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 羊飼いの礼拝?キリスト降誕

 

 

4691

4691  L’Adoration des Bergers Jean de GOURMONT ne a Carquebut, Manche, vers 1483 Mort apres, 1551
Huile sur bois, 93.5 x 115.96 cm  Paris, Musee du Louvre  2007・11・28入手  奏楽天使

 

 

のカデンツ

 

↑ 初めて このカードを入手した時 なんだかとても不思議な感じがしました。

 赤ちゃん天使が たくさん空中に浮遊しながら 奏楽しているのですが

暗い廃墟のような がら〜〜んとした建物が 妙にひっかかる絵でした。

カードに記された題名が 羊飼いの礼拝 L’Adoration des Bergers   

と知って ますますびっくり。

よく見ると確かに マリア様も 生まれたばかりのイエス様も 羊飼いも 

いることはいるのですが

なんといっても この廃墟と そこを飛ぶ高低差のある天使ばかりが 

気になりました。

 

 

もう お気づきになったかもしれませんが

じつは ↑ このカードは 鏡面印刷だったのです。 

 なので このカードに ますます違和感があったのかもしれません。

ルーヴル美術館で撮影した 正しい絵は↓ こちらです。

 

2008・7・19撮影

 

 

  

  が  ルーヴル美術館で この絵の前に立ってみても 

やっぱり 不思議な感じは変りませんでした。

鏡面印刷のせいばかりでは なかったのです。

マニエリズムの頃の絵だから でしょうか?

それとも手前で ハーディガーディを奏でる  

ひときわ大きな このボス天使のせいかなぁ?

 


2008・7・19撮影

 

 

あら?   ルーヴル美術館の表記 ↓ には 

この絵は ジャン ド グールモン 作ではなく  

 Anonyme 作者不詳 となっているんですね!

それに題名も 違います。

 カードには  羊飼いの礼拝 L’Adoration des Bergers とありますが

ルーヴル美術館の表記では キリスト降誕 La Nativite です。

もっとも カードは パリ・モンマルトルの観光客で賑わう裏通りの 

古びたお土産屋さんで見つけたもので 

しかも 鏡面印刷になったカードですから・・・

カード情報は それほど 信用できないかもしれません。

 

 

 2008・7・19撮影

 

 

仏英→英日機械翻訳 (多少誤訳があるかもしれませんが 以下の通り)

作者不詳 フランス 1551年以降

キリスト降誕

JG のモノグラムが残されていた関連性から 

長い間 リヨンの版画家 ジャン・ド・グールモンの作と考えられてきた。

しかし 彼は1523年より前に没しており この作品の作者たり得ないことから

本作品は 再び作者不詳となる。

この キリスト降誕 の絵は ジャック・アンドルーエ・デュ・セルソー(宮廷建築家)が

1551年に出版した 『Vues d'optique』 のなかの 二つの版画から 

いくつかのモチーフを借用しており

したがって 1551年後に 描かれたものである。

 

 

どういうことなのか こんどは

ルーブル美術館オフィシャルサイトを ネット検索してみることにしました。

作者名から 作品を検索できれば簡単なのですが 作者不詳となると そうもいきません。

 しかしそこは ルーヴル美術館年間パスを持っていた強み(笑) で

展示されていたリシュリュー館の部屋番号から検索し この作品に辿り着ました。

 

 

 

(2015年1月 ルーヴル美術館オフィシャルサイト http://www.louvre.fr/ より転載させていただきました)

 

 

そして ルーヴル美術館オフィシャルサイト英語版 の訳は

ジャン・ド・グールモン作(1483?−1551後)  

羊飼いの礼拝  1525年ころ

この作品は スランス元帥アンヌ・ド・モンモラシーによって建てられた

エクアン城の礼拝堂の中にあったといわれている。

ジャン・ド・グールモンのモノグラムと 

リヨンの市名の表記がある キリスト降誕 の版画があることから

この絵も 彼がリヨンに滞在していた1522年から1526年の間に描かれたもの 

と推測されている。

 

 

あれれ?  ここでは カードと同じく

ジャン ド グールモン作  羊飼いの礼拝 L’Adoration des Bergers です。

制作年 も ルーヴル美術館内の表記は 1551年以降 となっていましたが

 こちらのルーヴル美術館オフィシャルサイトでは 1525年頃 です。

も〜〜なんなの?  さっぱり訳がわかりません。

 

 もう一度 整理すると

昔(古びたこのカードが制作された頃) は 

ジャン ド グールモン作 だった 羊飼いの礼拝 L’Adoration des Bergers が

 2008年時点で ルーヴル美術館内では  

作者不詳 1551年以降の キリスト降誕 La Nativite  になっていた。

が 2015年新春時点での ルーヴルオフィシャルサイトには  再び 

ジャン ド グールモン作  1525年頃 羊飼いの礼拝 L’Adoration des Bergers とある。

なぜ 2008年のルーヴル美術館では 作者不詳となっていたのか?

