/ポストカード音楽会  /同じようで同じでない

 

 

踊り子と渦巻き

 

461      2493

461 Georges Pierre Seurat(1859-91) Le Chahut,1889-90/Doek, 169x139cm
c:Coll. Kroller-Muller Museum Art Unllimited 1992
Reproduction prohibited ART UNLIMITED AMSTERDAM A 3929 Printed in Holland
 2000・2・2入手     
オーケストラ

2493 Georges Seurat Le Chahut(Etude) 1889-90 Hulle sur panneau 21.8x15.8cm
The Courtauld Instittute Gallery, Somerset House,London
GEORGES SEURAT et le Neo-Impressionnisme 1885-1905  2003・1・14入手 
オーケストラ

 

 

のカデンツ

 

461 は スーラーのシャユの踊り子  2493 は 同じくスーラーの 点描 風シャユの踊り子です。

2493 が展示された展覧会があったとき パンフレットはチェックしたものの

この シャユの踊り子のカードは もう持っているし 他に 目新しい楽器カードもなさそう・・・と 展覧会をパス。 

甘かったです。 

この 2493 の踊り子のカードが  461とは別物だということに まったく気がつきませんでした。

 展覧会終了後 そのことを知って真っ青になったのですが 

かろうじて 知人から このカードを譲っていただきました。

こんなことでは とてもカードコレクター などとはいえませんし

展覧会に行くか否かは カード次第だなんて 

生粋の絵画ファンでないことも ばればれですね。

こんな が いつも切に願っていることは

展覧会のショップは 誰でも自由に出入りできるフリーな空間にあって欲しい 

ということです。

東京では  展覧会のショップにフリーで入れるところと そうでないところとあり

後者は 本当に いじわる だと思います。

海外の美術館は ほとんどのショップはフリーで 

誰もが 心置きなく 所蔵カードを購入することができます。

中でも 感動したのは スイスのバーゼル美術館。

ここのショップは 美術館内にあり 

入場券を買って自動改札口のような所を 通らなければなりませんでした。

カードの買い漏れに気が付き 翌朝いちばんに再び美術館を訪れ 

ダメモトで窓口で ショップにだけ行きたい と申し出たところ

係員が深くうなずいて 胸につけるバッチを 手渡してくれました。

それをつけると 係の人が 改札口を開けてくれ 

ショップは2階だったと記憶していますが 各展示室横を 通過させてもらって

買い忘れたカードを 無事ゲットすることができました。

この対応の素晴らしさ! 太っ腹な許容力!! 

ここまでしてくれ とは申しませんが 

日本の美術館も せめてショップを フリースペースにも設けてくれたら と思います。

(東京では 自由に入れてくださるところも いくらかあり そこは大好きな美術館です!)

 

話をもどしますと

この絵の舞台は ロートレックも描いた 『ディヴァン・ジャポネ』 (日本風長椅子の意味) 

カフェ・コンセールと呼ばれている 当時流行していた ミュージックホールのようなところで

飲み物を出して、シャンソンや 軽業などを見せる舞台 があったそうです。

シャユというのは、大騒ぎする という意味だそうで

シャユ踊りは 二組から四組の男女が足を高く振り上げながら方陣を描いて踊る

カドリーユというダンスを真似た踊り ということです。

 


 

 

<追記>

2013年 NHK ETV 日曜美術館 『魂をみつめたコレクション』 という番組で

スーラーの点描の話がありましたので ご紹介したいと思います。

まず訂正ですが 冒頭の2枚について  が 右側のみ 点描画と申し上げましたが

実は 左側(461) の クレラーミュラー美術館のものも細かい点描で描かれていることを

 はじめてこの番組で教えてもらいました。

絵具は 色と色を混ぜ合わせると 濁り 暗い色になってしまいます。

そこで スーラーは 絵具の色の明るさを保つため 混ぜ合わせずに 原色のまま

 ある法則に従って パレットに置いてみました。

その法則とは 補色のことで 色の差の大きい二つの色を近づけると 

それぞれの色が お互いに印象を強め 際立ち 輝くように見えるという効果があり

 スーラーは それを最大限に引き出すよう 試みたのです。

まず 黒一色の点描で描いてみました。

 

 テレビ画像より

 

それから 補色の効果を確かめながら 何枚も色を置きかえて試作を繰り返し  

そして だんだん点を小さくしていったのだそうです。

左側のクレラーーミュラーの作品は 縦が170cmほどの大きさがありますから 

点描となると それはそれは根気のいる仕事。

スーラーの色彩に対する探求心は ものすごいものだったのです。

 その 461 の作品 の テレビ画面による アップ映像です。 

ほ・ん・と 点描!!!

 

TV画面

 


 

 

そうそう 本題の 『踊り子と渦巻』 に戻りますが

大御所 マネにも こんな絵があります。

ちょっと渦巻きが半分切れていますが・・・

これはポストカード用にカットされたのか・・

実物の絵も切れているのか・・・

主題は 踊り子でも オーケストラでもなく 

ビールを運んでいるこの女性かと思われますが 

後ろの楽団が隠れてしまい

ちょっと邪魔かも(笑)

 

5652

5652 Corner of a Cafe-Concert   Edouard Manet  1832-1883
Oil on canvas,  97,1 x 77.5cm   The National Gallery, London  2009・1・16入手 
オーケストラ

 

 

 


 

 

↓ ドガにも 同じような絵があります。

ここでも  コントラバスの渦巻きが 見えますね。

舞台と その下のオーケストラボックス そしてアクセントの渦巻き

という構図は 当時の流行でしょうか。

 

