科学博物館でフーコーの振り子を観察

 
 

(2015年3月21日)


  

 上野の国立科学博物館にあるフーコーの振り子を見てきました。

  昔は正面の入り口を入った真ん中の天井の高いドームから吊り下げられていたように思うのですがその先の階段脇にありました。錘が動いているのは地下1階です(図-1)。

(図-1) 国立科学博物館のフーコーの振り子

 良く見ると振り子は中心を通っていません。往きは右側を、復りは左側を、中心から1cmぐらい外れているのです(図-2)。

(図-2) 中心を通っていなかった振り子

 最初に振らせたときに僅かに狙いが外れたのでしょう。中心を通らせるのは難しいのかもしれません。まあ少しぐらい中心を通らなくてもフーコーの振り子の実験には差し支えありません。

 フーコーの振り子の説明書きは(図-3)です。

(図-3) フーコーの振り子説明書き

 説明書きには、フランスのレオン・フーコーが1852年にパリのパンテオンで実験して見せたものは67mのピアノ線で28Kgの鉄球を振らせたとあります。

 これに対し、上野の博物館の振り子はケーブル長がほぼ20mで錘の質量は50Kgです。

 振り子の周期はケーブルが長くなると遅くなります。パンテオンの実験では周期が16秒だったでしょうが、これにに対し、上野の博物館の振り子は8秒強です。周期の長さも振り子の振動面の回転には無関係ですから長さは短くても構わないのです。

 振り子の振動面の回転は地球の自転によるものですから緯度により異なります。北極と南極では1日に丁度1回転、つまり360度回転しますが、赤道では回転しません。上野は北緯35度ですから、簡単な計算が必要ですが1回転には41時間かかります。これは1時間たっても9度弱の回転でしかありません。博物館に来て立ち見したぐらいではこの振動面が回転していることを実感することは出来ないでしょう。

 振動面が回転していることを何とか示すのが博物館で展示したいことです。葛飾区の博物館に設置されたフーコーの振り子では周囲に立てたピンを錘が順番に倒していくようになっています。

上野の博物館では周囲の電球が消えていくようになっています。しかし、電球のスイッチをどのように作動させているのか説明がありませんでしたから直観的に判った気になれません。

 ピンを倒させる方が直観的ですが、ピンを毎日セットする手間が掛かります。そして、時間が経ってもピンを倒すように、ときどき小さくなった振幅を大きくする必要があります。

 ただし、この手間は上野の博物館でも同じかもしれません。上野の博物館では1時間ごとに職員が振幅を大きくしているとどこかで読んだのです。説明員がいなかったのでこの点を確認することはできませんでした。

 振動面の回転を邪魔しないようにケーブルを吊り下げる天井の支点にはロータリ・ジョイントでも取り付けてあるかと思っていたのですが、これは私の考えすぎだったようです。4階まで登って天井を見たのですが何もないようでした(図-4)。

(図-4) 振り子の支点

 ケーブルが長ければケーブルの捩じり抵抗は小さくなりますから1回転ぐらいねじれても捩じり抵抗は殆どないでしょう。1日分ねじれたとしても、朝の開業と同時に捩じりを戻せば良いのです。

 ケーブルを長くすると周期が長くなって相対的に空気抵抗を減らせて振幅の現象を遅らせることができます。更に、ケーブルのねじり抵抗を無視できるほど小さく出来る利点があるのでした。

 錘の質量を大きくする理由は慣性を大きくすることにより、相対的に空気抵抗に負けずに長く振動を続けられることです。

 ネットで調べて見ますとNICTが施設公開時にフーコーの振り子を13時間連続で撮影し、これを200倍早く再生した映像がありました。この動画で見ても13時間放置でなく、何度か振幅を大きくしているようです。

https://www.youtube.com/watch?v=F5evO0jX6Ug

 振り子の振動面が(地球から見て)回転することを実感するには、この動画が最もよさそうです。

(了)


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