アインシュタインは生涯最高の発見を
どうして直ちに発表しなかったのか
(2015年4月22日) アインシュタインは1905年に6本の論文を発表しました。このうち3本は、光電効果に関するもの、ブラウン運動に関するもの、そして特殊相対性理論です。有名なエネルギーと質量の関係を結びつけた式、E=mc^2、は特殊相対性理論の補足として出された6本目の論文です。 アインシュタインと言えば相対性理論で有名なのですが、ノーベル賞は1922年に光電効果に関する論文に対して贈られています。次から次に目覚ましい論文を発表したので1905年は奇跡の年と言われています。
特殊相対性理論に関しては、ポアンカレのアイデアを盗んだと非難している人たちが今でも少しいます。アインシュタインの発表の1か月前にポアンカレが殆ど同じ内容をフランス語で発表していたのです。ポアンカレ自身は心の大きな人で一切気にしていませんし、アインシュタインは他人の論文を参考にすることがあっても引用を明記する習慣がなかったので、真相はわかりません。 アインシュタインは1916年に一般相対性理論を発表しています。一般相対性理論は難解ですから理解できる人が当初は極めて少なかったのですが、この理論で重力が光を曲げるを予測できます。 アインシュタインは一般相対性理論で宇宙を定常的なものとするため宇宙項を加えてしまいました。しかし、天文学者のハッブルが観測結果から宇宙は膨張していることを発表しました。アインシュタインはこの発表が疑いようもない事実であることを知るや、宇宙項を加えたことは生涯最大の過ちであると後悔したそうです。 アインシュタインは世界各地での講演先で次のように言っています。 特殊相対性理論が加速度運動を含んでいないことに不満を感じていましたが、1907年のある日にふと自由落下中の物体には重力が消えていることに気が付きました。これは私の生涯最高の発見です。 科学者なら誰しも発見者の栄誉を受けたいはずです。生涯最高の発見をしたと自覚しながらどうして直ちに発表しなかったのでしょうか。他人に先を越される心配は無かったのでしょうか。 おそらく簡単すぎて逆に真意を理解して貰えないだろうと予想したのでしょう。 誰でも高いところから飛び降りるとその瞬間ふわっとすることを感じます。自由落下中は無重力状態にあることは当時の人も理解していたことです。 今でもアインシュタインは重力と慣性力が釣り合っている状況を重力が消えていると表現しただけだと解釈されているのではないでしょうか。 重力と称する力と慣性力と称する力とが力の釣り合い状態にあるのと重力が消えている状態とでは違うのです。すべての科学は違いを認識することにあります。 物体に力と力が釣り合っている場合には必ずその物体に応力・ひずみが生じます。自由落下中の物体には応力・ひずみが生じていないことにアインシュタインは気が付いたのです。 自由落下をしている物体は重力と称する力と慣性力が分子レベルで釣り合っているから応力・ひずみが生じていないと考えれば良さそうです。 しかし、分子レベルで力が釣り合っていると考える物体と力が掛かっていない物体との違いを見つけることができません。同じと考えざるを得ないのです。違いがないのは同じとすべきだというのが等価原理です。 アインシュタインの一般相対性原理で基礎にされた等価原理はいろいろな表現がなされていますが、アインシュタインが自身の最高の発見としたことは自由落下中の物体が力のつり合い状態にあるのではないということだったのです。 自由落下中の物体では重力が消えている理由は重力による運動が(重力)加速度運動であるだけで力による運動ではないからということだったのです。何だこんなことかと思われるかもしれませんが重力を力とした根拠のニュートンの万有引力の式を否定することに繋がるのです。無防備に発表すれば社会から非難を受けたかもしれません。 (了)
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