeibp.co.jp/article/HONSI/20090427/169545/
1/60秒シャッターで実質解像度は1/4以下
カメラメーカーが困惑している。問題の深刻さを、白日の下に測定ツールが登場したからだ、
中略
あるカメラの開発者は言う。「これほど大きな問題とは全く認識していなかった。まだ追試や検証をしていないが、本当だとすれば正直、参った」。

この記事に対する私見を「一眼レフの部屋」に記載しました。


1.前書き

一眼レフの部屋で触れたように三脚使用時には、手振れ(手ブレ)防止スイッチはオフにすることが推奨されています。

各社のホームページを検索したところ
ニコン、ソニー、シグマ等は「三脚使用時には手振れ補正スイッチはオフにしてください。」と書いていますが、その理由は書いてありません。
パナソニックは「三脚使用時には手振れ補正スイッチはオフにすることを推奨します」と書き
キャノンは「三脚の種類や条件により手振れ補正機能をオフにしたほうが良い場合があります。」と書いています。
ただし、それがどのような場合か書いていません。

そもそも三脚の使用目的は手振れの防止です。三脚にカメラをセットすれば、完全手振れが防止できるのならば、手振れ防止レンズは必要なくなりますが、逆にまた手振れ防止スイッチがオンになっていても問題ないはずです。では、なぜ手振れ防止スイッチをオフにしなければならないのでしょうか?

結論は
、一眼レフカメラのミラーショックへの過剰反応を防止するために、手振れ防止スイッチをオフにすることが推奨されています。

カメラにおける、手振れ防止の最初の実用例は一眼レフではなく、1994年にニコンが発売した世界初の35mmコンパクトカメラ(700VRQD)でした。ただしフィルムカメラの場合にはあまり普及はしなかったようです。

それがデジタルカメラになって普及するようになったのは、
(1)光学ファインダーを使わず液晶モニターをファインダー代わりに使うため、カメラを体から放して使うようになりホールディングが悪く手振れを発生しやすくなったこと
(2)パソコンに取り込んでモニターで大きく拡大して見るようになって手振れが目立つようになったため、
(3)半導体技術・電子技術・メカトロニクスの進歩で手振れシステムの小型化・低価格化が進展したためです。」
などだと思います。


2.手振れ防止方式の種類と特徴 
 露出の不適正、ピンボケ、手振れが失敗写真の三大要因と言われています。
手振れは露光中に撮像面上の画像が動いて重なって写る現象で、シャッタースピードが遅い時、焦点距離の長いレンズを使用している時に起きやすくなります。一般的な目安としてシャッター速度がレンズの焦点距離(mm)分の1より遅いとき手振れが発生しやすいとされています。

その手振れを防止するには、「手振れ軽減」と「手振れ補正」とがあります。
「手振れ軽減」とは、フィルムやセンサーのISO感度を上げて高速シャッターをことで、手振れと同時に被写体振れの低減にも効果があります。
「手振れ補正」は発生した手振れを補正して、影響を打ち消すことです。

方式として以下の3種類があります。

@ 電子式
A 光学式(レンズ内蔵式)
B センサーシフト式(ボディ内蔵式)があります。

まず@電子式は超高速シャッターで複数枚の写真を撮り、ずれた部分を重ね合わせて合成する方式です。一部の計測器には使われているようですが、デジタルカメラには採用されていないので省きます。この方式の特長は被写体振れにも有効な方法です。
PhotoshopCS4では、(1)少しずつ露出を変えた画像でを合成し超ダイナミックレンジ拡大,(2)少しずつピンと位置をずらした写真を合成し超深度写真ができますが、次のCS5で、「すこしずつ振れた画像を合成して被写体振れを補正する」を期待したいと思います。

正常時には最上図のように撮像面の真ん中に結像しています。
 手振れを発生して、ズレタ位置に結像します。

撮像素子をはみ出すほどの手振れは補正できませんが誇張して図は極端にずらしています。
 レンズシフト式は手振れをジャイロセンサーで検出して、3段目の図のようにアクチュエータを駆動して、 手振れに合わせて光学系の一部を移動させて画像が撮像面で一定の位置に結ばれるように光路を曲げて手振れを防止します。
 センサーシフト式は、レンズは動かさず、シャッターが開く瞬間の画像の振れを予測して画像の動きを打ち消すように、イメージセンサーを移動させます。 
 手振れ補正の原理図

