人工重力も加速度  

(2011年12月7日)


  国際宇宙ステーションでの半年近い滞在を終えて地球に帰還した古川宇宙飛行士は元気な様子を見せたものの直ちに椅子に座らせられてリハビリセンターへ向かった。長期の無重力状態はステーション内での運動をしても骨と筋肉の衰えをもたらすものであることは間違いないようである。

  宇宙ステーションに人工重力を作ることは最初から考えられていた。1952年にフォン・ブラウンが描いた宇宙ステーションはドーナツ型にして全体を回転させることにより、遠心力を人工重力とするものであった。


 1968年に封切られた「2001年宇宙の旅」でも殆ど同じ構想の宇宙ステーションであった。

 
 ジェラルド・オニールの「宇宙植民島」は、地球の公転軌道上で太陽と地球とで丁度正三角形をなす場所(L5と呼ばれる)に大勢の人が住める居住地を作ろうという大構想である。これは1974年に発表されたものは、直径6Km、長さ30Kmのシリンダー型で1000万人の人口を想定したものである。この島は0.55rpmで回転させると地球と同等の重力になるというものであった。

 その後、いくつかの案が考えられた。1975年にスタンフォード大学で設計されたドーナツ型のものは直径1.6Kmで人口1万人を想定したものであるが、1rpmで回転させて地球と同等の重力を得るとしている。


  宇宙植民島の外周側に地面を造り、中心からrの位置にあるとすると、この島が角速度ωで回転しているとき、rω^2
の遠心力が人工重力として働く。この人工重力も慣性による加速度であることは明らかである。宇宙植民島内にあるりんごの木からりんごが落ちるときは地面に向かって落ちて行く。人工重力も加速度であるから、落ちている間は無重力であり、りんごに力は働かない。

 遠心力が人工重力として作用する宇宙植民島では、この重力の大きさは半径rに比例して大きくなる。地球の重力が半径の2乗に逆比例して大きくなるのと異なる。しかし、局所的には人工重力も一定と考えて良いだろう。

 ここで遠心力を人工重力として使えることを利用して、地球の重力を消すことができる。地球の赤道上に大きなロケットを東西方向に水平に向けて地球に対象に取り付け噴射する。つまり地球の自転速度を上げていく。地球の自転が90分で1回転程度になれば、或いは赤道での回転速度が第一宇宙速度である秒速7.9Km程度にまで高まれば、赤道道地帯では無重力になるだろう。
ただ、この釣り合いは不安定であるから空中浮遊は難しい。空気自体も宇宙の彼方に飛び去ってしまう。
 (了)


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