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カルパッチョの連作

 

 

 その1  聖ゲオルギウス 

1787  3283

 

1787 Vittore Carpaccio (Venezia 1465?-Capodristria 1525- 6)   
San Giorgio battezza i Gentili (particolare) 
    VENEZIA , Scuola Dalmata dei SS. Giorgio e Trifone  
Ediz. Bertoli - Venezia   2004・10・2ファイル差し替え 
金管ラッパ  

 

3283 Vittore Carpaccio (Venezia 1465?-Capodristria 1525-6)  
Trionfo di Giorgio  (particolare) 
    VENEZIA , Scuola Dalmata dei SS. Giorgio e Trifone  
Ediz. Bertoli - Venezia   2004・10・2入手  
金管ラッパ

 

 

のカデンツ

 

↑この絵は

ヴェネチアのスクオラ・ディ・サン・ジョルジョ・デッリ・スキアヴォーニ にあります。

そこはダルマチア出身(今のクロアチア)の人たちが集まるスクオラ(同信会)で

ダルマチアの聖人・聖トリフォニウス と 

聖ゲオルギウス(聖ジョルジョ)に捧げるために建てられました。

海洋国ヴェネチアは

世界で初めてゲットー(ユダヤ人居住区)が作られた街でもあり 

キリスト教徒であれば、いかなる外国の人々も受け入れる という

許容度を持ち合わせていました。

そうした移民たちは、それぞれ 

信仰で結ばれた同信会という組織をつくり やがて資金調達できるようになると

慈善事業や芸術家の育成などに支援の手をさしのべたそうです。

は、せっかくヴェネチアに行きながら

勉強不足で このスクオラのことは まったく知りませんでした。

3283 のカードは露天のカード屋さんで見つけたもの。

 すでに 1787 のカードは コレクション済みで

その異国情緒たっぷりの雰囲気 

とくに ガウンと帽子が 強く印象に残っていたので

あれと同じようなカードだな とすぐ気付いたのですが   

でもどうして ヨーロッパ風ではないこのカードが 

このヴェネチアにあるんだろう と不思議でした。

カルパッチョの作品ですから、ヴェネチアにあって何の不思議もないのですが・・・ 

その頃はまだ カルパッチョのこともよく知らなくて

単純に異国情緒にあふれたカードだ と思ったのです。

帰国してから調べると、この2枚のカードは

カルパッチョが ダルマチア同信会から注文をうけ、1501年から約10年かけて製作した

 ダルマチアの守護聖人・聖ジョルジョ(聖ゲオルギウス)を主題にした連作で

『竜と戦う聖ジョルジョ』 『竜を殺し勝利した聖ジョルジョ』 『聖ジョルジョによるセレーネの住民の洗礼』 

という 三部作の絵 だということが分かりました。

 1787 は 『聖ジョルジョによるセレーネの住民の洗礼』   

3283 は 『竜を殺し勝利した聖ジョルジョ』  のようです。

でも どちらのカードにも 主役の聖ジョルジュが登場していないので 

全体図はどんなものか見当がつきません。

あ〜あ そうと知っていれば この絵があるスクオラを訪れたのに・・・と 後悔しきり。

そんなとき、図書館で、頼もしい助っ人本に出会いました。

カノーヴァ著  

『イタリア・ルネサンスの巨匠たち・ヴェネツィアの画家23  カルパッチョ』 東京書籍です。

ラッキー! 目次に、ちゃんとスキアヴォーニ同信会の連作画 とあります。  

絵もいっぱい!!

 

 3283 は  『聖ゲオルギウスの勝利』 141x360cm の部分画。

(画像は web gallery of Art  http://www.wga.hu/index.html よりお借りしました

 

中央には、今まさに竜をやっつけた聖ゲオルギウスが見得をきっている図があり

3283 はその左側の部分。

シレナ( リビア)住民の華麗な衣装や、軍馬を飾る馬具が

この場面の舞台装飾の役割を果たしている、とのこと。

オスマントルコと戦わなければならなかったダルマチア人にとって

守護聖人・聖ゲオルギウスの竜退治はまた格別の意味をもっていたのでしょう。

 

 

1787 は  『シレナ住民の洗礼』      141x285cm  の部分画。

(画像は web gallery of Art  http://www.wga.hu/index.html よりお借りしました

 

 

聖ゲオルギウスから洗礼を受けているシレナの王を讃えている場面、

カードは、左端の一段高い舞台で演奏をしている音楽隊です。

その描写には 魅力ある豊麗な色彩が見られる、とあります。 

確かに その強烈な色彩に負けない力強いラッパの音も 聞こえてくるようですね。

異教徒(イスラム教徒)であるシレナ(リビア)住民が キリスト教徒に改宗したということで

この絵は すべての人々がキリスト教徒になれば幸せが訪れる 

という祈りをこめたもの とのことです。

 

