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絵本 郵便屋さんの話

 

 

6330

6330  Aiken Drum 2010・10・28入手   ホルン 

 

 

のカデンツ

↑ このカードが

チャペック童話 絵本シリーズ 『郵便屋さんの話』 フェリシモ出版

作=カレル・チャペック  訳=関沢明子  画=藤本 奨

という絵本に登場する主人公 郵便屋のコルババさん だと知ったのは 

入手してから4年近く経っていました。

愛嬌のある この制服姿の人が登場するカードは あと5枚あり

きっと絵本かも とは思ったものの

カードには 何も情報がなく  

表に記された Pohadka Postacka  という文字も 

どこの言葉かちょっと解らず そのままにしていました。

ある日 思い立って この文字を 検索してみたところ 

 『郵便屋さんの話』 という絵本に なんとか たどりつきました。

やった〜!  どんなお話なのでしょう?

さっそく図書館から 借りてきました。

 

 

 

 

チェコの郵便屋さんの制服って なんて素敵なんでしょう。

だってほら、 黒制帽に ホルンのマークがついてるんですよ!

これは 挿し絵を描いた AIKEN DRUM の 藤本将氏の

アイデアなのかどうか わかりませんが ともかく 素敵。

この藤本氏は 音楽がお好きなようで  

AIKEN DRUM のカードには 楽器の入ったものも多く 

以前から 大のファンです。

この本の挿し絵が 全部カードになっていてくれたら いいのにな♪

30枚くらいには なるんじゃないかなぁ。

この本は 絵もおしゃれですが ストーリーも楽しめます。

 

その郵便局では 

夜な夜な 妖精のこびとたち(やっぱり同じ制服制帽です) が

 手紙を仕分けしたり 忙しく働いていて 

一段落すると 手紙をカード代わりにして 遊んだりしています。

 

ある日 郵便局でうたた寝してしまったコルババさんは 

すっかり寝込んでしまい

 夜更けに目覚め そのこびとたちを見つけ 

すっかり仲良しになりました。

切手も貼っていない 宛名も書き忘れた 届けようのない手紙があったので

 コルババさんが こびとたちに相談すると

その手紙は 一番強い ハートのエースだ 

と こびとたちは 言い当てます。

 

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6332  Aiken Drum 2010・10・28入手   ホルン 

 

 

 切手も宛名もなく おまけに あちこち誤字だらけですが 

とても大事な手紙だと。

それは フランチークという若者が 愛する娘 マジェンカ に宛てた手紙で

その若者は 自分より 相手の娘のことを 大切に思っている。

だから 一番 強いのです と。

あわてんぼの運転手フランチークが 恋人マジェンカに宛てた 大切なラブレター 

それを聞いたコルババさんは 

なんとかこの手紙を届けてあげたいものだと  郵便局長と相談し

たとえ一年歩きまわるとも 世界中を走り回るとも この娘さんを探し出そうと

 手紙とパンを入れた配達かばんを肩にかけて 出発します。

 

 

コルババさんは 歩きに歩いて 

あちこちで 運転手のフランチークからの手紙を待っている

マジェンカという娘を知らないかと たずねます。

リトムニェジツェ、 ロクニ、 ラコヴニーク、 ビルゼン・・・・・・

といった遠くの町をたずね歩き

クトナー・ホラ、 リトミシュル、 トゥシェボニュ、ヴォドニャニ・・・・・

などの近くの町も くまなく歩き

ナナツヤシキ村 マツボックリ村 モリハズレ村 などにいたるまで・・・

つまり ありとあらゆるところで マジェンカを 探し歩いたのです。

 

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6329  Aiken Drum 2010・10・28入手   ホルン 

 

 

 マジェンカという名前の娘は チェコに いっぱい いました。

コルババさんは マジェンカを 四万九千九百八十人 みつけました。

でもその中に フランチークという名前の運転手の手紙を待っている

マジェンカは ひとりもいません。

運転手からの手紙を待っているマジェンカは何人かいました。

でも その運転手の名前は フランチークではなく 

トニーク、 ラジスラフ、 ヴァーツラフ、ヨセフ・・・・・・など

いろいろでしたが フランチークという名前だけはありませんでした。

また フランチークという若者からの手紙を待っているマジェンカもいましたが

そのフランチークは運転手ではありませんでした。

錠前屋だったり 曹長、指物師、車掌だったり 

でなければ薬屋、椅子はり職人 散髪屋 洋服仕立て人 などで

とにかく 運転手ではありませんでした。

 

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6331  Aiken Drum 2010・10・28入手   ホルン

 

 

 

一年と一日が むなしく過ぎたある日 

コルババさんは疲れてはて 道端にしゃがみこんでしまいました。

これだけ探してもいないんだから もうみつけられないかもしれない と思いました。

そこへ 一台の車がのろのろと 時速6キロくらいで やってきました。

車にのっていた紳士が 疲れきったコルババさんを

送ってくれることになったのですが

どうしてこんなすばらしい車が こんなに のろのろ悲しそうに走るのか 

と コルババさんがたずねると

それはかなしい運転手が運転しているからだ と紳士が なげきます。

その運転手は 一年と一日前に愛する娘に出した手紙に 

返事がこないので 悲しんでいるのだと。

コルババさんは 叫びます。 

もしかして運転手の名前は フランチークでは?

