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マリアージュ・ア・ラ・モード

 

 

 4617

4617   William Hogarth(1697 - 1764) Marriage A-la-Mode:4 The Toilette  c.1743 (detail)
Oil on canvas  70.5 x 90.8 cm  
The National Gallery  London  2007・11・7入手  フルート

 

のカデンツ

 

↑ このカードを入手したとき、 角(?)をたくさん頭にくっつけたような人物が

あまりに強烈すぎて びっくりしました。  

今まで まったく みたことがないタイプの絵。

いったい 彼は何者? この絵を描いた画家ってどんな人?

 このカードをアップするなら 

絶対 ギャラリー 『インパクトある一枚』  にと思ったのですが

この絵の 全体図カードを入手したことによって

実はこれが ホーガスの6枚の連作  

マリアージュ・ア・ラ・モード Marriage A - La-Mode (当世風結婚)

のなかの一枚ということが分かり  

渋々 ギャラリー 『シリーズなんです』 にて ご紹介することになりました。

 

 

5654

5654  Marriage A-la-Mode:4 The Toilette  Williahm Hogart 1697 - 1764
Oil on canvas  70.5 x 90.8 cm  The National Gallery London   2009・1・16入手  フルート

 

 

そうか

↑ ここは Toilette (化粧室) ということですから、これから始まる結婚式にむけて 

この人物は新郎で あんなふうに頭を巻いて 準備しているのかな、と思ったのですが、

それにしては

 新婦が髪を結ってもらっているものの 椅子にふんぞり返って やけにのんびりムード

それに マリアージュ・ア・ラ・モード っていう素敵な響きに  

なんだか この登場人物たちの雰囲気が そぐわない。

はてさて 一体 これは どんなシーンなのでしょう?

 

 

別のことで 森洋子著 『ブリューゲル探訪』 未来社を読んでいて 偶然

 このホーガスの マリアージュ・ア・ラ・モード について述べられている箇所を発見しました。 

 

ホーガスの人気のひとつは 主題の時事性にある。

たとえば当時 上流階級のあいだで 家柄は立派だが借金だらけの貴族が

息子を市井の成金商人の娘と縁組させるのが流行した。

こうした『契約結婚』 が不幸な顛末を招くのは自明で ホーガスは 6枚の連作 『当世風結婚』 で

このような社会風潮を揶揄している。

優れた性格描写の作品は 彼がよく劇場通いをし役者の表情やしぐさを観察した結果で

「 私の絵は私のステージであり 男も女も私の役者である 」 と語っていた。

社会問題に強い関心を抱いたホーガスは とくに悪習に対して 辛辣な批判の手を休めなかった。

ホーガスはその250点を超える版画作品で

今日のジャーナリストたちにも劣らぬ迫力で 18世紀イギリス社会の内的矛盾を追及した。

外国文化を偏愛する上流階級について

たとえば 『当世風結婚』 4景 に登場する カストラートのイタリア人歌手や

ドイツ人のフルート奏者 を戯画的に描くことで批判している。

イギリスの貴族たちは自国よりも外国の音楽家を重用したからである。

ホーガスは生涯にわたってイギリスの若い画家たちをつねに激励

自らも大衆とのコミュニケーションの中で描き続けてきた。

その意味でホーガスはイギリス絵画史上 突出した国産画家といえよう。

 

おお、これはありがたい!

あのインパクトある三人のうち二人は 身元が判明しました。

カストラートのイタリア人歌手と ドイツのフルート奏者。

でも 一番気になる角カール。

 懐に手を入れ お茶しているあの方は 誰?

タイトルが マリアージュ・・・とフランス語なのも 何か意味があるのでしょうか?

ほかに参考書は・・・と 図書館で ホガース を検索したところ 

たった一冊 見つかりました。

森 洋子 編著 『ホガースの銅版画』 岩崎美術社  

やはり 森洋子氏の本です。 お世話になります!

 本の銅版画は この絵画とは反転した鏡面印刷になっていましたが 

登場人物のことは しっかり わかりました!!

 

当世風結婚 4図 伯爵夫人の接見

中産階級の娘から 一躍伯爵夫人になった女主人は 宝石で身を飾り立てながら 

フランス風貴族生活を満喫している。

朝 フランス人の美容師に髪を結わせながら 大勢の訪問客の応対をしている。

彼女の前に座るのは 第一景でも登場したドンファンの弁護士で 彼女を執拗に誘っている。

他の客には ドイツ人のフルート奏者ヴァイデマン、

イギリスで人気絶頂のイタリア人のカストラート歌手フランチェスコ・ベルナルディ。

彼の前で有頂天になっているのは フォックス・レイン夫人。

歌手の隣は 髪にカール用巻き紙をつけ、ココアをすする伊達男のプロシャ公使

伯爵夫人の乱れた社交生活を表わすのに、第2景と同じようにトランプやゲームの招待状が散乱している。

壁にかかる画中の画はコレッジョのイオなど、いずれも公爵夫人と弁護士の不義の関係を揶揄する。

 

 やったぁー 伊達男のプロシャ公使ですって。  

ああ これですっきりした〜〜!

