「地球の歴史(上)」へのコメント  

(2017年10月25日)


地球の歴史(上)、鎌田浩毅著、中公新書、2016


 「地球の歴史」は(上)、(中)、(下)の3巻で構成されています。そして、上巻は次の4章から構成されています。忘れないうちに、第1章だけですが、コメントを残しておきます。

1章 太陽系惑星・地球の誕生
第2章 マグマオーシャンの冷却と核・マントルの文化
第3章 プレート・テクトニクス開始と大陸の成長
第4章 大気と海洋の誕生と炭素循環


ビッグバンについて
(p.5)「アメリカの物理学者ジョージ・ガモフ(190468)は、宇宙は一つの「火の玉」がはじけることから、誕生した、という説を出した。」
 → ビッグバンの最初の提唱者はガモフでなくジョルジュ・ルメートルです。ガモフがビッグバン説を広めたことは間違いないので、ガモフが提唱者であると書かれた本もありますが、ルメートルが最初の唱道者であるとする方が正しいようです。ウイキペディアでもそのように書かれています。

 ケプラーの法則について
(p.32)「宇宙空間の物質は、すべて万有引力の法則と「ケプラーの法則」に支配されている。」
 → この表現では二つの法則で支配されているように読めますが、万有引力の法則はケプラーの法則から導けます。従って、「万有引力の法則、(又はケプラーの法則)に・・・」と書かなければなりません。(ニュートンは万有引力の法則からケプラーの法則を示したようです。)

月が遠ざかる理由
(p.60)「摩擦によって失われたエネルギーが月に移ったので、エネルギーの総和は変わらない。すなわち、高校物理の時間に習う「エネルギー保存の法則」が、ここでも成り立っている。」
 → 摩擦によって失われるエネルギーは月に移るのでなく熱として失われます。地球の自転による回転エネルギーが失われますので、地球と月を合わせた角運動量保存則により月は地球から離れることになります。角運動量保存則はいつも回転しているアイススケートの選手が両手を広げて回転速度を落とすことで説明されます。

潮汐力安定について
(p.62)「月はラグビーボール状の長軸のうち地球に近い側に重い物質が集まり、遠い側に軽い物質が集まっている。」
 → 月が常に同じ面を地球に向けているのは月の公転と自転が同期しているからですが、これが安定しているのは潮汐力が働いているからです。潮汐力による安定は重心が地球から遠い側にあっても近い側にあっても同じです。フナ釣りのときに使うウキは重量と浮力の安定で必ず重いほうが下になります。潮汐力による安定は重力加速度と遠心力加速度による安定です。

 記述矛盾?
(p.65)「四季は四〜六年とい長い時間が経ってめぐってくる様相であった。」
 → 月が誕生したとき地球の自転速度ははやくて1日が4時間ほどしかなかったと書かれている一方で、地球の公転速度は今と変わらなかったあります。この説明と四季が四〜六年かかったという説明は矛盾するように思われます。

重力と力の関係
(p.46
)「ニュートンはすべての物体に万有引力という力が働いていることを発見した。この力は、地球上では重力として認識できる。」
 → 現在のニュートン力学では全くこのように理解されています。しかし、万有引力という力が働いていることは実証されていません。加速度運動があるだけです。表現は違いますがこのことに最初に気が付いたのがアインシュタインで1907年のことです。また、多くの物理学者も今では自然界に存在する四つの力は四つの相互作用と書き換えています。重力が四つの相互作用の内の一つであることは確かです。

(了)


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