重力利用列車  

(2014年12月22日)


  先日、品川と名古屋を結ぶリニア新幹線の着工式があった。リニア新幹線の計画では殆どトンネルを走ることにより土地収用の費用を抑え、かつ大部分を直線とする路線を確保している。リニア新幹線は磁気で浮上することにより接地抵抗を無くし、電磁力による推進で時速500Kmで走行する。浮上のためと推進のための磁力を発生させるため電力を必要とする。この電力が従来の新幹線より多く必要だそうである。

  磁気浮上と長いトンネルを掘る技術を注いで必要なエネルギーが従来の新幹線より大きくなるのは残念なことである。もし、空気抵抗も接触抵抗も全くないような真空のチューブ・トンネル内を列車を走らせることができるなら、
重力を利用することによりエネルギー使用量は原理的に少なくできる。

  重力を利用するとトンネルに傾斜をつけるだけでどの地点からどの地点にでもエネルギー使用がゼロで2地点間を移動できる。トンネルをあまり深く掘ることは出来ないならば、到達時間はかかるが、トンネルを途中で水平にして定速走行にする。目的地に近づけば登り坂にして減速する。途中の駅に停まる必要があるならば、トンネルをアップダウンさせれば良いのである。実際には摩擦がゼロにすることは出来ないから、この摩擦によるエネルギー・ロス分だけを電力エネルギーで足せば良い。

  重力利用列車を仮にグラビトレインと名付けよう。グラビトレイン計画の大筋は次のようなものになる。
 グラビトレインはリニア新幹線と同じように最初は車輪を使ってゆっくり出発する。するとたちまち傾斜6度の下り坂のトンネルに入り列車は斜面を滑り出す。スピードが上がり磁気浮上の段階では空気抵抗による微弱な振動だけで増速する。3分ほど経つと列車は時速500Kmになる。ここまでに列車は駅から20Km離れ、地下2Kmの深さに達している。ここから坂道は傾斜が0.5度と緩やかになり、時速500Kmが保たれる。名古屋まで20Kmまで来ると深度4Kmまでになっている。するとトンネルは傾斜10度の登り坂になる。時速500Kmの運動エネルギーだけでは登り切れないのでリニアモータによる加速が必要になる。エネルギーが必要となるのは最後の上り坂の分だけなので、全行程では従来の新幹線よりも電力使用は少なくて済む。

 トンネルの深さを深くし過ぎないようにするには、出発直後の傾斜を大きくして時速500Kmの速度に早いうちに達するようにする。

(参考)
 テスラCEOのイーロン・マスクが発表したハイパーループは真空に近いチューブを米国全土に張り巡らし、その中を列車がマッハ1の速度で走るものであるが、推進力をどのように得るのか発表内容では判らない。バッテリを積んでコンプレッサを動かすようであるが、100パスカルの真空パイプとの関係が不明である。
   http://www.huffingtonpost.jp/2014/12/20/hyperloop-10-years_n_6360862.html
(了)


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