安全の第一責任は誰にあるか  

(2011年4月25日)


 福島原発事故で安全確保に最も責任を負うべき人は誰なのか、有識者の中にも誤解があるようだ。その有識者によれば、国会で東電社長が事故を起こしたことに対して謝ったことに対し、最初に謝るべきは原子力安全・保安院ではないのかという指摘である。

 安全確保に最も責任があるのは当事者である。この原則は絶対に守らなくてはならない。大きな組織では安全担当の部署を置くことは常識にさえなっている。しかし、実行部門から独立した安全担当部門を置きなさいということは、安全担当のいうことは100%実行しなさいということではなく、あくまでも助言の立場なのだ。

 例えば、安全管理部門から重要な部分に冗長系を持たせるべきだとの見解が示されたとする。実施部門は、予算がないので出来ない、スケジュールに遅れが出るので出来ない、あるいは性能が落ちるから出来ない、などの理由で冗長系を持たせることが出来ないと判断するかもしれない。決定権限はあくまでも実施部門が持っている。

 安全管理部門が実施部門から独立に安全審査をする場合も同じである。安全審査で不適と判断されたことは簡単に無視することはありえないにしても、安全審査をパスすれば良いという短絡した考えでは却って危険なのである。安全審査は部外者も入れた岡目八目効果を期待するだけで、この審査を通ることは必要条件であっても十分条件ではないからだ。

 実行部門が予算執行権限をもち、常に他の要求とのバランスの元に実行する。安全担当の意見だからと言って何も考えなくて実行するようではむしろ危ない。簡単に理解するには責任が重い部署ほど報酬も高くあるべきだという観点からもこの原則は曲げてはならない。


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