マリー・ド・メディシスの生涯
878
878 Petrus Paulus Rubens
1577-1640 L'Education de Marie de Medicis
Huile sur toile 3.94x2.95m pour le
Palais du Luxembourg Inv.1771 Photo R.M.N
Louvre Departement des Peintures 2000・8・28入手 チェロ
のカデンツ
ルーベンスは 「マリー・ド・メディシスの生涯」 という24枚の連作を描きあげました。
ルイ13世の皇太后マリー・ド・メディシス(メディチ)直々の注文を受けたのです。
息子ルイ13世と和解して
戻ったばかりのリュクサンブール宮殿の長いギャラリーを飾るためのもので
一枚が3mx4mもある大作です。(なかには3mx7mのものもあります)
この連作は のちにルーヴル美術館に移され、
リシュリー翼 3階にある ギャラリー・メディシスという大きな部屋に
展示されています。
↑878 は そのシリーズの 第3作 『マリーの教育』 です。
その昔 は
この広い展示室に 連れと たった二人だけの貸切り状態で鑑賞したという
贅沢な時間を過ごしたのですが (たまたま 空いていただけでしたが)
その時は この部屋中の壁に飾られた たくさんの大きな絵に圧倒され
なにここ? 太った裸婦がいっぱいで きもちわるぅー
などと口走っていました。
ルーベンスさまに まあ なんて失礼なことを!
まだ こんなカードコレクションを始めることなど
夢にも考えていなかった頃でした。
無知とは 本当に恐ろしいものですが
ただ 負け惜しみを言わせていただくと 好みではなかったものの
強烈な印象を受けたことだけは 間違いありませんでした。
子供(無知な大人も) にこそ本物を与えるべきだ といわれますが
それは真実だと思います。
あの時体感した 本物の ものすごさ は、今もはっきり甦りますから。
すっかり脱線してしまいましたが
マリーはフィレンツェの名門メディチ家の出身。
連作の 『運命』 『誕生』 につづく ↑878 の第3作 『教育』 では
それはそれは 華麗な教育係が マリーを導いています。
なにしろ ギリシャの神々たち なんですから。
まず チェロを弾いているのはアポロンで 音楽を教えています。
ミネルヴァは、読むことを教えています。
上空にいるのは、ヘルメス(メリクリウス)で
マリーに美を授けるよう 三美神に雄弁に語っています。
マリーは ギリシャの神々から
まさに ”ホンモノ” の教育を受けているところです。
これは いくらなんでも ルーベンスが
注文主の皇太后マリーを ヨイショしすぎているような気もしますが
マリー本人より むし三美神たちのほうを
より熱心に描いているようにも みえます(笑)
818 の第6作 『マリーのマルセイユ上陸』 は
818
818 Pdter Paul Rubens 1577-1640 Reception of the newly-married
queen at Marseille
Oel auf Holz,64/50cm
Munchen,Bayerische Staatsgemaldesammlungen Alte Pinakothek Inv,Nr,95
2000・7.13入手 宴祭り踊り
フランス王・アンリ四世の二度目の妻になるため
マリーがイタリアから船で マルセイユに到着したところです。
じつは この 818 の作品は ルーブル美術館所蔵のものではありません。
サイズも とても小さな ミュンヘンのアルテ・ピナコテーク所蔵のものです。
は、この絵が二枚あることを 入手してから ずいぶん後になって知り
しかも 818 が ルーブル美術館のものではないことも
そのとき はじめて気が付きました。
ルーブル美術館のカードが手に入ったら 是非 並べて展示したいと思います。
<追記>
第6作 『マリーのマルセイユ上陸』
ルーブル美術館のものが やっと入手できましたので さっそく並べてみましょう。
3471 が ルーヴル美術館所蔵のもので 818 が ミュンヘン・アルテ・ピナコテーク所蔵のもの。
実際の絵のサイズは 394/295 cm (ルーブルM) と 64/50 cm (アルテ・ピナコテーク) です。
3471 818
3471 Petrus Paulus Rubens
1577-1640 Le debarquement de Marie de Medicis a
Marseille
Paris - Musee de Louvre Edetions des Musees Nationaux
Reproduction interdite - 1976 - Genese imp. Paris
394/295cm 2005・1・7入手 宴祭り踊り
818 Pdter Paul Rubens 1577-1640
Reception of the newly-married queen at Marseille
Oel auf Holz, 64/50cm Munchen,Bayerische
Staatsgemaldesammlungen Alte Pinakothek Inv,Nr,95
2000・7.13入手 宴祭り踊り
フランス王・アンリ四世に嫁ぐため マルセイユに到着したマリー。
一説には
それほど美人でもない(失礼)マリーの
持参金(なにせ名門メディチ家ですから)目当ての結婚だったとか。
ルーベンスは ここでも 華やかな場面に仕上げています。
船を降りるマリーを 百合の紋章の青マントのフランス王家の使者が
跪いて歓迎しています。
手前の波間には 海の妖精ネレイデスたちがお出迎え。
三叉の槍を持つポセイドン、ほら貝を吹くトリトンなど
海神たちも こぞって 祝典気分を盛り上げています。
空では 名声の女神がラッパを吹いて祝っています。
果たして フランスで どんな運命がマリーを待ち受けているのでしょう?