レンズシフト方式の特徴
◎長所
一眼レフでは、シャッターを半押しした時から動作を開始するのでファインダー画像が安定しており三脚が使用できず手持ちで望遠系のレンズ・マクロレンズを使っているときに、AFやMF、構図の決定が容易になります。また補正系がレンズに内蔵されているので個々のレンズに合わせて最適化されていることです。またレンズの後ろにテレコンなどを付けることも可能です。
×短所
個々のレンズにセンサーとアクチュエータが内蔵されるので大きくなること、交換レンズごとに必要で高価になること、また光軸がずれるのでごくわずかとはいえ画質が低下する可能性があることです。
採用しているのは、ニコン、キャノン、パナソニック、シグマ、タムロンなど

 イメージセンサシフト式の特徴
 ◎長所: 光学系は移動しないので最良の状態を維持できます。振れ検出部とアクチュエータ部がボディに内蔵されており、装着さえできれば原理的にはレンズを交換しても手振れ補正可能です。ただし、完全な補正のためにはレンズの長さ、焦点距離などの情報も必要で、その情報のないレンズでは性能は落ちます。。

×短所:
 再生画像では補正されますが、ファインダー像は、補正されないので、三脚が使用できないため、手持ちで望遠系レンズやマクロレンズを使うという、一番手振れ補正の必要なときに、ファインダー画像がふらふら揺れることです。AFの効かない薄暗いときにマニュアルに切り替えてもファインダー像がゆれているので焦点合わせが困難です。ライブビュー時に手振れ補正をオンにすることで補正された画像を見ることは可能ですがホールディングが悪く手振れの要因になり、自ら手振れを発生させて補正するようなことになります。
イメージセンサーが移動するのはシャッターが全押しされミラーが跳ね上がった後からでさらにその後にシャッター幕が動き始めるので実際に露光されるまでに若干ですが時間がかかります。テレコン使用時は像がたとえば2倍になりますが、センサーは通常分しかシフトしないので手振れ補正は不可能です。
採用しているメーカーは ソニー、ペンタックス、オリンパス など

※ フォーサーズはマウントが共通なので、オリンパスのボディとパナソニックのレンズを組み合わせれば両方の方式が選択できます。

3.三脚と手振れ補正
 三脚を使うときは手振れ補正スイッチをオフにする理由は、結論を先に言うと、「三脚にセットしても微小な振動があり、そのため誤動作(過補償)の可能性がある」ということです。
 一般論として、華奢な三脚は振れを防ぐことはできず、「三脚の重量はカメラの重量より重いもの」を目安とするようにされています。しかし、カメラより重い三脚を使用すれば振れが0(ゼロ)になることは考え難く、通常の使用状態なら手振れが許容範囲に抑えられていると考えるのが自然です。たとえば三脚にセットした場所が木道の上だとか、あるいは地面を伝わる自動車の振動などは防止できません。またたとえ設置場所は安定していても一眼レフの場合にはシャッターが切れる直前にミラーが跳ね上がります。このとき手振れよりもかなり小さいが速い振動が発生します。
これをセンサーが検出してシャッターが切れる瞬間の振れを予測して補正するが、このとき補正回路は人間の手振れをシミュレーションしますが、たとえば、手振れは振れ幅は大きいが速度は遅い動きで、ミラーショックは、振れ幅は小さいが速度の速い振動です。振れ検出センサーがミラーショックを検出しこれを手振れと判断すると、ミラーアップの振動ならシャッターが開く瞬間には下図のように振れが収まっているにもかかわらず、シャッターが開く瞬間には手振れの大きい揺れと計算してレンズを大きく動きます。これが過補正による誤動作です。スイッチがオフならミラーショックによる振れは通常は許容範囲です。このため三脚使用時に手振れ補正スイッチをオフにすることが推奨されています。※ミラーショックをさらに低減させるためにミラーアップ撮影やミラーアップ遅延が可能なカメラもあります。