謎は 深まるばかりです。

 

 


 

 

<追記>

そんなわけで 2015年新春は 大きな謎を抱えたまま 迎えました。

ちょうど 我が家に滞在していた身内の協力者に相談してみたところ

その協力者の見解は ↓ こうでした。

長い間 ジャン・ド・グールモン作 とされてきた この絵の研究が進み 

やっぱり この絵は 作者不詳ということに 結論づけられた。

ルーヴル美術館の専門部署内では そのことが認証され 

展示パネルの解説も 訂正されたが

ルーヴル美術館オフィシャルサイトの方は まだ古い情報のままなのでは・・・と。

なるほど、そう考えれば すべて納得がいきます。

オフィシャルサイトといえども 情報が古いまま ということも ありえるのでしょうか。

ルーヴル美術館で この解説パネルを撮影してから 

もう 6〜7年は 経っているのですけど・・・

 こうしてみると あの展示パネルの写真は とても貴重なものになります(笑)

この協力者は  の身内を名乗るだけあって 

同じ血が流れているのか  さらに しつこく(笑) この絵の情報を 調べてくれ

エクアン城にある ルネサンス博物館 のオフィシャルサイトからも 

この絵の解説をみつけて 送ってくれました。

 

(仏英→英日機械翻訳)

荒廃した教会の空想的で細身の建物の内部には 

ゴシックの空間が 古代様式の支柱と統合されており

画家は 生まれたばかりのイエスの前にひざまづく聖母と聖ヨセフ 

そしてそれを取り囲む天使たちを描いている。

左側からは 羊飼いたちが礼拝に訪れている。

この 『羊飼いの礼拝』 の表現は 

16世紀フランス絵画の中でも きわめて独特である。

18世紀に ピエール・ジャン・マリエットは 

古くから ジャン・グールモント1世のものとされている 

IGのモノグラムとリヨンの市名の入った 『キリスト降誕』 の版画を根拠として 

この絵画がその版画のマスターであり 

彼がリヨンに滞在した1522年から1526年の間に作成したものだと比定した。

この版画は円形の表現をとっているが 

確かにルーヴル美術館にある絵画と強い関連性を示している。

同じ建物 同じように切断された円柱 

聖母子とそれらを囲んで飛び舞う二人の天使の同じ配置

事実 ジャン・ド・グールモンは版画家として

1506年から1522年までパリで活動している。

しかしその後のリヨンでの形跡については明確な裏付けはなく 

さらに 1523年頃には没した とみられている。

画家としても知られておらず 

したがって従来の帰属比定は疑わしいといわざるを得ない。

この絵画と版画の実際の関係も不明であり 

どちらかがどちらかに影響を与えたのかも分からない。

とりわけ ケルビムが複雑なポーズでたくさん描かれている点や 

羊飼いたちの容姿が引き伸ばされて描かれている点では

この作品は アントワーヌ・カロン や ジャン・クーサン(子)の構図に近い。

この絵は 少なくとも18世紀には エクアンの礼拝堂で 

ピエール・ジャン・マリエットによって確認されており

ルーヴル美術館に収められた革命押収品の目録にも記載されている。

 

なるほど! 

 どうやら 身内の協力者の見解どおり

長い間 ジャン・ド・グールモン作 とされてきたけれども 

疑わしい点が 多々出てきたので 作者不詳となった というのが真相のようですね。

 ルーヴル美術館オフィシャルサイトの解説も そのうち 訂正されるのでは と思われます。

それにしても 

 もともと この絵は エクアンの王侯貴族の館(エクアン城)に あったもので

 あのフランス革命のとき エクアン城の礼拝堂から没収されたものだったなんて・・・

数奇な運命をたどって 今 ルーヴル美術館に展示されているのですね。

どこか謎めいて見えるのは そのせいでしょうか。

 

え?

そんなことより 鏡面印刷ではないカードを はやくゲットせんかい!! ですって?

はい、すみません ボス天使。

 

2008・7・19撮影

 


 

 

<追・追記>

 

2016年 テロ騒動で すっかり観光客の減ったパリに出かけました。

十月第一日曜日は 美術館無料の日 

朝から ルーヴルM オルセーM オランジュリーM と すべて観て回りました(笑)

一日で一体 何枚の絵と対面したでしょう?!

もちろん この絵にも 挨拶しました。

 

 

 2016・10・2 撮影

 

 

 

リシュリュー館はリニューアル中のところもあり 

この絵は room9 から 隣室へ移動していました。

そして 表記も また変わっていました!

 

 

2016・10・2 撮影

 

 

 仏語翻訳機が あまり うまくいかないのですが

 

JG のモノグラムが残されていた関連性から 

長い間 パリの版画家 ジャン・ド・グールモンの作と考えられてきた。

しかし 彼は1523年より前に没しており この作品の作者たり得ない

 

そして新たに Jacques Gauvain という名が 浮上しています。

 

JG のイニシャルは 金銀細工師 Jacques Gauvain  のものとも 考えられる。

彼がJGのモノグラムの版画の作者だったということは大いにあり得るし

 1515年から1547年にかけ リヨンで活躍した画家であった 

とも考えられるからである。

 

ま この調査は専門家に おまかせて 結果を気長に待つことにしましょう。

 

絵の題名は キリスト降誕 La Nativite で確定したようですね。

ベツレヘムへ向かう途中の馬小屋で イエスは誕生します (キリスト降誕 La Nativite) 

そして そのイエス誕生のお告げを 最初に聞いた羊飼いが 

イエスに会いに馬小屋へと向かいます(羊飼いの礼拝 L’Adoration des Bergers)

この二つの場面は よく同じ絵の中に描かれることも多く 

その場合は キリスト降誕 La Nativite の背景などに 小さく羊飼いが描かれます。

 ポストカード音楽会としては 

その小さく描かれた羊飼いの持っている角笛とかバグパイプに 注目!

この絵の二人の羊飼いは 杖だけのようですが

 


2016・10・2 ルーヴルで撮影

 

 

上に奏楽天使がたくさんいますから 許します。


2016・10・2 ルーヴルで撮影

 

 

 

だからぁ〜鏡面印刷じゃないカードは ゲットできたんかい?

す、すみません、ボス天使。

だって ルーヴル美術館が ちっともカードを 作ってくれないんだもん!

 


2016・10・2 ルーヴルで撮影

 

 

 


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