 


 

 

<追記>

 テレビで 

2010年のメトロポリタン歌劇場 R・シュトラウスのオペラ 「ばらの騎士」 をみていたら

第一幕に まるでこの絵を彷彿とさせる場面が出てきたので 

びっくり!!

ウィーンの貴族 元帥婦人に 面会を求める取り巻き連中。

その中に なんと オペラ歌手とフルート奏者が セットで登場したのです。

(カール用巻き紙をつけたプロシャ公使はいませんでしたが)

ちょっと これって あの絵と同じじゃない?!

それで いろいろ調べたところ どうやら 

このオペラの台本作家だった 詩人のフーゴ・フォン・ホーフマンスタールが

(ホースマンスタールとシュトラウスは名コンビで 

その代表作が ばらの騎士 といわれているそうです)

ホーガスの「当世風結婚」 に インスピレーションを受けた ということが判明。

なるほど!

それで、このオペラの場面が この絵とそっくりだったんですね。

角カールのおかげで こんな発見までできて、嬉しい!!

その後

ザルツブルグ音楽祭2014 でも 

R.シュトラウス生誕150年を祝って 『ばらの騎士』 が上演され

これも NHKBS番組 プレミアムシアターで鑑賞しました。

今回は 現場写真(?)も 忘れずに撮りました。

グリーンのラメ衣装のオペラ歌手と 後ろ向きの フルート奏者です。 

 

   TV画面

 

 

さて 

マリアージュ・ア・ラ・モード 6枚の連作に 話をもどしますと 

↓ 第2景 にも楽器が描かれています。

 

  5655

5655   Marriage A-la-Mode:2  The Tete a Tete  William Horgath 1697 - 1764
Oil on canvas, 69.9 x 90,8 cm  The National Gallery London   2009・1・16入手  ヴァイオリン

 

倒れた椅子に ケースに入っているヴァイオリンらしき楽器があります。

題名 Tete a Tete  というのは 差し向かい という意味だそうです。

それでは 前述の本から  この場面も 引用させていただきましょう。

 

当世風結婚 2図  怠惰な朝

結婚後の若い伯爵夫妻の生活ぶりが描かれている。

暖炉のロココ風な時計は午前1時20分を指し、真夜中に帰館したばかりの伯爵は

それまでおそらく愛人のところで過ごしたのだろう、ポケットには女の帽子が飛び出していて

その匂いを彼の愛犬が怪しむ。

伯爵夫人の方は 真夜中までのトランプ遊びに疲れ果て、あくび顔 

隣室のサロンにはトランプが散在している。

だらしのない二人を見て、メソジスト派の召使が(ポケットにこの派が信条する書あり)

神の助けを乞うが その手にはたくさんの請求書の束とわずか一枚の受取書

ホガーズがこの召使を戯画化しているのは メソジスト派を嫌っていたからであろう。

暖炉の上には 鼻の欠けたローマ皇帝像

弦のない弓を捨ててバグパイプを吹くキューピッドの絵

隣室の燃え尽きた蝋燭、倒れた椅子、こうしたものすべてが

破綻しかけた 二人の結婚生活を象徴している。

 

あらまあ、暖炉の上の絵にも 奏楽キューピッドが いたんですね!

弓を捨て バグパイプに持ち替えたキューピッド。

 

 

さて

シリーズ マリアージュ・ア・ラ・モードの連作の 筋書きは

1図は 金欠の伯爵家と成金の中産階級の娘との 結婚の契約のシーン

2図は 5655

3図は 放蕩を重ねた伯爵が梅毒に冒され、その道のヤブ医者を尋ねるシーン

4図は 5654

5図は 妻と弁護士の浮気現場にふみこんだ伯爵が 逆に弁護士に刺され 非業の死をとげるシーン

6図は 弁護士が絞首刑にされたことを知って 絶望のあまり服毒自殺をはかる公爵夫人のシーン

と なんとも ひどい話で マリアージュ・あらら・モード なんですが

ホーガスお得意の風刺がいろいろ ちりばめられていて  

彼の連作画の最高傑作といわれているそうです。

あのインパクトある角カールに 心を奪われなかったら

こんなに いろいろ調べることもなかったし こんなにたくさんの発見もなかったことでしょう。

 一枚のカードとの出会いって 本当に面白いです。

 

 


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