●按摩マッサージ施術に関する一考察
音楽との対比から
按摩マッサージの施術においては、施術者がどのようにイメージを持てるかが課題である。
そこで今回は、音楽の特徴を取り上げ、施術のプロセスや効果と対比することで、8つの視点から考察を行う。
1.リズム
音楽は、リズムを重視する。施術も、リズムが重要である。圧迫や揉捏・打法などは、そのリズムが気持ち良さにつながる。
機械のように完全に規則的なリズムではなく、適度に不規則が入りながら、揺らぎを感じることで、患者は癒やしを得る。
リズムの振動刺激によってパチニ小体が受容し、A10神経が作動し、ドーパミン増につながるためである。
2.強弱
音楽は、音色の強弱を重視する。施術も、体質や部位に合わせて軽くすべきところと、十分強めるところを見分ける。例えば、肩こりや腰部のこりには強めに力を入れるといった原則がある。
3.音色
音楽は、音色を重視する。施術者の個性や施術スタイル、施術室内外の環境は、患者にとっては音色のように感じる。従って、施術者自身の成長や、好ましい環境作りが必要となる。
4.音程
音楽は、音程を重視する。東洋療法においては「陰陽」が、音程に該当するのではないだろうか。
高い音を陽、低い音を陰として考えることができる。陰陽可分は、低い音の上下にも、さらに高い音と低い音が存在する。陰陽互根は、もう一つの音があってこそ、高低が定まる。
5.和音
音楽は、和音を重視する。不調を訴える患者においては、組織液の流れや代謝が乱れており、結合組織の弾性や筋緊張のゆがみをポリモーダル受容器が受容し、雑音のように情報を上げていく状態にある。
これは、音で雑音や不協和音を不快と感じるのと同じく不快を感じるものである。
施術は問題の箇所を審査で絞込み、触察で特定し、組織液や代謝の流れを整え、結合組織や筋緊張のゆがみを整える。これらの操作により、ポリモーダル受容器からの雑音を減少させ、それまでノイズキャンセルや不快さの処理に当たっていた鎮静系の能力が余剰となる。このため、気持ち良さを伴う眠気をもたらしてゆく。
6.ハーモニー
音楽は、ハーモニーを重視する。施術の効果には、施術者の個性と患者とのハーモニーが大きく関わる。患者の体の必要箇所にフィットした施術は、いいハーモニーを作り出す。患者との会話も、患者の流れに寄り添うことで好ましいハーモニーが得られる。
7.健康調整
音楽は高ぶった心を沈め、傷つき落ち込んだ心を慰め励ます効果がある。施術は、高ぶった組織を沈静(瀉)させ、あるいは不活発な組織を鼓舞(補)する効果がある。これらにより、心と体の一体(心身一如)の健康を目指すことができる。
8.調和
音楽では、音程の調和に「黄金分割」が活用されている。しかし、施術では気持ち良さや身体の粘弾性、痛みや違和感など、定量化が難しい指標を扱うため、陰陽調和の目安を見つけることが難しい。
しかしながら、音楽を参考に考えれば、施術の黄金分割を見出す可能性が導かれる。パチニ小体などで受けるa10神経ドーパミン系の「覚醒形気持ち良さ」と、ポリモーダルからのノイズが減少し余剰能力で惹起される眠気を伴った「沈静形の気持ち良さ」との比率を扱うのである。
以上の考察を踏まえ、今後は、陰陽調和を目指す実践を進めながら、施術の黄金分割について追究していきたい。