今回は前回「写るんです」の仕様で示した3つのポイント+ストロボについて説明し、「写るんです」のそこそこ写る原理を検証していきたいと思います。
前回は... --------------------------------------------- 5.「写るんです」の仕様 さて、ここで「写るんです」の仕様を思い出してみましょう。 ・レンズが小さい(F値は不明だが、暗いレンズ) 上記にあげた3つの項目はまさに露出を決定する際に必要なものばかりです。そして、この仕様こそが、「写るんです」が簡単にそこそこの写真を撮ることができるキーポイントであります。
というくだりで締めましたので、この続きから。 6.パンフォーカス 「レンズが暗い」=「被写界深度が広い」と前回述べました。被写界深度が広いということはピントあわせがシビアでないということも書きました。パンフォーカスという言葉をご存じでしょうか?ある距離から先はどこでもピントがあう状態のことをいいます。ワイドレンズである程度絞るとパンフォーカスになります。この状態にしてしまえばピントあわせが必要なくなります。ということは「写るんです」の... > ・レンズが小さい(F値は不明だが、暗いレンズ) という理由の一つはレンズを暗くすることによって、より広い被写界深度をかせぎピントあわせという作業を不要にした、ということがあげられます。24mmレンズで例を挙げてみましょう。このレンズをf11まで絞ると1mから無限遠までピントがあいます。逆にf2.8まで絞りを開けると3〜4mから無限遠までとなります。ワイドレンズなので被写界深度が広いですが、35mmや50mmになるとさらに狭くなります。 もうひとつ理由が考えられます。「写るんです」のシャッタースピードがそれほど高速でない(と思う)のでISO800もの高感度フィルムを使用するためにはそれなりに暗いレンズを使用せざるをえなくなるということもあるでしょう。 例を挙げてみます。 「写るんです」の仕様がシャッタースピード・1/250、フィルム感度・ISO800とした場合を考えてみます。晴れた日の順光では露出計のFOOT CANDLES値は80〜160の間を指します。これをISO800・シャッタースピード1/250に合わせた時の絞り値で見てみますと...f16〜f22。同じ露出を絞りf2.8で見るとシャッタースピードがなんと1/8000以上の高速でないと適正露出になりません。 もし、「写るんです」の絞り値がF2.8ならば、高級な一眼レフカメラ並みのシャッター機構が必要になってしまいます。 これからも暗いレンズを利用する必要があるものと思われます。 7.フィルム しかし、ここで弊害があります。前回レンズが暗いことによって... > その代わりにフィルム面に到達する光の量が と述べました。そうです、レンズが暗いと露出不足になりやすいのです。この対策として、 > ・フィルム(ISO800のネガフィルムが一般的) といったようにフィルムの感度を高くして露出不足を回避しているのではと個人的に、勝手に考えています。では、なぜフィルムで露出不足が回避できるのでしょうか? それは上記青字で書いた所がポイントです。ISO800という感度はISO100に比べて光を8倍感じやすいフィルムということです。これだけ聞くと感度が高いほうがいいように聞こえますが、そこは一長一短。フィルムは光を感じる粒子の集まりで、感度が高いフィルムとはフィルム上のひとつひとつの粒子が大きく、それだけ光を感じやすいフィルムです。しかし、粒子が大きいのでできあがりの写真が粗くみえてしまいます。まぁ、キャビネ程度までの大きさでしたらあまりこだわらなくていいかもしれません。 話はそれましたが、感度の高いフィルムを使えば、レンズの暗さをカバーしてくれます。 もうひとつのポイントがネガです。ネガフィルムを使うことによって多少の露出の過不足ならばプリント段階で調整可能なところです。また、リバーサルフィルム(スライドフィルム)と比べると保存できる明るさの幅(寛容度=ラチチュード)が広いので多少明るすぎたり暗すぎてもそれが情報としてフィルムに保存されるので、露出が失敗したとしてもフィルムとプリントの二重ででカバーしてくれます。まぁ、この辺は普及型コンパクトカメラでも常套手段ですね。
8.シャッタースピード > ・シャッタースピード(不明だが、体感で1/90〜1/100?) さて、ポイントの3番目にあげたシャッタースピードですが、これは「写るんです」の性格として記念写真が多く、また機構の構造的な問題とか製造コストの問題とかも反映されてこのような速度になっていると思われます。 流し撮りなどすれば動きのある被写体も撮影可能でしょう。 スナップとしては十分な速度だと思います。 9.ストロボ* とガイドナンバー *ストロボはどこかの商標だったような... ストロボについてここで述べておきましょう。夜間撮影や逆光ぎみの人物の場合などに有効ですが、「写るんです」の裏に「1〜3mで使用」とかいてあるように近過ぎても遠過ぎても駄目なようです。
ストロボはそれがどれだけの発光量を持っているのかを示すガイドナンバー(GN)という数値をもっています。たとえば、あるストロボのGNが20とすると「ISO100のフィルムで1m離れた被写体(標準反射板)を適正に写すためには絞りを20にしなさい」ということを示します。 では、ストロボ付き「写るんです」のGNはいくつなのでしょう。実は私も知りません。ので、仮説を立てておおよそのGNを想像してみることにします。 仮説:まわりにストロボ光以外の発光体がない真っ暗な状況で2m離れた被写体を次の仕様の「写るんです」で適正露出で撮影できたとします。 ストロボ付き「写るんです」:フィルムISO800ネガ,レンズ35mmF8 露出が適正であるということなので... ISO800,2m,F8 = ISO800,1m,F11 ISO800,1m,F11= ISO100,1m,F4 ということで、GNは4という結果が出ました。 あとはフィルムのラチチュードの広さでストロボ撮影できる撮影範囲というのが決まってきます。最短より近ければストロボ光が強すぎて露出オーバーになりますし、最長より遠ければストロボ光が届かずに露出アンダーになってしまいます。その範囲が「写るんです」の裏の「1〜3mで使用」として表記されているのだと思います。 (Part3に続く) |