動物は慣性で動く  

(2022年5月14日)


 バスケット選手のジャンプ力には驚かされますが、垂直飛びのギネス世界記録を持っているのはカナダのエヴァン・ウンガーさんで1.616mだそうです。エヴァンさんはパーソナル・トレーナーをやっていてバスケットの選手ではありません。ギネス記録を残すことを目標に練習を重ね、片足での垂直飛びも1.346mの記録を残しています。

 エヴァンスさんは垂直飛びをする直前は静止しています。体重を支えているのは両足です。体重は下向きの力で両足にかかり床の反力と釣り合っています。垂直飛びを開始するときエヴァンスさんは体を少し沈めて勢いを付けます。このとき両足の体重は少し増えますが反力も増えます。作用反作用の法則(ニュートンの運動の第三法則)により足の裏で感じる体重と地上からの反力は常に等しいのです。

 エヴァンスさんが地上から1m以上も飛び上がる原因として考えられる上向きの力は反力だけですが体重と相殺されています。

 飛び上がることの出来る原因は体を沈めてから瞬発的に足を伸びすことによって体全体が上向きの運動を起こすのです。この運動が充分大きければ体は地面を離れます。一度上向きに動いた体は慣性の法則(ニュートンの運動の第一法則)により、その動きを保つのです。しかし、重力場ですから地上にすぐ戻されます。そのため世界記録でも1.616m どまりです。

 垂直飛びだけでなく人間が普通に階段を上って2階に上がれるのも、地面を歩いて前に進めるのも慣性があるからです。この慣性を実感しているのはアイス・スケートの長距離選手でしょう。蹴りだして伸ばした足をひきつける間に他方の片足で滑っています。

 実は動物だけでなく、自動車やレールの上を走る機関車も慣性で動いています。車輪が回転すると地面やレールとの接触面では作用反作用の法則で釣り合っていて、前向きの力が出ているのではないのです。車輪の転がりにより前向きの運動が生じるのです。

 ニュートンの運動の法則で第二法則が運動の法則と呼ばれていますが、地上を動く物体や動物は運動の法則で動いている訳ではなかったのです。

(参考)

 運動の法則(第二法則)で動いているのはロケットです。質量mのロケットが推力Fを出しているときそのロケットは加速度αで速度を増加しています。この時の関係式が F=mαです。

 

(了)


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