重力消去は実現している  

(2011年2月20日改)


 重力遮断装置を作ることは夢の技術であった 。まず実現の見込みはなくSFの世界に留まる技術であると信じていた人は多いだろう。ところが、狭い範囲でなら重力を消去することは既に実現しているのだ。

 重力が加速度であることに気がついたのはアインシュタインが最初である。そして、この重力加速度に抵抗せずに自由落下している物体には何ら力が働いていないばかりか、周囲を見ることがなければ自分が加速度運動をしていることすら判らないことも指摘した。つまり、自由落下している物体は重力が消えた状態になっている、局部的に重力を消去することは可能であることを示しているのだ。(注1)

 高いところから飛び降りると瞬間的にふわっと浮いたような感覚を持つことは子供時代に経験した人は多いであろう。しかし、半世紀ぐらい前までは自由落下の状態を長く続けることは出来なかった。重力が消えていることに誰も気がつかなかったのも無理はない。

 現在、重力が消え去っているのは宇宙ステーション内での宇宙飛行士の活動を見れば判る。宇宙ステーションは地球の重力に逆らわず、常に自由落下の状態にある。いわゆる無重力状態になっているからだ。

 これまで無重力状態にあるのは重力と遠心力(慣性力)が釣り合っているからであるとの説明がなされてきた。しかし、これは殆ど間違いである。重力という力と遠心力が、分子レベルで釣り合っているという説明は、間違いではないにしても無意味な説明である。それぞれが見かけの力で、それらが釣り合い状態であると言っても同じである。

 重力加速度に逆らわずに運動している物体は、地球の周囲を回っていようと、銀河の果てまで飛んでいようと、その物体は常に無重力状態にある。重力という力と慣性力が分子レベルで釣り合っているとの説明は、実証できない抽象的な説明である。

 私たち人間は太陽の重力に対しては地球と共に太陽を周回している。つまり太陽に対して自由落下しているので、太陽の重力に対しては重力が消去された状態にある。もっとも、地表で地球の重力と太陽の重力とを比べると桁違いに地球の重力の方が大きいから、太陽の重力を実感できないのはこの理由である。

 私たちが地上に立って重力を感じているように思うのは、重力加速度に抵抗する地面に対して慣性力が働くからである。つまり、地面からの反力を感じて重力があることを知覚している。

(注1)
 厳密に言うと重力を消すことが出来るのは局所であり、理論物理学者は「局所無重力系はつくれても大局的な無重力系はつくれない」という。工学的見地から言えば、国際宇宙ステーション(ISS)程度の大きさでは、現在の技術では差異を検知できないことから、十分
に局所的である。


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