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豆の王様 ガレット・デ・ロワ

 

 4138

4138  ヤーコブ・ヨルダーンス Jacob Jordaens  飲む王様  油彩・カンヴァス 156.0x210.0cm ベルギー王立美術館蔵
   2006・9・26入手  
バグパイプ

 

 

のカデンツ

 

飲む王様 The King Drinks という題名がついていますが

この絵をみると 王様ともあろうお方が こんな一般人と一緒に 

まあ なんという醜態でしょう・・・

と思いますよね。

宮下規久朗著  「食べる西洋美術史」 光文社新書

詳しく解説がありました。  抜粋してご紹介します。

 

17世紀のフランドルやオランダでは、宴会の情景が流行するようになる。

それらは、陽気な仲間 というタイトルで呼ばれ

農民や市民が羽目をはずして 飲み歌い騒ぐ様子が 生き生きと描かれたものである。

オランダではこうした世俗ジャンルが発展し

ヤン・ステーンらによって 市民や農民のさまざまな生活風景が描かれた。

 一方 カトリックのまま残ったフランドルでは

大工房を構えた巨匠ルーベンスが影響力をもって活躍していた。

ヨルダーンスはそのルーベンスの高揚した生命力を発展させ  農民が登場する風俗画を描いた。

また 歴史画や寓意画においても ニンフやサテュロスが乱舞する祝宴的な情景を 

粗野なまでに力強く表現した。

 

 

4909

4909 Jacob Jordaens Le Repos de Diane  Pierre noire, sanguine, aquarelle et gouache
0.322 x 0.450  Musee Conde, Chantilly   200

8・3・15入手  宴祭り踊り

 

 

中でも 彼がもっとも得意とし 人気をはくしたのは、農民や庶民の乱痴気騒ぎの情景だが

横が3メートルもある歴史画のような大画面に このような世俗の主題を描いたことが注目される。

豆の王様とは 

当時 ヤーコブ・ヨルダーンスや ヤン・ステーンなどが繰り返し描いたテーマで

12日節の行事。 生誕間もない幼児キリストに 

東方から三人の王(三博士)が贈り物を持ってやってきたことにちなむ祝宴で

豆を一粒だけ入れて焼いたケーキを切り分け 豆入りに当たった者が王の役になり、

彼が王妃、侍従、侍医などの役を割り振って、疑似宮廷を作り

王様の乾杯という一同の唱和とともに 酒を一気に飲み干す というものである。

宴会につきものの、既成の秩序の転倒という性格を色濃くもっている。

ヨルダーンスは 王の役に当たり王冠を被って杯をあおる太った老人を中心に

老いも若きも大きく杯を掲げて乾杯する情景を何度も描いた。

女性も子供も参加し、笑い声と嬌声が聞こえてくるような陽気な画面。

・・・・・・・・

16世紀から17世紀にかけて

どんちゃん騒ぎの絵がこれほど頻繁にえがかれたのはなぜだろうか。

中世から近世にかけては食糧供給が非常に不安定であった。

貴族といえども凶作の年は質素な食に甘んじなければならなかった。

こうした社会では逆に、富裕層や貴族はしばしば大宴会を催す傾向があった。

あらゆる階級が粗食とごちそうを交互に食べるのが決まりだった。

とくに農村では、毎日の食べ物と祝祭時の食べ物の落差が大きく

収穫祭、結婚式、守護聖人の祝日、復活祭、クリスマスなどに

桁外れのお祭り騒ぎをする一方

通常はせいぜいパンか野菜の煮汁だけで生きていた。

のちにみるように、教会は四旬節や聖人記念日などの精進日をきめ

この期間はパンと水しか食べてはならなかった。

それが厳しいほど、祭りのときのどんちゃん騒ぎは過熱するのだった。

風俗画に描かれた農民や庶民は 

みな丸々と太っているが、現実にはありえないことであった。

この空間は、一種の理想郷であったのだ。

食糧供給がなんとか安定する18世紀半ばにいたるまで

肥満は恥どころか社会的威信をあらわすもので

料理の豪華さは多くの場合、質より量で判断された。

フランドルやオランダの宴会図は

放蕩息子や七つの大罪という教訓的な主題の伝統の上に成立したものであり

17世紀になると

明るい農民の生活を描くことがそれ自体 ひとつの主題として確立した。

そこにはもはや、反面教師的、否定的な意味は薄れ

宗教的祭事を祝う健全な庶民の信仰心が好意的に眺められるようになっている。

 

 

この豆の王様 (飲む王様) という 12日節の行事は

 パリでは ガレット・デ・ロワと呼ばれています。

街のふつうのブーランジュリーから 有名パティシエのお店まで 

こぞって アーモンドクリームの入った円形のパイを 焼きます。

その中には 小さなフェーヴ(そら豆)と呼ばれる 

お人形などの形をした陶器の置物が入れてあって  

切り分けたパイの中にそれが入っているのを食べた人が

新年初のラッキーパーソンとして 皆から祝福を受けるという お楽しみつき。

フェーヴは 毎年 各お店が趣向をこらすので、そのコレクターもいるそうです。

パリの人はお菓子好きですから その日一日に限らず 

家族で 職場で 何度もお祝いするので

新年しばらくの間 お店のショーウィンドーは

大小さまざまなガレット・デ・ロワで いっぱいになり

聖夜のブッシュ・ド・ノエル(クリスマスケーキ)などより 断然 盛り上がります。

近頃、日本でも パリで修行したパティシエのお店などで 

このパイを見かけるようになったので

ハロウィンのように日本で市民権を得る日も 近いかもしれません。 

 

森洋子著 『ブリューゲル探訪』 未来社から。

 

ヨルダーンスのいかにも陽気で賑やかな 家族の団欒風景だが

注意しなければならないのは、画面の上部の額に記された 以下のラテン語の銘文である。

『酔っ払いは 狂気と同類である』  NIL SIMILIUS INSANO QUZM EBRIUS

つまりこの絵は  泥酔は どんなに人間の人生を狂わせるか という教訓なのである。

 

 

ちなみに 4138の絵のラテン語を拡大してみましたが、これはちょっと別の言葉。

ヨルダーンスの 豆の王様 にも いくつかのヴァージョンがあるのですね。

 

 


 

 

追記>

やっと 二枚目(ヴァージョン違い) を ゲットできました。

 

 7262

7262 he Hermitage Masterpices of Painting  2013・9・14入手  バグパイプ

 

 

意気込んで エルミタージュ美術館 に カードを求めに行ったというのに

思ったほど充実していなくて 空振り状態。

 かろうじて このカードはゲットできたのですが

エルミタージュ美術館の宣伝用デザイン? とも思える作り。

四方をカットしているようなので  上記のラテン語の部分は 確かめられません。

この絵にも 上部の額に記されたラテン語の銘文が あったのかどうか

写真を撮ってくればよかったのですが  

そんなこと すっかり忘れてました(汗)

 

 


 

 

 

コレクションファイルの中からも 探してみました。

 このカードも 豆の王様!

  左から2番目の人が 王様に扮し グラスを掲げています。

 

3328

3328  Jan Miense Molenaer (1610-1668)  Twelfth-Night Festivities Ol auf Holz, 42/56 cm
LIECHTENSTEIN MUSEUM   Die Furstlicheen Sammlungenm Wien    2004・10・16入手  ヴァイオリン

 

 

 


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