この24枚の連作画に描かれた その人生とは
跡取り息子ルイ13世を出産した喜びもつかのま
夫アンリ4世の急死により
まだ幼いルイ13世の摂政として 権力を手にするものの
当時の激しい宗教対立などもからんで
実の息子ルイ13世との権力闘争に発展したという
かなり波乱にとんだ 過酷なものでした。
この第6作 『マルセイユ上陸』 は
まだまだ夢と希望に満ちあふれた 若かりし頃のマリーです。
さて
ルーベンスといえば 「絵画のホメロス」 と称される人物。
その膨大な作品は 2250点以上にのぼるといわれ
壮大かつ華麗なバロックを完成させた画家 として不動です。
一人で それほどの作品を仕上げるのは不可能で
もちろん工房があり たくさんの弟子達を雇っていました。
ルーベンスが見本(下絵)を描き それにそって弟子が仕上げるというシステム。
ルーベンスは総監督として、自身も手を加えながら つぎつぎ作品を完成させていったそうです。
ミュンヘン アルテピナコテークには
『マリー・ド・メディシスの生涯』 の連作画の その下絵が所蔵されているのです。
筆の速かった ルーベンスが 見本に
ささっと 弟子に描いてみせたのでしょう。
一説には このミュンヘンの下絵の連作のほうが より闊達な筆致で
そのたくましい女体はルーベンスならではのもの
と高く評されているそうです。
完成品と下絵 いかがでしょうか?
ということは 下絵の連作画 『マリーの教育』 もあるんですよね?
カードになってないかなぁ〜。
<追記>
あるテレビ番組(番組名は失念)で ルーベンスを特集していました。
それによると
ルーベンスの故郷アントワープは 南ネーデルランド(カトリック) にあり
北ネーデルランド(プロテスタント) とは 宗教対立の緊張感の中にありました。
そんな中、南ネーデルランドの統治者 イサベラ大公妃の命を受け
ルーベンスは フランスとの友好関係を結ぶため パリに赴きます。
表向きは 国王の母である マリー・ド・メディシスの依頼をうけ
彼女の生涯を描く連作画に取り組むためでしたが
絵のなかに ギリシャの神々を登場させたり
彼女自身を戦争の女神として神格化させたり と大サービス。
彼女を過剰に讃えることにより 彼女から絶大な信頼を得ることに成功したルーベンスは
本来の目的のイサベラ大公妃の使命である 両国の友好関係を まんまと勝ち取ったのでした。
外交官としてのルーベンスの手腕は その後も おおいに発揮されました。
南ネーデルランドを統治していたスペインと 北ネーデルランドを支援していたイギリスとの
和平を願った イサベラ大公妃の任をうけ
スペインではフェリペ4世から 画家としても外交官としても 絶大な信頼をとりつけましたし
イギリスではチャールズ一世に 「マルスを退け平和を守るミネルヴァ」 という絵を描いて
平和を守る という考えを 聞き入れてもらい
見事 両国の和平を 取り付けることに成功したのです。
しかも ナイトの称号まで与えられたという おまけつき。
ルーベンスって ギャラリー・メディシスの部屋の第一印象と同じで
あきれるくらい すごい人なんですね。
<追・追記>
不思議な巡り合わせで パリに二年ほど暮らすことになった は
さっそくルーヴル美術館の年間パス(友の会に入る)を購入し
望めば毎日でも ルーヴル美術館に出入りできる という
信じられない日々を過ごしました。
中でも このギャラリー・メディシスの部屋は ことのほか お気に入りの場所でした。
もう昔のように この展示室に誰もいない というタイミングは ありませんでしたが
リシュリュー翼なので 比較的観光客も少なく 広いし
ベンチもたくさん用意されていて いつ行っても ほっと休めました。
時々 この部屋で
画家の卵らしき人が、大きなキャンバスを持ち込んで模写している姿に 遭遇。
2009年3月撮影
だんだん 作品が出来上がっていく様子をみるのも 楽しみでした。
は
この連作のなかでも 第一作 『マリーの運命』 が 殊のほか好きでした。
これから生まれようとしているマリーの人生の糸の長さを量りながら
その運命の糸をつむぐ女神達の絵(楽器なし) です。
三人の女神の おだやかな美しい表情と
マリーの運命の糸を操る その指先が
繊細で 神秘的。
が パリに住むなんて 誰が想像できたでしょう?
という日々を送っていたので なおさらだったのかもしれません。
この連作には
他にも 楽器がある絵が 数枚あるんです。
あちこちで書いてますが ルーヴルさん お願い!
マリー・ド・メディシス・シリーズのカードも 全部作ってくだされ!!
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