(作成:2016年11月1日)
この表題を見て「何を言っているのだ、馬鹿なことを」と思われる方は多いだろう。天動説が常識であった中世の人が地動説を言い出したコペルニクスやガリレオに与えた非難に匹敵する「馬鹿さ」加減かもしれない。 私がふと気が付いたのはもう6年前になるが、調べてみたらアインシュタインが100年前に気が付いていた。しかし、アインシュタインはニュートンに敬意を表したのであろう、非常に穏やかな表現しかしていない。 相対性理論で有名なアインシュタインは1905年に特殊相対性理論を、1916年に一般相対性理論を発表している。一般相対性理論が予測したとおり遠くの星からくる光が太陽の重力で曲げられることが観測されて以降、アインシュタインは時の人になった。各国から講演依頼が殺到し、日本でも講演している。 どの講演先でアインシュタインは次のように言っている。 「1907年に自由落下の物体には重力が消えていることに気が付きました。これは私の生涯最高の思いつきです。」 「生涯最高の思いつき」の思いつきは、発見と書かれた本もあるし、アイデアと書かれた本もある。 講演を聞いた聴衆は自由落下中の物体が無重力状態(無重量)になることを言っているのだと理解したに違いない。講演を聴いた科学ジャーナリストも科学者もここで一つ突っ込むべきだった。 自由落下中の物体が無重量になることはニュートンも知っていたし、その後のニュートン力学を習った人ならだれもが知っていたことだ。ニュートン力学では重力で落下中の物体は重力と慣性力が釣り合っているから無重量になるという説明である。 私は6年前にはJAXAの有人宇宙技術部客員研究員として月に3回だけ筑波宇宙センターに出勤していた。ある日、テレビのモニター画面で宇宙飛行士がステーション内で活動している様子を見てふと閃いた。「彼らは何も力を受けていない!」 いわゆる無重力状態であるのだが、そうなるのは重力と遠心力が釣り合っているからという説明(図ー1)が間違いであることに気が付いたのである。
図―1 無重力状態の説明 (ニュートン誌より) アインシュタインはTVの画像など見るまでもなく頭の中の思考実験だけで気が付いたのである。自由落下中の物体が無重力状態になる理由が力のつり合いであるならば、それはニュートンの説明であり、アインシュタインが生涯最高の思いつきと言うわけがない。従って、「重力が消えている」という表現はどういうことかと突っ込む必要があった。 つまり、自由落下中の物体が無重力状態にあるのは重力と慣性力という力のつり合いではなかった。物体に力が働いていないということに気が付いたのである。 地球の重力は地球の万有引力と地球の自転による遠心力の足し合わせたものである。重力の大部分が万有引力であるから重力と万有引力は同義と考えてよい。アインシュタインの思いつきはニュートンの万有引力が無かったということを言っているのである。アインシュタインが、万有引力は無かったと言っていれば現在の力学の教科書や解説書は既に記述が少し変わっていたであろう。 ニュートンが発見した万有引力は万有加速度とでも表現すべきであった。つまり、大きな質量の二つの物体は相互に加速度運動を起こして合体しょうとするということであった。この運動を阻害すると慣性力が発生するということである。 地上で体重計に乗ったときに示される数値は重力による加速度運動を体重計が阻害しているために発生する慣性力でありこれが体重である。体重計は力を検知する力センサーである。 万有引力はなかったと聞けば、いくつかの反論がすぐにも出てくるだろう。思いつくままに挙げて参考に供したい。 (1)
自然界に存在する四つの力は電磁気力、重力、大きな力、小さな力である。 既に、多くの理論物理学者が四つの相互作用と言い換えている。 (2)
ニュートンの万有引力はケプラーの3法則を証明している。 逆に、ケプラーの3法則からニュートンの万有引力を導き出すこともできる。しかし、式の演算の途中で加速度の項を力/質量に置き換える必要がある。ニュートンの万有引力でなくても逆二乗則の加速度があることで星の運動は証明できる。つまり星の運動を説明するには力の式である必要はない。 (3)
重力(万有引力)が力でない証拠 ロケットに搭載する加速度計は実際にはすべて力センサーであるため重力加速度だけは検知できない。 (4)
万有引力は力の次元を持っている。 加速度に質量を乗じただけのみかけの力ということになる。この見かけの力は頭の中で想定するだけの量で実証できない。
(図ー2)重力は場 戻る
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