ガキの頃から俺はこの顔のせいで恐れられてきた。
それが原因で人生の半分以上は損をしてきたと思う。
もう少し目が垂れていれば、もう少し鼻が低ければ、もう少し顔全体が丸顔だったら。
きっと違う人生が待っていただろう。
だからと言って整形する勇気は・・・・ない。
俺は人には〜特に同業者には〜絶対言えないが・・・痛いことが苦手で、墨を入れることさえもできなかった。
今の時代、刺青を入れている人間も少なくなってきている。
そのお陰で俺も非難されることなくいられる。
そんな俺が、何故か男に尻を貸している。
「俺はどっちでもいいですよ」
とか言いながら、
「でも、こういうのは動物世界でも弱いものが組み敷かれるっていうのが定番だと思うんです」
「だから何なんだ」
と言えば、
「簡単なことですよ。俺と洋(ひろむ)のどっちが強いかで決めればいいだけですよ」
充(みつる)の眼鏡越しに見える目が笑っていた。
何か考えがあるはずだと思っていた。
ただ、俺自身が喧嘩で負けなし。
空手や柔道を少しだけだがかじっているから大丈夫だと自分の力を過信していた。
”こいつなりに男にやられる言い訳が欲しいんだ”
なんて都合良く考えていた結果が、後ろから男にあれを突っ込まれている状況だ。
男とすることには抵抗はない。
それだって突っ込む立場ならの話だ。
この関係は上司も知っている。
いや、むしろ歓迎している。
『嫌われることがないようにお願いしますね』
上司は俺がこうして生きていられること。
そして今の立場でいられるのは俺が赤城充(あかぎ みつる)という人間に気に入られたからだと言う。
だからこそ、俺が充に嫌われないようにしろと忠告してくれる。
もし、俺が充から飽きられたなら…
その時はその時に考えよう。
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