アドバンスド NIKONOS

 
撮影機材:ニコノスV 35mm+SEA&SEA接写リングM2
撮影データ:f22 1/60 SB105full発光 RDPII

 


 

NIKONOS撮影術

 
マクロ編Part1

ニコノスの接写についてはいろいろと思い入れがあるのでちょっと長くなってしまうかもしれません。

まず、ニコノスで接写する際の長所・短所を挙げてみましょう。長所・短所を挙げることによって必然的にニコノスの接写で撮れるもの/撮れないものがわかってきます。また、それはイコール、ニコノスの限界でもあるでしょう。これらを正しく理解した上で、「それでも一眼レフでないと」と思われるのならばいたしかたありませんが、ニコノスで撮れる範囲内の生物を撮るので十分ならば、ぜひここでニコノス接写の撮影術を盗んでいってください。ひとりでも多くのニコノスファンが接写レンズ・接写リングをつけて水中のすばらしい生物をフィルムに焼き付けてくれることを祈ります。

さて、ニコノスの長所ですが、まずはなんといってもその取り回しの楽さでしょう。いわゆる「当てチョン」と呼ばれるように接写枠内に被写体を入れるだけで接写ができるのですから。ただし、ここがニコノス接写の最大の欠点でもあります。枠におさまってくれるおとなしい生物ならば一眼レフにも負けない写真が撮れるのですが、枠を近づけると逃げてしまうような被写体には通用しません。あなたの撮りたい被写体が後者の類の生物ならば残念ながらニコノスでは限界です。ただし、無駄なフィルムばかりを生産するはめになりますが、非常に特殊な方法でいままで撮れなかったものが撮れた例がありますので、それを参考にしてみてください。

第2の長所ですがニコノスの接写は接写枠のため、フィルムに写し込める大きさは限らてしまいます。が、逆転の発想をすれば、被写体との撮影距離が常に一定のため、一度露出データを撮ってしまえばあとは何も考えず(もちろん構図は考えてください(^^))、ひたすら撮りまくれるのです。また、一眼レフでは必ずファインダーを通してでないとピントが確認できませんが、ニコノスの場合は枠を合わせるだけなので、ハウジングが入り込めないようなところでもニコノスならば(枠が合わせられるのならば)腕を伸ばして撮ることも可能です。これは第3の長所とも言えるでしょう。

最近のマクロの写真を見ると生物の目だけにピントがあっており、その前後がきれいにボケている写真があります。これはレンズの絞りを開けて被写界深度を狭くすることによってできるのですが、ニコノスの場合はファインダーなどでピントの確認ができないため、絞りは絞れるだけ絞って被写界深度を稼がないとピンボケばかりになってしまいます。絞りを開けて撮ってみてもいいですが、フィルム1本(36枚)に1枚、ピントがあってればいいほうではないでしょうか。残念ながらこの手の写真を撮るには一眼レフのほうがフィルムコストは安く済みます。

「枠を合わせるのはわかっているけど、枠を合わせてもピンボケになっちゃうんだよね」とおっしゃる方にはもう、「ひたすら経験を積んでピントの合う位置を体で覚えてください」と言うしかありません。ちなみにSEA&SEAの接写リングは枠から5mm先でピントが合うようになっているとのことなので、枠とぴったりに合わせてしまうとピンボケになってしまいます。

あと、短所として言えることは「数多く撮らないとだめだ」ということです。一眼レフの人が2ダイブで1本フィルムを消費するとしたら、ニコノスの人はその倍、つまり1ダイブで1本フィルムを使い切るくらい撮らないといい写真は出てきません。証拠写真程度ならば話は別ですが、フォトコンに出したりするのであれば、数多く撮っておくことをお勧めします。私の場合は1ダイブで最低ニコノス2台持って入ります。沖縄ではワイドとマクロ、伊豆では(接写倍率の異なる)マクロとマクロで潜っています。

さて、話が長くなってしまいましたが以下では私が実際に撮影した写真をもとにどのような点に気をつけたり、工夫したりしたかを簡単にコメントします。

表中の数字は@:撮影機材、A:撮影データ、B:撮影地、C:一言です

@ ニコノスV 35mm+M1M2 SB105 RVP @ ニコノスV 35mm+M2 SB102 RVP @ ニコノスV 35mm+M2 YS30 RVP
A f22 1/60 full発光 A f16 1/60 1/4発光 A f16 Bulb full発光
B 八幡野 ビーチ 水深16m B ケラマ トカシクビーチ 水深24m B 大瀬崎 門下 水深21m
C 2倍マクロを使った写真です。SEA&SEAのM1,M2中間リングをつなぐと2倍撮影ができます。ただし、2倍撮影時は撮影範囲とピント合わせに神経を集中してください。被写界深度がかなり狭いのでできるだけ多くシャッターを切りましょう。こういった逃げることのない生物はニコノス接写ではうってつけです C 普段はなかなか撮れない生物もある時期になるとドアップで撮れることがあります。このトウアカクマノミも普段はイソギンチャクから離れたところでふらふら泳いでますが、卵を持っているときは卵の前で待っていれば世話をするところやダイバーに対して威嚇するところなどがバッチリ撮れます C マクロでも背景処理は必要です。ただし、ニコノスの接写では被写界深度を稼ぐために絞るので、普通のシャッタースピードではバックが暗くなってしまいます。そこで、バルブで撮ります。しかし、枠を近づけると結構動く被写体だったので、流し撮りのようにして撮ってみました
@ ニコノスV 35mm+M1 SB105 RVP @ ニコノスIV 35mm+M1 YS30 RVP @ ニコノスV 35mm+M2 SB105 RDPII
A f22 Bulb full発光 A f16 1/90 full発光 A f22 1/60 full発光
B 大瀬崎 門下 水深21m B 大瀬崎 湾内 水深24m B ケラマ フレンドリー 水深9m
C 比較的動かない被写体の場合は積極的にバルブを使ってみましょう。特にバックがウチワやトサカなどの場合はバックのブルーとあいまってきれいに撮れます。あおり気味にすることを忘れずに。できれば太陽のある方向をバックにするとバルブの時間も短くてすみます。カメラブレには注意してください。場所が許せば両膝をつけたほうが体を固定しやすいでしょう C 水中でミジンベニハゼを見たことがある方ならばわかると思いますが、常識的にこの手の生物をニコノスの接写で撮ることは難しいでしょう。この時はたまたま缶ではなく間口の広いビンであったことと物怖じしない個体であったことでこのカットが撮れのだと思います。また、接写枠を外せば、そうとう臆病な個体でない限り撮影可能です(実際に撮影したことがあります) C これもニコノスの接写では無理だと言われそうなカットです。この時は接写枠を外して撮りました。あらかじめ別のところで枠までの撮影距離をチェックしてから枠を外してヒョットコオコゼに合わせました。3カットしか撮らなかったうちの一番全身が写っているカットです。珍しい種であったため、出会えたこととそれをいちおうまともに写せたことは運がよかったとしか言えません

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