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農民の家族の食卓

 

 

 870

870 L.au A.Le Nain Famille de paysans dans un interieur Toile 1.13×1.59m
Acquis sur le legs Arthur Pernolet
,1915
Louvre Departement des Peintures 2000.8.28入手  
たて笛

 

 

のカデンツ

 

ル・ナン兄弟の描いた 17世紀フランスの とある農民の家族 の絵。

貧しく 皆 疲れきっているようでもあり しかしたいへん静謐な雰囲気 でもあります。

ぶどう酒とパンが すこし宗教的な雰囲気を漂わせているのか・・・ただ単に質素な食事風景なのか。

後方 暖炉のそばでヴェールをかぶって 静かに笛の音に聞き入っている やさしげな娘は お姉さん?

ちょっと 聖母マリアの横顔のようでもあります。

ル・ナン兄弟とは 

アントワーヌ ・ ルイ ・ マチュウ の三人で、彼らは密接な共同制作をしていたため、

三人のうち誰が描いたのかは  どの絵も特定できないそうです。

 

↓さて、こちらの絵では 少年が 笛からヴァイオリンに 楽器を持ち替えて登場しています。

 

5226

5226  Le Nain (vers 1600/1610-1648)  Repas de Paysans  1642 
Huile sur toile  97 x 122 cm   Musee du Louvre  Departement des Peintures
2008・8・26入手    
ヴァイオリン

 

 

そして ↓こちらは そのヴァイオリン少年の 別ヴァージョンです。

え? これは 同じものでしょうって?

いいえ、一枚は ↑ ルーヴル美術館のもので 

もう一枚は ↓ ランス市立美術館のもの。

 

5572

5572   Les freres LE NAIN - ]Z sieele  le repas des Paysans
Huile sur tiole  106.3 x 120.8 cm   Ville de Reims   Musee des Beaux-Arts
2008・11・22入手    
ヴァイオリン

 

 

微妙に違うところを挙げると

    こちらは流し目ふうで   ルーヴルM

    こちらは 伏し目がち ランス市立M

 

あと パンの形が違っていたり 右端の男の子の立ち位置の違い(椅子の足と少年の足の距離) とか・・・

 

岡田温司著 『もうひとつのルネサンス』 平凡社

第六章 貧しき者たちの肖像 主役の座を得る貧者たち  から抜粋しますと

 

低いモチーフと 低いスタイルを 積極的に使うことによって

それを福音書的な清貧のエートスという高いメッセージに逆転させ昇華させた例に

ルイ・ル・ナンの絵がある。

たとえば 農民たちの食卓 がそれである。

キリストの エマオの会食 という宗教的テーマを連想させる構図の農夫たちからは

むしろ使徒的な厳粛さや威厳すら 感じられる。

パンをちぎり、ワインを口にしているのは、もちろんそれが キリストの肉と血を暗示するからで

清貧のエートスは宗教的な象徴とも重なりあっている。

 

注  エートスethos とは 本質的な特性、精神 を意味するようです。

 


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