重力場を見る  

(2015年12月20日)


 アインシュタインは1916年に一般相対性理論を発表した。大きな質量の周囲3次元空間は時間の次元と合わせて歪んでいるというのである。この4次元時空のひずみを生じている空間は重力場であるともいう。重力場は直接目に見えない。しかし、全ての物体に対し、物体によらず同じ加速度運動を生じさせる(重力場は物体に力を及ぼすのではない)。果たして、重力場を目で見る工夫はないものであろうか。

 場の理論として重力場より先に考えられたのは電磁場である。重力場の概念も電磁場の概念に習ったものである。電磁場もそれ自身は目に見えない。しかし、磁石の周囲の空間が歪んでいることを確実に明示する現象はある。


図 - 1 永久磁石による磁力線

 図-1は白い紙の上に鉄粉をまき、紙の下に永久磁石を置いたときに現れる模様である。この縞模様は磁場の方向、すなわち磁力線を示している。紙を動かせば模様は少し変わるが鉄粉と紙の摩擦もあり殆どこの模様は保たれる。鉄粉同士が磁力線に沿ってくっつくとそのまま鉄粉は動かない。


図 - 2 電磁石による磁力線(科学博物館)

 図-2は永久磁石でなく電磁石を用いている。2枚のガラスの間に透明な液体を入れてその中に鉄粉を入れることにより紙と鉄粉の摩擦よりは摩擦を減らしている。通電して電磁石にすると鉄粉は図-1と同じような模様が現れることは変わらない。

 図−1、図−2の様子を見ると、電磁場は直接目に見えなくても磁石の周りの空間に何らかの変化が起きていると考えざるを得ない。つまり磁石の周囲には磁場が出来ていることが誰にも納得できる。

 さて、重力場を同じように目にすることは出来ないものだろうかと考えて見ると、重力はあまりにも小さいことに気がつく。キャベンディッシュは大きな鉄球の近くに小さな鉄球をぶら下げてどうにか、これらの球の間にも重力が働くことを示した。

 簡単に重力場を見るためには出来るとしても地球の重力場を見るしかないだろう。否、我々が住む地表面では地球の重力による重力場を逃れることは出来ないのである。

 余りにも局部的であるが物が落ちることを目撃することにより重力場を感じるより仕方がないのである。群盲象を撫でるの比ではないのであるが、風の無い日に雨が降るときの様子を見るのが最も良いようである。

 図‐2は良く考えると電磁場と地球の重力場との重ね合わせである。通常は電磁場に比べて地球の重力場が小さいので重力場のことを考えなくて済むわけである。図-2で通電をストップしたときの鉄粉の動きから重力場を知ることも良いかも知れない。

 科学博物館の展示には説明が少し足りないと思われる。
 
(了)


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