  図のようにシャッターを押した瞬間のカメラの振れを検出して、フォーカルプレーンシャッターが開いてから閉じるまでの時間のカメラ振れを予測して補正する。
手振れに対してはそれなりに補正を行っている。
ミラーショックのような瞬間的な振動は実際にシャッターが開く時には収斂しており問題が無い場合でも、シャッターを押した瞬間のカメラの振れを検出して、予測して補正をするので問題の無い振れに対して過補正・誤動作の可能性がある。 したがって三脚使用時には手振れ防止スイッチはオフにした方が良い。
最近は周波数成分を考慮して誤動作の可能性の少ない望遠レンズも市販されている。
手振れ検出⇒補正の概念図  

さらに、設置場所の振動も一般には手振れの周波数と異なることが多いのですが、これを人間の手振れとしてシミュレートするので補正が不十分であったり過補償になったりします。このため三脚使用時には手振れ補正スイッチをオフにすることが推奨されています。

 流し撮りではカメラを大きく振りながら撮影します。このとき大きなゆっくりした定速度適な動きの方向例えば左右の動きは補正せず、上下方向のみ補正することも可能になっています。ニコンのレンズではデフォルトで流し撮りモードになりますが、他社は逆に流し撮り時にスイッチをオンにするのもあるようです。

 一方たとえば動く列車の中から撮影するときは大きなゆっくりした定速度適な動きはカメラマンの意図ではないので、振れと判断して補正することが必要です。ニコンの手振れ防止レンズはアクティブスイッチをオンにするとこの動きも補正機能が働くようになります。

4.付録

5.1 手振れを防止する基本。

手振れ防止に頼らず手振れ自体をなるべく減らすのが基本です。

35mmフルサイズの時手持ちで振れの発生が防げる限界シャッター速度は「焦点距離分(mm)の1秒とされています。カタログでは手振れ補正の効果は3段分などとされているのはこれを基準にしています。たとえば50mmでは1/50秒から3段分すなわち1/10秒が目安ですが元の1/50秒で手振れの無いようにシャッターが切れることが前提で、これが悪いと1/3秒は達成できません。

改めて再度カメラの構え方を思い出してください。

 1.脇を固めてカメラをしっかりホールド
 2.指先だけを静かに動かすようにしてシャッターを半押し
 3.ピントがあったら指先だけを動かすようにしてシャッター全押し
 4.取り終えたあともしばらく動かないように心がける。

 上の1〜3はたいていの入門書に書いてありますが、4を書いた本は少ないようです。あえて付け加えたのは4がないと露出が終わらないうちにフライング的に無意識で体の一部が動き手振れの要因になることがあるからです。

5.2 撮像素子のサイズ
 35mmフルサイズの時手持ちで振れの発生が防げる限界シャッター速度は「焦点距離分(mm)の1秒とされています。APSCサイズの時の目安は?、フォーサーズの時はそれぞれフルサイズ換算値となります。 フルサイズで焦点距離が50mmのとき1/50秒が手振れしない目安ですが、APSサイズは35mmで同等の画角になります。1/35秒で撮像素子上では同じ程度の振れになりますが、撮像素子が小さいので、プリント時に1.5倍に拡大されますから同程度の振れ幅にするためには1.5倍早い1/50秒のシャッター速度が必要です。フォーサーズも同様に焦点距離24mmのレンズで1/50秒になります。

5.3 一脚

 「三脚使用中は手振れ補正イッチはオフにする方が良い」が結論ですが、では一脚はどうすればよいでしょうか?
 一脚は持っていないので、三脚の一本だけを伸ばして確認しましたが、手持ちよりは大分良いが若干の揺れは発生しています。手振れ補正をオンにすると揺れが収まります。それに、三脚と異なって自立ができないので、カメラのボディを両手で持って、シャッターはレリースではなく指でボタンを押すことが普通ではないでしょうか?それなら手振れの周波数は手持ちとあまり変わらないと推定されるので手振れ補正スイッチはオンにする方が良いと考えられます。