ハザード  

(2009年6月21日)


 ハザードという言葉は外来語です。英語では Hazardです。昔、「危険要因」と訳されて使われていたこともありました。しかし、ハザードの概念は日本語に無かったのです。危険も要因も既に確立した意味がある日本語ですから危険要因という訳語は4文字で1語だと言ってもどうしても誤解を生じます。そのため、ハザードというカタカナで標記する方が良いのです。

 ハザードとは事故の起きる要因が存在する状態を言います。この要因が存在することが判らなければハザードであるかどうかも判りません。従って、ハザードは認識するか否かが重要です。ハザードは識別すると言います。英語ではidentifyですので、原子力分野では同定すると言う用語を使っています。

 ハザードは比較的大きく捉えたことばで、さらに識別したハザードに対してその要因を一つ一つ識別するのが常道です。この場合、ハザード要因と言います。英語ではHazard Causeです。ハザードを危険要因と訳してしまうと、ハザード要因に当てるうまい言葉が無くなります。

 ハザードの形容詞が英語ではhazardous です。日本語では「ハザードな」で良いでしょう。例として、ガソリンはhazardous material の一つです。つまり、ガソリンはハザードな物質です。

 ところが、困ったことに日本の消防法ではhazardousに当たる言葉を「危険な」と訳してしまっているのです。従って、消防法ではガソリンも「危険物質」です。

 安全管理の鉄則は危険なことはしてはいけないということです。ガソリンが危険物質なら、ガソリンのセルフ・スタンドでドライバーが自分で車に給油するなど持っての他のことなのです。

 ガソリンはハザードな物質ですが、セルフ・スタンドで給油することも現在の技術で十分安全を確保できると誰もが判断しているから自分で給油しても良いのです。ガソリンの給油が危険作業だと思う人は自分で入れるのは止めた方が良いでしょう。

 同じ物質でも量によってはハザードです。人類に取って必要な水でさえも、大量であるとハザードと識別されることになります。逆に、毒性のある物質であっても、極めて少量であればハザードであるどころか薬の材料にもなります。

 何がハザードであるかは全く人類の経験によります。知識と経験がなければハザードとして識別できません。

 

 

(了)


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