「レンズ付きフィルム」(通称使い捨てカメラ:以降「写るんです」)はなぜあんな簡単にそこそこの写真を撮ることができるのでしょうか?
ファインダーを見て、そしてシャッターを押す。もちろん露出あわせなど必要ない。これだけで済むために「写るんです」では写真の写る原理を十二分に活用しています。もちろん、写せる状況が限られているのは仕方のないことです。しかし、写る原理さえわかれば「写るんです」でもすばらしい写真を撮ることは可能です。
「写るんです」は写真を勉強しようとする人にとってはもってこいの材料です。 そこで、この「写るんです」がどういう原理でそこそこの写真が撮れるようになっているのか、それを検証してみたいと思います。 みなさんがこの検証を読んで少しでも写真の写る原理を理解し、すばらしい写真が撮れることを祈ります。また、間違いがありましたら遠慮なくご指摘ください。独学ですから...。あ、あと「写るんです」製品自体の詳しいスペックなどは知らずに書いており、すべてそうであろうという推測です。 1.レンズの直径 「写るんです」と普通のカメラ(コンパクトでもいい)のレンズ部分を見比べてみると前者のほうが明らかに小さいのがわかります。それぞれのレンズから通った光の量を同じ面積ではかった場合に当然小さいレンズをもつ「写るんです」の方が到達できる光の量が少なくなります。「写るんです」のレンズには絞り機構がついていないので「絞っていない」つまり「開放絞り」の状態といいます。到達できる光の量が少ないレンズのことを一般的には「暗いレンズ」といいます。また、暗いか明るいかを数値化したものをF値と呼びます。 2.「直径」=「絞り」 絞りが変えられるレンズならば「写るんです」のレンズと同じくらいの暗さにすることはできます。レンズが同じ画角ならば「写るんです」のレンズと同じくらいの大きさ(直径) まで「絞る」ことによって、「写るんです」と同じくらいの「暗さ」、つまり光の到達できる量にすることができます。絞った結果同じ「暗さ」なった場合、その絞りの値がおおよそ「写るんです」のレンズのF値といえるでしょう。(ただし、レンズの材質によって光の透過率が変わるので一概にそうとは言えませんが...) 3.開放F値(F1.4=明るいレンズ F8=暗いレンズ) 開放F値とは絞りを開放(まったく絞らない)状態にした場合の光の透過量といえるでしょう(本当は口径比ですが...) 。例えば一眼レフの50mmF1.4というレンズで、f1.4(開放)とf8(絞りを5段階絞った)場合とを比較してみるとf8まで絞った場合は、絞り羽によってかなりの光が遮られるのがわかります。絞らない状態でこれくらい光を遮るレンズがあれば、それは50mmF8のレンズということになります。 さて、実際のところ「写るんです」の開放F値がいくつかはわかりませんが、かなり暗いレンズであると思われます(参考までに一般的なズームコンパクトカメラでは望遠側(100mm前後)の開放F値はF9〜10位のようです。こんなに暗いとは思いませんでした)。 さて、ここからが本題です。 4.被写界深度(F1.4=狭い F8=広い) 「レンズが暗い」=「あるF値までレンズの絞りを絞る」と考えると、「被写界深度」という言葉がかならず関係してきます。「被写界深度」とは被写体にピントをあわせたときに被写体の前後にもピントがくる範囲のことです。一般的にf値が大きければ被写界深度は広くなりピントあわせがシビアにならなくなります。が、その代わりにフィルム面に到達する光の量が少なくなるので、シャッタースピードを遅くしないと露出不足になるおそれがあります。
5.「写るんです」の仕様 さて、ここで「写るんです」の仕様を上記から想像してみましょう。 ・レンズが小さい(F値は不明だが、暗いレンズ:推測) 上記にあげた3つの項目はまさに露出を決定する際に必要なものばかりです。そして、この仕様こそが、「写るんです」が簡単にそこそこの写真を撮ることができるキーポイントでなのです。 (Part2につづく) |