6585

6585 Hilaire Germain Edgar degas:   Cabaret  1876
In the acollection of Thw Corcoran Gallery of Art, wiliam A. Clark Collection, 1926  2011・9・30入手 
オーケストラ

 

 

 581

581 Edgar Degas 1876 The Ambassadors Cabaret Musee des Beax-Arts, Lyon
Editions Hazan,Paris 1974    2000・3・27入手    
オーケストラ

 


 

 

 こちらは  ロートレックのポスターです。

踊り子の足と コントラバス(ヴィオラ・ダ・ガンバ)の渦巻きの関係は

スーラーは平行線で  ロートレックは対角線。 

ま そんなことは どうでもいいのですが

ロートレックは ヴィオラ・ダ・ガンバの渦巻きのみ 大きくデフォルメして

まるで生き物のように躍動感をもって描いています。 

ポスターとして描かれたせいでしょうか。  

ヴィオラ・ダ・ガンバの図太い低層音が 聞こえてくるようですね。

 

163

163  HENRI DE TOULOUSE-LAUTREC      
Affiche pour le Jardin de Paris-1893-Poster for the "Jardin de Paris" Editions Hazan,Paris  
  1999・9.20入手  
チェロ  

 

 

もう一枚 ロートレックのカード

羽つき帽子の黒服レディーの前に 

やはり躍動感ある渦巻きと指揮者が見え隠れしています。

なんでも 上の 163 はジャルダン・ド・パリで踊る ジャヌ・アヴリルで

こちらの 124 の黒服レディも 同じジャヌ・アヴリルだそうですので  

舞台上と舞台下とでのシーン。

これはスーラーの絵に出てくる ディヴァン・ジャポネの 開店ポスターで

舞台上で歌っている 黒手袋の顔が見えない歌手は 

イヴェット・ギルベールということです。

 

124

124 Touluse-Lautrec, Le Divan Japonnais 1892-93 Published by Art Print Japan 05-682   
 1999・9・15入手
  オーケストラ 

 


 

 

<追・追記> 

2013年 NHK BS プレミアムアーカイブス で

『2002年 ハイビジョンスペシャル ロートレックからの招待状』 という番組を再放送していました。

ロートレックの小学校時代からの無二の親友で画商でもある 

モーリス・ジョワイアンに 今は亡き岡田真澄氏が扮して 

この二人が考案したという料理のレシピ本を中心に 番組が進行するのですが 

そのなかで 素敵なエピソードがあったので ご紹介したいと思います。

 

ポスター画で大成功を収めたロートレックは 二年後 初めての個展を開いた。

ポスター作家としての名が先行し 画家としての評価がまだ定まっていなかった彼のために 

親友ジョワイアンが企画したのだ。

個展は大成功を収め いつもは辛口で意地悪な新聞の美術批評欄も こぞって好意的だった。

 こうして 画家としての名声をも確立した ロートレックでしたが

それまでの底辺で生きるモンマルトルの人々との付き合いを 変えようとはしませんでした。

たとえば 当時モンマルトルで 一世を風靡し ロートレックの絵のモデルにもなった踊り子 ラ・グリュー

 ムーラン・ルージュで踊るラ・グリュー

 

TV画面

 

ラ・グリューというのは 大食い女 という意味の 芸名だそうで

その名が祟ったのか、ラ・グリューは やがて太りだし フレンチ・カンカンを 踊れなくなってしまいます。

 ムーラン・ルージュを追われた ラ・グリューは 縁日の市場に小屋を建て

晩年は 小屋の動物使い となって 貧窮のなか 亡くなりました。

かつての ムーラン・ルージュの栄光を 死ぬまで誇りにしながら・・・

↓ 晩年 カンカンを踊ってみせるラ・グリューの映像

 

 TV画面

 

 

このラ・グリューが 小屋を建てるとき つたない文字で ロートレックに手紙を書きました。

『 ロートレックさん、 今度 私の小屋ができます。 何か描いてもらえると 有難いんだけど。

キャンバスを どこで買ったらいいのか 教えてちょうだい 』

さっそく ロートレックは 3メートル四方の大きなパネル2枚に絵を描き 彼女に贈ったそうです。

 

 TV画面

 

↑ 右側の大きな絵は 今 オルセー美術館にあります。

こんなことを知らずに この絵の前に立った時  

あ、あそこでピアノを弾いてる人がいる・・・ タンバリンを持ってる人も・・・ と

嬉しかったのですが 

こんなに大きな絵のわりに なんだか うすぼんやりしていて 空間も多く

完成度がいまいちのように感じました。

そうか、 これは小屋の外壁に飾ってあったせいで 

色が すっかり あせてしまったのですね。

 

 1776

1776  Henri De Toulouse-Lautrec  (1884-1901)   La Danse Mauresque ou les Almees,  1895  
Huile sur toile  H 2,850 ; L 3.075 m   Panneaux pour la Baraque de l Goulue   a la Foire du trone a Paris
2008・8・3入手 宴祭り踊り

 

 

番組の説明では この絵は 新しい小屋でエジプト風のダンスを踊るラ・グリューが描かれています。

 その彼女を祝福するかのように 見守る観客の中には 

オスカー・ワイルドや 

 

黒服のジャンヌ・アヴリルや

 

 ロートレック自身も  描き入れました。

 

かつては ロートレックをも夢中にさせた花形・踊り子への なによりの はなむけ そして 友情のあかし。 

いかがです? 

名門の伯爵家に生まれながら 健全な体に恵まれず 

愛する父親に最後まで認めてもらえなかった 失意のロートレック。

彼の心の優しさ 暖かさ が伝わってくる素敵なエピソードですよね。

 

 TV画面

人間は醜い。 しかし 人生は美しい!

 


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