(2014年5月30日) 人間の眼の構造をみると、水晶体であるレンズを通して網膜に写した2次元像を認識している。フィルムを使うカメラと同じで、2次元の画面を2次元画面として認識しているように思われる。CMOSセンサを使った最新のデジカメのように2次元像を走査しているものではないだろう。 二つの目で見ることにより、視差の違いのある二つの2次元像から3次元空間を頭の中で構成し認識している。片目をつぶると一瞬一瞬では2次元像を認識しているだけだが頭の中で3次元空間を構成して認識するので活動できないわけではない。片目と両目では3次元空間の認識のしやすさに相違があるだけである。 さらに、三次元空間とその時間変化を認識しているのであるから、人間は空間3次元に時間次元を加えた4次元の時空を認識しているのである。片目で見ても頭の中で4次元時空を再現していることには変わりない。 3D映画は4次元時空を再現しているとも言われる。しかし、立体メガネを掛けない2D映画も頭の中で4次元時空を再現していることにかわりはない。3D映画と2D映画との違いは、3D映画の方が3次元の空間次元を認識しやすいということに尽きる。 結論として、人間は4次元時空を認識できる。ただし、それは頭の中でのみ可能である。 物が落ちるという現象は、地球上で誰もが観察し、余りにもありふれているので意識もしない。物が落ちるという普遍的な自然現象はGravityと名付けられている。Gravityが何故存在するのかは、21世紀に入った今でも全く判っていない。それは科学者が追い求める謎でありつづけている。 それでも、Gravityがどのようなものかは判ってきた。判るということは納得できる説明がつくとともに、ある程度必要な予言もできるということである。
Gravityが一つの力であると認識されたのは、ニュートンが万有引力を発見して以降のことである。地球が自転していることも疑問の余地が無くなって、Gravityは万有引力と地球の自転による遠心力との和であると考えられるようになった。万有引力は二つの質量の大きさに比例し、それら質量の中心間距離の二乗に逆比例する力である。(次式)
ここで、 F:万有引力 日本ではGravityを重力と訳し、重力とは重さと言う力であり、まさに適切な用語であった。 ところが、アインシュタインは1907年に「自由落下中の物体には重力が消えている」ことに気が付いた。このことに力を得て、1916年に一般相対性理論を発表した。このことは重力が力であるという仮説を否定してしまったのである。(ニュートンの万有引力の法則が仮説であると言う人はいないが、力が作用していることの実証はされていない。キャベンディッシュの有名な実験があるが、運動を止めるために必要な反力を見ているに過ぎない。)
アインシュタインによると重力は大きな地球の質量によりもたらされる4次元時空のひずみであり、このひずみが全ての物体に加速度運動をもたらすというものである。(この加速度の大きさは、ニュートンの万有引力の式に含まれる逆二乗則の重力加速度である。従って、今までのニュートン力学での応用計算に変更を要求するものではない。) 4次元時空のひずみはどのようなものか認識できないものであろうか。良く見かける説明図は(図-1)のようなものである。空間に仮想的な直交格子が曲がっている図である。この図は平面(2次元)に描かれた地球の3次元図であることには変わらないので頭の中でイメージするしか4次元空間を認識することはできない。4次元時空図を平面に描くと、逆に誤解を与えるおそれもある。 (図-1) 空間のひずみ 今、つるつるの平面に鉄球が置かれた状態を想定する。この鉄球は何時までも静止しているであろう。もしこの平面が傾斜すると、この鉄球は静かに滑り出す。鉄球と平面との摩擦が少なければ鉄球は回転なしにすべり落ちるであろう。 (図-2) 空間のひずみ-斜面モデル このモデルでもGravityが作用しているから斜面で動きだすのであるが、時空のひずみはこの斜面のようなものである。Gravityは上から押す力でもなく、下から引っ張る力でもなく、運動を生じさせるだけなのである。 物が運動するとは、物が空間の位置を変えるということであり、空間の3次元に加えて時間という要素(次元)が入り込んでいる。考えて見れば、物体の何もない3次元空間そのものを認識することはできない。座標を設定するか、周囲の物体があって始めて3次元空間を認識できる。そして、物体の運動を認識することは4次元の時空を認識している。物が落ちるという現象を認識できるということは、人間は生まれながら、4次元時空のひずみを認識していることになる。自由落下の運動を知覚すれば、それは時空のひずみを認識していることになる。それは動画を見て4次元の時空を認識するのと同じである。 戻る
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