(2016年7月30日)
国土地理院のHPには重力の測定に絶対測定と相対測定の2種類の方法があることが説明されている。
http://www.gsi.go.jp/buturisokuchi/gravity_menu02.html
絶対重力測定は真空パイプの中で物体を落とし、レーザー光線と原子時計を使って、その物体の落下中の速度変化を直接計測し、加速度で表示するものである。国土地理院が保有する絶対重力計(FG-5)の公称精度は2μGalであるとのことである。1gは980Galであるから9桁近い精度があることになる。実際、日本各地の重力基準点の重力実測値は979690.84mGalのように8桁で示されている。
http://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/gravity/grv_jpn/map.html
相対重力測定はスプリング型重力計で絶対重力測定をした地点との差を知ることによる方法である。スプリング型重力計は持ち運びが容易であるが精度がないため相対重力測定とするものである。
相対重力計でスプリング型より精度の高いものに持ち運びは出来ないが超伝導重力計がある。測定原理の詳細は次のURLで判る。スプリング型より2桁程度高い精度で測定できるようであるが絶対重力計には及ばない。しかし、連続測定ができることでは相対重力計が勝っている。
http://www-geod.kugi.kyoto-u.ac.jp/~fukuda/documents/scg/scg.html
スプリング型も超伝導型も、どちらも相対重力計は力を受けた変位を測定しているのであり、まず変位を及ぼす力を検知していることに変わらない。そして力から加速度に換算して表示していることになる。
同じく国土地理院のHPで「重力とは」を見ると、「引力」と「遠心力」を合わせた力が「重力」であるとの説明がなされている。
http://www.gsi.go.jp/buturisokuchi/gravity_menu01.html
ところが、絶対重力計は加速度を測定しており、相対重力計は力を測定しているのである。重力が力であるならば、相対重力計と絶対重力計は名前を交換した方が良さそうに見える。精度の観点から絶対と相対の名を付けているということであろうが、ガリレオの実験まで遡らなくとも、レーザー光線と原子時計が利用できない時代の絶対速度計は精度は極めて低かった。
もう一つ不思議な習慣がある。重力は力であるとしながら加速度で表示していることは首尾一貫していないではないか。おそらく、この指摘に対しては次の回答がなされるのであろう。
「重力は質量に比例する力であるから」比例乗数であるその地点の重力加速度を表示すれば力は、物体の質量に応じて得られる。
この回答でもおかしい。各地点の重力値は質量1sの物体に及ぼす力で表示するとでも決めておけば、単位と桁だけの変更になるだけである。980Galなら9.80Nと表示するだけである。
重力を重力加速度で表すことは長い間の慣習であるから敢えて変える必要はないというのが大方の意見であろう。しかし、最初に加速度で表示した人は、「重力は力でなく加速度である」ことを知っていたからではないだろうか。重力を加速度で表示することは本来正しいことなのである。
(了)
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