安全と安心  

(2010年1月30日)


 近頃、安全と安心の言葉を組みにして聞くことが多くなりました。両方をまとめて安全・安心と標記することもあります。昔はこのような使い方はしなかったように思います。

 二つの言葉を使うということは、この安全と安心の意味するところが違うと思うからでしょう。つまり、二つの用語は非常に関係が深いのですがまったく同じではありません。簡単には、安全が事物の状態を対象としているのに対し、安心とは人の心の状態を対象としていることの違いがあります。


 安全とは「リスクが許容できるほど小さい状態をいう」という定義が最も適切であり、最近はこのように使われることが定着してきた言葉です。広辞苑の説明は下に引用しておきましたが、少しあいまいです。

 安心とは心が休まる様子をいうのですから、本来、安全であれば安心であるはずです。安全と安心は違うと言い出したのは、安全というのは事物の客観的な状態であり、安心は主観的なものという観念が強いからでしょう。

 私は「安全対策に加えて安心対策が必要」という表現を見たとき、この感を深くしました。


 例として、原子炉の安全対策とは万が一にも暴走することの無いように緊急冷却装置をつけたり、放射能漏れを起こさぬように2重・3重に技術的な対策を取ることです。

 近隣の人への説明には「安全対策を取りました」ということに行きつくわけです。この説明が安心を呼ばないとすれば、説明者に信用がないということでしょう。

 安全対策が安心対策にならない社会とは嘆かわしいものです。
 

広辞苑

安全:@安らかで危険のないこと。平穏無事。

   A物事が損傷したり、危害を受けたりするおそれのないこと。

安心:心配・不安がなくて、心が安らぐこと。また、安らかなこと。

 

 

(了)


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