長さは基本単位か  

(2020年1月31日)


 日本大百科全書(ニッポニカ)の解説では基本単位(きほんたんい)とは次のように書かれている。

単位系を構成する基本として選ばれた単位。たとえば、長さの単位と時間の単位を基本単位とすれば「長さ÷時間」で速度の単位を、「長さ÷時間÷時間」で加速度の単位を組み立てることができる。さらに質量の単位を基本単位に加えれば、「質量×加速度」によって力の単位も導くことができる。このように基本単位として少数の互いに独立した量の単位を選んでおけば、物理学の法則や定義を利用して、ほかの量の単位を組み立てることができる。この初めに選んだ基本単位に対し、組み立てられた単位を組立単位という。基本単位には普通、長さ、質量、時間の単位が選ばれる。これらはほかの量の単位を組み立てるのに便利なことと、単位を現示する標準が高精度で、かつ安定していることによる。しかし、工学で用いられている重力単位系では、質量の単位ではなく、力の単位である重量キログラムまたは重量ポンドを用いている。
 1960年に決議された国際単位系(SI)では、長さのメートル(m)、質量のキログラム(kg)、時間の秒(s)のほか、電流のアンペア(A)、熱力学温度のケルビン(K)、物質量のモル(mol)、光度のカンデラ(cd)の七つを基本単位としている。[小泉袈裟勝]

 化学辞典第2版の解説ではもっと簡単に書かれている。

単位系をつくる基本となる単位.単位系には古くはcgsや現在の国際単位系(SI単位)のもととなったMKS(MKSA単位系)などがあり,それぞれの単位系に対し基本単位があるが,SI単位系の基本単位は,長さ m,質量 kg,時間 s,電流 A,熱力学温度 K,光度 cd,物質量 mol である.

 基本単位に対する用語が組立て単位(または誘導単位)と称され、これらは基本単位を組み合わせて定義される。組立単位と組立単位を組み合わせるものもある。

 大辞林第3版の解説では組立て単位(くみたてたんい)について次のように書かれている。

基本単位から、そのいくつかを組み合わせた積、または冪べきの積として導かれる単位。例えば、体積 m3 や密度の単位 kg・m-3 など。誘導単位。 → 基本単位

 MKS単位系という言葉もあるように、基本単位の中でも最も基本的な単位が質量、長さ、時間である。時間は古くは1日の長さを基準にされたが最新のSI単位系ではセシウムの振動数から決められている。

 長さは地球の北極から赤道までの距離から1mの単位が決められたが、長い間人工物であるメートル原器が基準とされた。現在のSI単位系では真空中の光が単位時間に進む距離、すなわち光の速さから決められている。

 質量は元々は水を使って決められていたが、人工物のキログラム原器が基準とされてきた。しかし、これも廃止され、現在では地球上に遍在するシリコンを使った純度の高いシリコン金属球が基準となっている。

 時間の単位はセシウムの振動数だけから定義されているので基本単位であることは疑いようがない。

 ところが長さは、光の速さという自然の定数を使うだけでなく時間と組み合わせて単位を決めている。基本単位と組立て単位の定義から判断すると、組立て単位になるのではないだろうか。そして、基本単位とすべきは早さではないか。

(了)


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