 


 

 

その2 ウルスラ物語

 

↓これは アカデミア美術館にある もうひとつのカルパッチョの連作

聖ウルスラ伝(聖女ウルスラ物語) のカードです。 

1490-95年製作

3300

3300 CARPACCIO ( ? - 1525)  S. Orsola ed Ereo (part.)   Venezia - Gallerie dell'Accademia  
 Edizione BERTOLI EMILIO    2004・10・2入手      
金管ラッパ    

 

まず  宮下孝晴著  イタリア美術鑑賞紀行 1 ヴェネチア・ミラノ編  美術出版社から

ウルスラ物語 のあらすじを。

ウルスラは、一般にはあまり知られていない聖女ですが、このカルパッチョの名作によって、

その悲劇的な生涯が有名になりました。 

これは、中世の黄金伝説 (13cに集大成されたキリスト教の諸聖人伝) に取材されている物語です。

ウルスラ(イタリア語ではオルソラ)の父はブルターニュの王で、キリスト教徒でした。

あるとき、イングランド王が息子のコノンとの縁談を申し込んできました。

しかし異教徒であるため 困ったウルスラは無理難題な条件を出します。

許婚(いいなずけ)になるには、洗礼を受けてキリスト教徒になること

自分とともに、ローマに巡礼に行くこと

さらに自分のほかに 10人の処女を、それぞれ1000人の処女を侍女につけて

その巡礼に同行させること。

ところが、イングランド王はその途方もない条件をすべて受け入れました。

ウルスラとコノンの大勢の一行は、約束どおりローマへの巡礼をはたし

法王から祝福されて帰路につきます。

悲劇はケルンまで戻ったときに起こりました。

ケルンの町が、フン族の手に落ちていたのです。

コノンは殺され、ウルスラたちも陵辱を拒否したために、全員殺されてしまいました。

 

このカルパッチョの ウルスラ物語の連作は 聖女ウルスラ心信会の注文で製作されたもので

物語の諸場面を 大キャンパスに描ききったカルパッチョの 渾身の作品だそうです。

この 大画面に描かれた9枚の連作は アカデミア美術館で たっぷり鑑賞しました。 

3300 のカードは なかでも一番大きな絵 280x611cm の 右端の部分。

『婚約者たちの出会いと巡礼団の出発』 という題名です。

 

  

(画像は web gallery of Art art  http://www.wga.hu/index.html よりお借りしました

 

 

楽器は 右奥の建物のバルコニーで ラッパを高らかに吹き鳴らしています。

 

実は この9枚の連作に 楽器が描かれた絵が ほかにもあったかどうか 

 記憶が定かではありません。

旅行中、あまりにもたくさんの絵と向き合うと、鑑賞能力のK点を超えてしまうのか 

とても雑な見方になってしまうようです。

たとえ あらかじめ予習していたつもりでも、美術館のはしごなどすると、

その量に圧倒されて わけが分からなくなってきます。

他に楽器の絵があったかどうかは不明ですが

どっちみち カードになっていたのは これ一枚だけでした。

 

前述の カノーヴァ著 「カルパッチョ」  東京書籍 では

この聖女ウルスラ伝も徹底的に取り上げてくれています。

うーむ、これによると 9点からなる連作には、これ以外どうやら楽器は描かれていないようです。

3300 の絵を 詳しく解説してくれていますので

感謝しつつ 引用させていただきます。

 

カルパッチョは、物語の進行順序に従って 連作を製作することは、できなかった。

連作画を飾る 聖女ウルスラ心信会の 壁のスペースを確保できた順番に 描いていった。

完成年である1495年の銘のある 『婚約者たちの出会いと巡礼団の出発』  は

連作中最大の画面で、6つのエピソードを含んでいる。

左側でエテリウスが父親に別れをつげている。

中央の旗竿の右側には、婚約者たちの二人の出会いにつづいて

ウルスラが両親との別れの挨拶をし

群衆でごった返す運河沿いの道から12本の櫂をもつ小艇に乗船し

ついで大きな帆船に乗船する場面が、連続する速いテンポで描かれている。

 は この絵を見て 一体どれがウルスラなのか 迷ってしまったのですが

大きな一枚の絵のなかに、ウルスラの各エピソードが連続して描かれていたのですね。

つまり どれもウルスラだったのです。

納得!

後で知ったのですが、こういうのは 日本の絵巻物などにもよくみられ

異時同図法 と呼ばれるそうです。

 

 


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