スタップ大佐のロケット・スレッド  

(2014年1月21日)


 第2次世界大戦終了後、米国空軍のジョン・スタップ大佐は戦闘機パイロットがどこまで過酷な飛行に耐えられるかの研究に自ら志願して大きな加速度を何度も経験した人である。

 最も過酷な試験は1954年に行われた。レールの上に置かれた台車には数基の個体ロケットが装備されて、点火後約5秒間で最高速度は時速1000Kmにまで達した。その後、水面下に翼を突出しで急減速をさせたものである。

 加速時は平均5.6Gで5秒間加わったことになるが、減速時は1秒足らずに停止している。このときの最大加速度(減速度)は43Gであったそうだ。クラップ大佐は1時的に失明したものの回復している。人間が耐えられる限界の加速度はこのあたりであろう。

  

 

 ニューメキシコ州のホロマン空軍基地には今でもスタップ大佐の乗ったロケット・スレッドが残されている。

 さて、このスレッドに普通の人が乗っても平気でいられる方法がある。それは全身を水中に浸していれば良いのである。丈夫な水槽を乗せてその中に浸かっていれば良い。

 いきなりこのように言われても本当に大丈夫か心配だろうから、最初は金魚、次に鯉で試してみれば良い。そしてサザエである。さざえのように固い殻を持っていれば水槽に浸さなくても大丈夫であろう。水槽をどんどん小さくしていった究極の姿がサザエの殻であるからだ。

 サザエの殻は耐高G鎧のアイデアを与えてくれる。人間の場合、ウエットスーツのように体になじむスーツで水を漏れなくし、大きな加速度を受けても形状を保てるほどの強化リングを各部に嵌めれば良いだろう。呼吸に必要なエアタンクとレギュレータも必要であろう。

 水槽に浸かった人間もロケット・スレッドで大きな加速度を受けることは全く同じである。大きな加速度を水槽タンクごと受けると、人間の体は水圧の変化として負荷を受ける。人間の体は殆ど比重1の水から構成されているので、圧力に対しては形状がほとんど変化しない。このため人間は素潜りでも10mは楽に潜れる。水深10mは2気圧になるが、スタップ大佐が受けた43Gでも、水圧で換算すると430mの深度に潜ったことになる。
(了)


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