ヴィーナスとオルガン奏者
1212
1212 TIZIANO VECELLIO, TIZIAN
(um1485−1576) Venus with an organist
Leinwand, 148/217cm (c) Museo Nacional del Prado, Madrid
VD 5479 Vontobel, CH-8706 Feldmeilen-Printed in Switzerland 2001・4・11入手 オルガン
のカデンツ
ティツィアーノの ヴィーナス 登場!
オルガン奏者と一緒です。
↑ これはプラド美術館所蔵のもの。
この絵には 似たようなバリエーションがあることを 美術書で知りました。
同じプラド美術館には もう一枚 ヴィーナスのそばにアモルがいない絵があるようですし
ベルリン絵画館にも アモルと一緒のヴィーナスの絵があるようです。
それなら それみんな 手に入れたい!!
と願うのが コレクターの さが。
念願が叶い
↓ もう一枚のプラド美術館のカードを手に入れたのは 六年後のことでした。
そのせいか ヴィーナスも音楽奏者も ちょっと老けたかな(笑)
アモルのかわりに 犬がいます。
4319
4319 VECELLIO DI GREGORIO
TIZIANO (1490-1576)
Venus and the organ-Player No 420 cat. MUSEO DEL PRADO 2007・3・19入手 オルガン
そして さらに2年後 ついに ベルリン絵画館のものも ゲット!!
この何年越しというのは なんと気の長い話と お思いでしょうが
コレクターにとっては そこがまた たまらない達成感(笑)なのです。
こちらには アモルと白犬がいます。
5693
5693 Tisian (1488/90-1576)
Vinus Mit Dem Orgelspieler um 1550/52
Leinwand, 115 x 210 cm Kat-Nr-1849 Staatliche Museen zu Berlin, Gemaldegalerie
2009・1・30入手 オルガン
めでたく 三者揃い踏みとなりましたので ちょっとお遊びに 並べて見比べてみましょう。
1212 4319 5693
ヴィーナスの ネックレス・イアリング・腕輪などにも注目してください。
↓オルガン奏者は、三者三様 かなり年齢に幅があるようです。
1212 4319 5693
ある美術番組(番組名は失念)では、後ろの風景に注目していました。
神聖ローマ帝国の皇帝であり スペイン国王でもあった カール5世と その息子フェリペ2世
この親子のお気に入りだった 画家ティッツィアーノ。
彼は ヴィーナスを描くのが得意で
しかも 世俗的なオルガン奏者と一緒 という斬新な構図。
たちまち当時のヨーロッパの王侯貴族のあいだで 人気をはくし
注文に応えて 何枚も同じような絵が描かれたのだそうです。
神聖ローマ帝国の皇帝にして スペイン国王の カール5世。
そのため
プラド美術館の 1212 と 4319 は ローマ帝国の庭園風な背景
ベルリン絵画館の 5693 は スペインの山が連なる背景
納得です。
<追記>
エルヴィン・パノフスキー著 『ティツィアーノの諸問題』 現叢社 に
この ヴィーナスとオルガン奏者 の絵の詳しい解説がありましたので
抜粋してご紹介します。
たくさんあるヴァリエーションのうち 最初期のものが
ベルリンにある 『オルガン奏者といるウェヌス(ヴィーナス)』 ではないだろうか。
オルガン奏者は 偶然という以上に 皇太子フェリペ2世に似ているので
彼自身が このテーマを ティツィアーノに 依頼したのではないかと
想像したくなるほどだ。
5693
このわずか後に制作された プラド美術館所蔵の2点は
ティツィアーノの署名のある1点には クビド(アモル) がいて
1212
署名のない もう1点には どことなく場違いな枕がクビドに代わり
ヴィーナスは おそらく委託者の愛人と思われる特定の女性に 代わっている。
4319
ベルリンの作品の 丘陵の背景は プラド美術館の2点では
壮麗な並木道 彫刻のある噴水 鹿や孔雀のいる整った庭園に変えられた。
ベルリンの 小型のパイプオルガンは
プラド美術館の2点では より精巧で装飾的な彫刻のほどこされた楽器になり
パイプは一本の水平線ではなく 二本の対角線を描くように配置されている。
しかし
より一層、重要なことは 演奏者の位置と姿勢である。
ベルリンの作品では オルガン奏者は 楽器に触れていない。
両手ともに鍵盤から離れ 右足はオルガンの椅子から外れて(右向きになって)いるので
左足を除いて 横たわったヴィーナスのほうに全身を向け うっとり見つめている。
5693
(ちょっと暗くて 手の位置が確認できませんが・・・)
プラド美術館の2点では
オルガン奏者の足は 左向きになっている。
ヴィーナスを見るために 彼は腰で鋭く体をひねり 逆方向に体を傾げなければならない。
おかげで 鍵盤が見えることになり (ベルリンのものは見えない)
片手か あるいは両手が 鍵盤に置かれている。
1212 4319
オルガン奏者の 足が左向きだったり 右向きだったりだなんて・・・
初めて気が付きました!