そうか、きみか! ドジで へまで おっちょこちょいのフランチークは。

ということで 

この紳士の車にのって 三人でマジェンカのところまで 手紙を届けることになりました。

 

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6161  Aiken Drum 2010・1・12入手   ホルン

 

 

フランチークが アクセルを ぐいと踏むと 車は ぶるんっと身をふるわせ 走り出しました。

黒い服の紳士は 帽子が飛ばないように 両手でおさえていなければなりませんでした。

コルババさんも 座席にしがみつきました。

フランチークが叫びます。

「どんなもんです? だんなさま。 百八十キロでてますよ。

これはもう 道路を走ってるなんてものじゃない。

全速力で空を飛んでるんだ。 これはすごい、道路が下に見えてきた。 

あっ! 車に羽がはえてる!」

 

 

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6328  Aiken Drum 2010・10・28入手   ホルン

 

 

フランチークが マジェンカから返事をきいているあいだ

コルババさんは 紳士の横にすわって しみじみと いいました。

「一年と一日、手紙をもって 走り回りましたが

あちこちで たくさんのものを見ただけでも そのかいがありました。

どこも美しい いいところでした。

ほら、フランチークくんが やってきました。

このようなことは 宛名のない手紙なんか書くより 

口でいえば 簡単にすむことですからね」

 

 

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6327  Aiken Drum 2010・10・28入手   ホルン

 

フランチークは なにもいいませんでしたが 目が輝いています。

「だんなさま お待たせしました」

「では行こうか。 まずコルババさんを郵便局まで送っていこう」

運転手が車にとびのり エンジンをかけ ギアをいれて アクセルを踏み込みました。 

車は夢のように かるがると なめらかに走りだし

すぐに時速百二十キロをさしました。

「そうだ、その調子だ」

黒服の紳士は満足そうです。

「やっぱり運転手がしあわせだと 車もうれしくて こんなに走るのだろうね」

そして みなそれぞれ しあわせいっぱいで帰っていきました。

 

おしまい

 


 

 

<追記>

 

2014年11月5日 このHPを立ち上げることになり 

順次 お世話になっている方に お知らせしていたところ

さっそく このコルババさんのカードを調達してくれた 友人 YT から 

メールがきました。

出来たて ほやほやの このページを読んで

郵便屋さんの制帽に なぜホルン? という疑問に 

すばやい解答をよせてくれたのです。

↓ これは 友人 YT が

ベルギーのゲントに行った時に撮影したという 元郵便局の建物で

 ホルンは 郵便局のシンボル ということでした。

 

 

現在のポストにも このホルンを図案化したようにも見えるマークがついていた

と 2枚の写真も 送ってくれました。

ありがとう!! さっそくアップしましたよ。

 

 

 

友人 YT が このページを読まなかったら

 おそらく コルババさんの帽子についているホルン について

二人で 話題にすることは なかったでしょう。

ホームページ開設 初成果!

ちなみに ウィキペディアにも

 

郵便ラッパは バルブを持たない円柱状の金管楽器で 

ホルンの仲間に分類される。

18世紀から19世紀の頃のヨーロッパで 

乗馬による郵便輸送や メールコーチと呼ばれた郵便馬車が

その出発到着を知らせるために 用いられた。

フランス語では コルネ・ド・ポスト(cornet de poste)

 ドイツ語では ポストホルン(posthorn)

 

とありました。

AIKEN DRUM の 藤本将氏は 

歴史に忠実に しかもお洒落に 

コルババさんの制帽を 描かれていたのですね。

脱帽!!

 

 

 その後 もう一枚 ポストホルンのカードをゲット!

これも とてもお洒落ですね。

 

 10170

10170 ももろ You've got mail 2019・12・12入手   ホルン

 


 

 

<追・追記>

チェコの作家 カレル・チャペック(1890 - 1938)の 『郵便屋さんの話』 は

この絵本だけでなく

カレル・チャペック作  中野好夫訳 『長い長いお医者さんのお話』  岩波少年文庫

のなかにも 収録されていることが分かりました。

小学上級生くらいから 読めそうな本です。

挿絵は カレル・チャペックの実兄の ヨセフ・チャペック氏が 担当しています。

残念ながら コルババさんの制帽に ホルンのマークは ついていませんが

 

 

 

とても知りたかった フランチークが マジェンカに宛てた手紙の内容が 

明らかにされていましたので ご紹介しましょう。

 妖精のこびとたちが ハートのエース と太鼓判をおした手紙ですから 

ものすご〜〜く 期待したのですが 

けっこう ふつ〜〜(笑)

 

親愛なマジェンカ 

とうとう 僕は幟をみつけた。

(おや!! 職という字がまちがっていますね。 巾偏になっていますよ) 

自動車の運転手なんだ。

だからもう きみさえよければ ぼくたちはいつでも結婚できるんだよ。

いまでも 僕を愛していてくれるだろうね。

ねえ? 大急ぎで返事くれたまえ、ね、きっと。

ほんとうに きみのフランティーク より

 

 


 

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