d e s i g n e d u c a t i o n s t u d y |
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1.研究テーマ
平成17年度 文部科学省科学研究費補助 若手研究(B) [17730489]
『創造的問題解決を促すデザイン学習プログラムの開発』
2.研究目的
(1)研究の背景
@ 造形教育センターとデザイン教育
造形教育センターが,子どもの造形活動と生活とを結び付け,用と美を統合するデザイン・工作教育を普及させたことの意義は大きい。しかしながら高度経済成長期では,工業生産主義に子どものデザイン活動を追従させる結果となり,制作技術至上主義や要素的指導を助長するに至った。
A 子どもにとってのデザイン
産業社会の秩序を中心にしたこれまでの社会のあり様が問い直されている現在,上記の経緯を省察し,デザインを「モノ」に付随する要素(機能)としてではなく,人間にとって根源的な能力として捉える必要がある。そしてそのことを教育において実現するためには,「子どもにとってのデザインの意味」からデザインを捉え直す必要がある。造形教育センターでは,仮説として「環境に対する感性」「拡散的思考」「相互啓発」「ヴィジュアル・コミュニケーション」を掲げてきた。このことから本研究では,子どもが創造的に問題解決していくプロセスがデザイン学習であると考え,学校や社会の中で主体的に生きて働く力を育成するものであるととらえた。(図1参照)
B 縦断的なデザイン学習プログラムの必要性
上記の意味をふまえた教育実践は,断片的な実践報告にとどまっている。子どもの成長・発達に即した目標を整理し,学習プログラム(カリキュラム)として提示する必要があると考えた。(図2参照)
(2)研究目的
@ 先行研究から「子どもにとってのデザインの意味」を明らかにした上で,子どもの成長・発達に即したデザイン学習の目標レベルを題材開発のマトリクスとして提示する。
A 上記をふまえた題材群を構想し,縦断的な学習プログラムとして開発する。(図2参照)
(3)当該分野における学術的な特色・独創的な点及び予想される結果と意義
@ 子どもの総合的能力を発揮させる学習プログラム開発としての側面
「人・モノ・環境」との適切な関わりを目指す学習として,「総合学習」や「生涯学習」との関連・発展が期待できる。
A 縦断研究としての側面
これまで学校種によって分断されていたデザイン学習内容を,「子どもにとってのデザインの意味」から一貫したデザイン学習プログラムとして位置付けることができる。
(4)国内外の関連する研究の中での当該研究の位置づけ
前述のとおり,子どもにとってのデザインの意味に関しては,造形教育センターにおいて先行研究の材料が十分に用意されている。また学校種を超えた縦断的な学習プログラムの開発に関しては,附属学校における連携研究の知見が応用可能である。
3.研究計画・方法 (図3参照)
(1)平成17年度では,「子どもにとってのデザインの意味」「子どもの成長・発達に即したデザイン学習の目標レベルの分析」のための研究を進める。
@ 文献から,デザイン概念に関する最近の動向を分析する。
・デザイン学会誌,社会学に関する文献等から分析する。
A 教育研究や文献から,仮説としての「子どもにとってのデザインの意味」を分析想定する。
・デザイン教育研究者によるフォーラムを開催し知見を得る。
・造形教育に関する雑誌のバックナンバー等から仮説を分析・想定する。
B 教育現場におけるデザイン学習の授業観察を通して仮説を検証する。
・北海道教育大学附属旭川幼稚園,附属旭川小学校,附属旭川中学校における授業観察,及び授業者へのインタビューを通して,仮説を検証する。
・東京学芸大学附属学校園における授業観察,及び授業者へのインタビュー,web上での意見交換を通して仮説を検証する。
・旭川市東六条保育園における保育実践,保育観察,及び保育者へのインタビューを通して,仮説を検証する。
C 学校種を縦断した「子どもの成長・発達に即したデザイン学習の目標レベルの分析」を行う。
・発達研究の知見に基づき,子どもの発達的特性をふまえた目標レベルを想定する。
(2)平成18年度以降では,「題材開発マトリクスの作成」「縦断的な学習プログラムの開発」のための研究を進める。
@ 平成17年度で分析した「子どもにとってのデザインの意味」「デザイン学習の目標レベル」から,題材を開発するマトリクスを作成する。
A 上で作成した「題材開発マトリクス」に基づいて題材を開発する,あるいは既存の題材をリメイクし,授業実践を依頼する。
・実践報告を分析し,題材の見直し,及び目標レベルの見直しを行う。
B 学校種を縦断した「デザイン学習プログラムの開発」を行う。
・学習プログラムは,web上での公開,CD-ROMの頒布を通して成果を問う。
図1
図2
図3