しかも そのことから ベルリンの作品は
聴覚の美より 視覚の美が優位にたっているということであり
プラドの2点では オルガン奏者が 音の世界から身を離すことをしていないため
もはや 視覚の美の絶対優位はなく 聴覚の美も同じく優位 ということなのだとか。
これらの絵には まだ他にも何枚か ヴァリエーションがあるそうで
ケンブリッジの フィッツウィリアム美術館所蔵のものと メトロポリタン美術館所蔵のものは
オルガン奏者の代わりに 帽子を被ったリュート奏者が 登場しているそうです。
しかも ヴィーナス自身も 片手にリコーダーを お持ちだそうで
ヴィーナスの傍らには ヴィオラダガンバも 置かれているのだとか。
そのことにより ヴィーナスは 視覚の美と 聴覚の美を 手にしたことになるそうです。
画家であると同時に 音楽にも造詣の深かった ティツィアーノは
最終的には 聴覚と視覚による美の認識に同等の尊厳を 認めたわけである。
よ〜〜し そのリュート奏者の2枚も 是非 ゲットしなくちゃ!
<追 追記>
初めて ヴィーナスとオルガン奏者 のカードを入手したのは
2001年4月11日のことでした。
↑ 三枚目の ベルリン絵画館のヴィーナスを 入手したのは
2009年1月30日。
それから さらにまた なんと十年の月日が流れた とある日
ついについに メトロポリタン美術館のヴィーナスを ゲット♪
私自身の手で
神保町本屋街の とあるお店の二階の段ボールの中から。
18年の歳月をかけての ホームページ更新です。
手前みそではありますが なんだかちょっと感動的。
9860
9860 Titian Itaoian (Venice)
1477(?)-1576
Venus and the Lute Player The Metropolitan Museum of Art M144
2019・4・17入手 リュート
このカードは ちょっと小ぶりで アンティークサイズのもの。
印刷も 発色がとても綺麗で 味があります。
ヴィーナスも 柔らかな気品に満ちています。
そして噂どおり
メトロポリタン美術館所蔵のものは
オルガン奏者の代わりに 帽子を被ったリュート奏者が登場
ヴィーナス自身も 片手にリコーダーを お持ちで
傍らには ヴィオラダガンバも 置かれています。
1212 4319 5693 9860
この店の二階の本棚の前で
小さな腰掛けに座って じっくり本を物色されている男性がいらしたので
も 真似して 片隅にあった腰掛けに座り
段ボールの中に びっしり詰め込まれた絵葉書を
一枚一枚 時間をかけて 丁寧にチェックしました。
気兼ねせずに こんなにたくさんのカードと じっくり向き合ったのは
初めての体験でした。
パリのアンティーク市の片隅に カードの箱を見つけたことはありましたが
中腰では すぐに辛くなり 思うようには探せませんでした。
腰掛け とは なんてきめの細かい配慮でしょう。
日本のおもてなしの心 は こんなところにも♪
同じ階には 珈琲を飲める ちょっとしたコーナーも。
本好きの方が ゆっくり一日 至福の時を
古本屋街で過ごされるというのも 頷けます。
え? どうして そのお店を知ったのかですって?
もちろん 偶然ではありません。
近年 伝達手段が 手紙からスマホへと移行したせいか
ポストカード市場は お世辞にも 活発とは言えません。
そこで ふと思い立ち 前から行ってみたかった神保町古本屋街に
カードを求めて 乗り込んだのです(笑)
絵葉書も少し置いてあった お店の人に
ほかに絵葉書を扱っているお店をご存じですか? と質問したところ
『本と店の案内所』 があるから そこで訊いてみたら とのこと。
さっそく その案内所に行ってみると
JIMBOCHO 古書店MAP なるものを頂き
そうですね 絵葉書なら
こことか こことか と 地図に 赤丸をつけてくれ
あるかどうか分からないけど ま 行ってみたら と。
そこで 一番近くの赤丸一軒目のお店に行ったのが
このカードとの出会いだったのです。
ちなみに その段ボールの中のカードは 6枚 200円!
アンティーク というほどでもない
80年代前後くらいのものが多く (充分アンティークか?)
カードの裏面に入手日が記入されたものも 数枚 ありました。
そこから1979年に開催された
『ソ連邦所蔵のフランス近代絵画展 プーシキンエルミタージュ両美術館』
1987年 『不熱の天才 菱田春草展』
1988年 『キュビズムのピカソ展』
1994年 『モンマルトルとモンパルナスの画家たち展』
のものだと 判りました。
また このヴィーナスのカードのように
アンティークなのに 傷ひとつない綺麗なものもあり
状態は さまざまですが
には すべてがダイヤモンドのように輝いていました。
収穫は全部で 二十数枚♪
レジで伺ったところ 今後も ポストカードは そうそう入荷なし とのこと。
次回は 是非 他の赤丸のお店を 覗いてみなくっちゃ!
(追記)
その後 何度か神保町通いをし 一か月ちょっと経った頃
再び こちらのお店を 覗いてみたところ
段ボールの中身は あの時より 少なくなった印象でした。
でも カードは 以前のものと かなり入れ替わっていて
初めて見るものも多く
今回は 10枚 追加購入しました。
レジは こないだとは別の人だったので
カードは どれくらいの間隔で 入荷しますか? と質問したら
まあ わりと頻繁ですよ と。
一か月くらいですか?
いやぁ〜担当じゃないから はっきりは言えないけど
もうちょっと 短かいんじゃないかな。
わぁ〜〜い!
だってあんなに ギューギュー詰めに 入っていたカードが
今回は 少しゆとりがあり カード自体も けっこう入れ替わっていたんです。
どういう仕組みか よく分からないけど
一か月に一度くらいは チェックする楽しみが 出来ました♪
しかも このコレクションを始める前の 70年80年代の物が多く
しかも 六枚200円 四枚150円 だなんて
夢のようです♪
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