国際宇宙ステーションの自転 

(2015年7月23日)


  国際宇宙ステーション(ISS)は高度約400kmで地球を周回しています。周期は約90分です。ISSはいつも同じ面を地球に向けています。キューポラのある部分は常に地球を向いていますので、キューポラの窓からは常に地球の表面が見えます。

  ISSは常に地球に同じ面を向けているということは、ISS自体が90分で1回転しているということです。進行方向に頭を下げる方向に回転しているということになります。回転している物体は遠心力加速度を生じます。この加速度は重心から離れているほど大きくなります。

 「きぼう」の位置はISSの先頭、進行方向左側に取り付けられています。ISS全体の重心から約40mぐらいでしょうか。この自転による遠心力加速度を計算してみましょう。

 自転の角速度ω=2π/T
 T:周期(=90分×60秒/分=5400秒)
 従って、ω=2πラジアン/5400秒=0.0012ラジアン/秒

 遠心力加速度α=rω^2
 r:ISSの重心から「きぼう」の位置までの距離(=40 m)
 従って、α=40×0.0012^2=0.00006 m/秒^2

 g:重力加速度(=9.8m/秒^2)
 遠心力加速度をgで表すと、α=0.000006 g =6マイクロg

 この程度なら「きぼう」の位置で無重力状態であると言っても構わないでしょう。逆に言えば、マイクロgのレベルの加速度を検知する方法は知られていません。

 ISS内は微小重力環境であると言われています。地球の重力はISSが自由落下をしていることによりISS内では消えています。それでも正確には微小重力と断わらなければならない理由は3つあります。

(1) 地球の重力が空間で一様ではないこと。
(2) ISS本体による万有引力加速度。
(3) ISSの自転による遠心力加速度。

(1)には二つの要素があります。
 a)重力の方向がISSの重心と前後左右の端では完全に並行ではないために、重力の直角方向に生ずる重力の水平方向成分による影響です。ISSの前後および左右方向に圧縮力を与えるものです。
 b) 重力の大きさが地球の重心からの距離によって異なるために生ずる力で、潮汐力の原因となる力です。
ISSに対しては上下方向に引き張り力を生じます。

 (1)−a) 「きぼう」の位置がISSの重心から30 mほど離れているとすると、ISSの重心方向に向く重力の成分が5マイクロg 程度あります。

 (1)-b) ISSの場合では、地球の半径方向、つまりISSの天井と床の差は精々3m程度ですから地球の中心からの距離6770kmに比べて小さく、微小重力に対する影響は1マイクロg以下です。
   
(2)はニュートンの万有引力による加速度ですがISSの質量でも極めて小さい量です。ISSの質量400トンと地球の質量6×10^24kgと比べて極めて小さく、ISS内の微小重力構成要素にはなり得ない無視できる大きさです。

(1)の要素がISS内では、完全に無重力ではなく、微小重力環境と言われる理由なのですが、殆ど同じ程度で影響のあるのが(3)のISSの自転による遠心加速度です。しかし、どちらもマイクロgのオーダーではあります。

(了)


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