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ダビデの竪琴

 

のカデンツ

 

羊飼いの少年ダビデ

彼は旧約聖書の世界から登場してきた文句なしのスーパーアイドルです。

怪力の持ち主ゴルティアの首を切り落とし

かかげるシーンはいやでも目にやきついています。

でも、強いだけじゃないんです。

ハンサムだし 賢くて そして何より、竪琴の名手!

音楽だけではなく 詩にも通じていて、

旧約聖書の詩篇の半分がダビデの作といわれているほどです。

ダビデといえば、

皆様はあのルネッサンス華やかなりしフィレンツェの

ドナテッロやミケランジェロ作の

優美な若者の彫刻を思い浮かべられると思います。 

なんでも、武器を持たない羊飼いの少年ダビデが

イスラエルの敵 ペリシテ軍の巨人ゴルティアを

石弓だけで倒した ということが

封建諸侯に囲まれた小さな自治都市国家フィレンツェのイメージと 

ぴったり重なり

ダビデは当時フィレンツェの象徴とされたということです。

ただ  のダビデのイメージ は

その美少年時代のダビデではなく

シャガールの描いた赤いガウンに王冠をかぶり ひげを生やした 

おちゃめなダビデ王。 

理由はただ一つ、 

シャガールのダビデは いつも竪琴を持っているから!! 

 の調査メモによりますと

円熟期のシャガールも イスラエルの王ダビデに 

自分を重ね合わせていたそうです。

それは、巨人ゴリアテ(ゴルティア)を倒した英雄としてではなく

詩篇をづづった天才詩人として、

また、サウル王を竪琴で慰めた音楽家としての ダビデ にです。

いつも楽器を持ったシャガールのダビデ、納得ですね。

(著作権の問題があるかもしれないので アップは控えます)

 

 こちらはレンブラントが描いた サウル王の前で演奏するダビデ。

 レンブラント特有の暗闇の中で ほとんど 手だけの出演ですが。

 

2516
2516 David Playing the Harp Before Saul,  c1629-30 oil on oak 62x50cm   
c: Stadellsches Kunstinstitut frunkfurt am Main   Rembrandt Rembrandt  
2003・2・15入手      
ハープ

 

 

サミエル記 上 16章23節 には

ダビデが傍らで竪琴を奏でると サウル王は 心が休まって気分がよくなり

悪霊は サウル王から 離れた

とあるそうです。

 

 

↓ 同じくレンブラントですが こちらは両者の表情が はっきり読み取れますね。 

これは デンハーグのマウリッツハイス美術館で 。

4934

4934  Rembrandt (1606-1662) Saul en David  Inv,nr,621  2008・3・23入手    ハープ

 

 

 

こちらのダビデは シターン系の楽器で サウル王をお慰めしています。

 4806

4806 Bemardo Cavallino  1616-1656  David plays for Saul, after 1645   
Kunsthistorisches Museum Wien, 9064  2008・1・2入手  
シターン

 

 


 

 

しかしその後 ダビデは

数々の功績がまぶしくなったサウル王から 逆にねたまれ 追放されてしまいます。

サウル王の死後、 晴れてダビデは イスラエルの王として迎えられました。

シャガールと同じく 歳をとった ↓髭のダビデ

フィレンツェの美少年の彫刻とは、まったくベツモノみたい。

1169

1169 Oleg Trabish  King David ・・・David took an harp, and played with his hand・・・T.Samuel  16, 23
2001・3.21入手    
ハープ

 

 

 晩年のダビデは  バテシバの水浴シーンにも 登場します。

ウリアという夫をもつバテシバが 水浴している姿を 

老いゆく身となったダビデ王が見初め

さっそくラブコールを送ります。

あふれんばかりの魅力をたたえて水浴しているバテシバ

といっても 皆さん

あのスザンナの入浴とごっちゃにしないでくださいね。 

あっちの覗き見老人とは 別物です。

レンブラントの絵には

ダビデの手紙を読む水浴中のバテシバの 有名な絵がありますが

残念ながら ダビデの姿は描かれていません。 よって 楽器もなし。

↓ このクラナッハの絵は まさに

ハープを持ったダビデが バテシバをそっと覗き見しているシーン!

入手できて とても嬉しかったです。

 

 

5687

5687  Lucas Cranach 1472-1553   David und Bathseba  Kat.Nr. 567B  GEMALDEGALERIE BERLIN
Staatliche Museen Preubischer Kulturbesitz  2009・1・30入手   
ハープ

 

 

↓ こちらも バテシバの水浴シーンです。

ほら のぞき見 ダビデもいます。

5027  ダビデ王

5027 Francesco Solimena(1657 - 1747)  Bathsheba Bathing, ca 1725
Oil/canvas, 103 x 128.4 cm  Inv. no. 197  RESIDENZGALERIE SALZBURG  2008.・5・2入手 
 タンバリン

 

 

その後 この話の展開はどうなったか、皆様が眠れなくなるといけませんので、

視覚デザイン研究所 編 『マリアのウィンク』 を参考に お話しますと

恋は盲目、彼女と一緒になるにはどうしたらいいか 考えるダビデ。

なにしろ、バテシバの夫 ウリアは、ダビデの家臣なのです。

そうだ、激しい戦いの最前線にウリアを派遣させてしまえ と即 命令を下し、

思い通り ウリアは戦死します。

晴れてバテシバと一緒になったダビデだったのですが

はじめの子はすぐ死んでしまいます。

自分の罪を心から悔い 神に懺悔するダビデ。 

悔い改めたダビデは神に許され

その後バテシバとのあいだに ふたたび王子を授かりました。 

それが 英雄ソロモンですとさ。 

おしまい。

 

6440

6440  ペーテル・パウル・ルーベンスとヤン・ブックホルスト  竪琴を弾くダビデ  1616年頃−40年代後半 
油彩・板  64.0 x 68.0 cm   シュテーデル美術館蔵  2011・4・18入手   ハープ

 


 

 

<追記>

 上尾信也著 『音楽のヨーロッパ史』 講談社現代新書

ダビデとアポロンの竪琴について、興味深いことが書いてありました。

う〜〜ん、中世キリスト教秩序のダビデの竪琴か。

 難しい内容なんですけど、このコレクションにとって 大事な一冊になると思うので

ダビデの竪琴のところを、少し抜粋引用させていただきます。

 

竪琴はなんといっても中世には

旧約聖書のイスラエルの栄華を極めたダビデ王の楽器として広く知られ

キリスト教世界ではダビデの 王 としての表象 がこの竪琴に込められていた。

魂の癒し(サウルを慰めた)と 世界の秩序の体現化(イスラエル王)

として描かれた ハープを弾くダビデは

ミクロとマクロの両宇宙の秩序を支えるキリストの先駆

すなわちキリストの予型として

キリスト教図像において表現されるにふさわしいとされた。

 

ダビデ王はキリストの予型であり秩序社会の象徴であるがゆえに

キリスト教国の王の理想、すなわち理想的封建領主であった。

そのため教会に限らず、王侯達はダビデの図像が描かれた聖書写本を好み

自らの権威の源の具体的な形としてのダビデ像をそこに求めた。

また竪琴はダビデの伝説に限らず聖書ではプラスのイメージを持つ楽器であり

神に選ばれし王の楽器として封建制の秩序維持のための

格好の象徴の道具となったのである。

 

ところが15世紀以降は神学以外の哲学にも価値を与えたルネサンスや

教皇を頂点とした教会ヒエラルキーを揺るがし弱体化させた

宗教改革などによって

キリスト教の秩序で一元的に王権の精神的支えを語ることは困難になる。

そこで新たな秩序の体現者として登場するのが

ギリシャやローマの神々であり

その古代の神と現世の王を結びつけるさまざまな道具立てが用意される。

その一つは凱旋行列や祝祭に於ける王の擬神化であり

絵画や音楽劇における神の役を演ずる王である。

これらの神王はアポロンに擬される事が多く

そのアポロンのアトリビュートは竪琴なのである。

中世のキリスト教秩序のダビデと、ルネサンスのアポロンは、

ここで竪琴を介し一体化する。

竪琴は、サウルの悪霊を払う魔力の楽器から

秩序を維持する政治的魔力を持つ王の楽器へ

そして人心のみならず神の心まで動かす

神秘の楽器となるのである。

 


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